テラーノベル
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土曜日の午後。
曇り空の下、シェアハウスのリビングには誰もいなかった。
その静けさの中、真理亜はダイニングテーブルの椅子に座り、ノートを開いていた。
中には、書きかけの文字。
真理亜:「私は、誰かを選ばなければいけない」
思いを整理しようと、文字にしてみたけれど――手が止まる。
真理亜:(でも、“選ぶ”ってことは、“誰かを選ばない”ってことになる)
その瞬間、浮かぶのは――
自分に想いを伝えてくれた7人の顔。
・いつも守ろうとしてくれた、西畑大吾
・自分に正直に気持ちをぶつけた、道枝駿佑
・ずっと見守り、支えてくれた、藤原丈一郎
・優しさの仮面を脱ぎ捨ててくれた、大橋和也
・「好き」が何かわからなかった、長尾謙杜
・孤独を笑顔で隠していた、高橋恭平
・誰よりも繊細で気遣い屋の、大西流星
――誰の手を取っても、6人は傷つく。
それは、逃れられない現実。
その時、背後から小さな気配。
流星:「真理亜ちゃん、何してるん?」
声の主は流星だった。
真理亜:「あ……ちょっと、考えごとしてて」
流星は真理亜の隣に腰かけ、ノートをちらっと見て、小さく笑う。
流星:「……そっか。悩んでるんやな」
真理亜:「……うん」
真理亜の声はかすれていた。
真理亜:「ごめん、流星くん。……みんなに優しくされて、嬉しかったけど、怖かった。私が笑えば、誰かが勘違いするかもしれへんって……でも、無視もできへん。全員、大切な人たちやから」
流星は少し黙って、天井を見上げた。
そして、ぽつりと。
流星:「……真理亜ちゃんが“誰かを好き”って思えた時、その人のとこ、行ったらいいよ」
真理亜:「え……?」
流星:「誰を選んでも、俺は怒ったりせえへんよ。悲しくないって言ったら嘘になるけど……“好きな人が、好きな人と一緒におる”って、それは、それで素敵なことやん?」
真理亜:「……流星くん」
流星:「でも、ひとつだけお願いがある」
彼は、真理亜の目をじっと見つめた。
流星:「ちゃんと、自分の気持ちに嘘はつかんといて。『みんなを傷つけたくないから』って理由で、誰かと曖昧におるのは……それが一番、俺らを傷つけるから」
真理亜は、静かにうなずいた。
そしてノートを閉じて、胸に手を当てた。
真理亜:(私の“好き”は、どこにあるんやろう)
そう問いかけながら、真理亜は立ち上がる。
真理亜:(ちゃんと向き合おう。誰かを選ぶことから、逃げたくない)
そう決意した背中を、流星は小さく笑って見送った。
心の奥で、自分の気持ちにそっと蓋をしながら。
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