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午前9時30分・・・テレビ出演を終え、鈴子は本社会議室で日本の主要銀行家達との商談に出向いていた、伊藤ホールディングスの鉄道事業拡大に向けた融資の話が中心で、鈴子は冷静に数字を提示しつつ、相手の懸念を一つ一つ解消していった、増田が隣で補足し、2人の息の合ったやり取りに、銀行家達は圧倒される
午前11時30分・・・伊藤ホールディングスの海外不動産部門の責任者との打ち合わせ、アメリカでの高級賃貸ビルの開発計画について、鈴子は細部まで鋭い質問を投げかけた、彼女の視線に、現地バイヤーは緊張しながらも詳細を説明し、鈴子は定正から学んだ「信頼と厳しさ」のバランスを示し、相手側を「信頼」「与える」精神で導いた
午前1時・・・自社の冷凍工場に鈴子は出向き、新たな冷凍食品ブランドの立ち上げを議論、鈴子は自ら試作品を試食し、消費者目線での改良点を提案、会議の合間に、アシスタントの榊原から送られてきたメールに目を通した
午後5時・・・雑誌『経営の鎖』のインタビューを兼ね、記者が鈴子のリーダーシップについて質問を重ねる
「初代会長の死後、どのように立ち直ったのか?」
という問いに鈴子は静かに答えた
「彼が私に教えてくれたのは愛する人のために戦い続けること・・・私の子供達と、2万人の従業員が私の家族です」
記者達は彼女の言葉に深く頷いた
午後6時・・・都市計画委員会との協議会の集まりで、神戸での新駅開発プロジェクトについて鈴子は地域住民の声を取り入れることを主張、彼女の「人々の生活を第一に」という姿勢は、委員会にも好意的に受け止められ、伊藤ホールディングスが開発ホテルに中役に入る契約を結んだ
午後10時・・・兵庫県投資家グループとのカクテルパーティーに参加、鈴子は地元で紹介された海外投資家達とロースト・ビーフを食べながら流暢に英語で会話をしていた、彼女の気品と知性は会場を魅了していた、するといつの間にか鈴子の隣に来ていた増田がそっと耳打ちした
「おみごとですな」
鈴子は小さく笑い、「まだ終わってないわよ」と返した
やっと長い一日の業務を終えて屋敷に戻った鈴子は、寝室の定正の写真に向かって、今日あった出来事を全て報告した
「・・・でね・・・パーティーでは、私はね・・・」
楽しそうな表情で定正の写真に向かって一人、彼女のおしゃべりはいつまでも続いた
フフフ・・・「あなたが見守ってくれてるから、私、頑張れてるのよ・・明日はね・・・」
窓の外の眼下には神戸の夜景が輝く・・・鈴子は深呼吸して明日も戦う準備を整えようと思った、定正が創設したこの会社は今や鈴子のものでもあったが、神秘的なものが漂っていた、まるで命あるかのように燃えていた
会社は鈴子の恋人でもあったので、愛情という総力を注げば決して枯れることなく彼女を置き去りにすることもない、定正の会社は永遠に発展し続けるだろう
鈴子はその成長をずっと見守って行きたかった、そして、いつの日か息子達に継がせるのが今の鈴子の夢だった
伊藤ホールディングス会長として、定正の愛と遺志を胸に、鈴子の未来を切り開く決意は揺るがなかった