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エリア収縮が始まる10分前…。
「よし。特に危なげなく第一収縮から逃れられたかな?先入りしてやることと言えば後入りする人間の妨害だけど…。ま、お気持ち程度の妨害で許してやろうかな。」
そう言いながら自分が来た道に【トラップアップ】というスキルを使い『ソイルニードル』を設置して近場の小岩の上に座って様子を見る。
「私のスコアは高地エリアの3人だけだから下から数えた方が早そうだなぁ。プリンも同じだろうけどどうかなぁ?てか、あの子何処にいるんだろうなぁ……。」
小さな火の玉を宙に浮かべ杖でクルクル回し操りながら暇を潰す。収縮開始まで残り5分を切った頃高地エリアの方から人が数名見えてきた。恐らく収縮を忘れてて戦いに勤しんでた奴らだろうか。私自身が直接手を下すことは基本ない。設置したトラップの性能をもう一度しっかり見ておきたいから基本は眺める。が、喧嘩を売られたらそれはそれだ。私個人としてはこの平原エリアで少し退屈しのぎをしたあと一気にまくる算段を立てていたが、エリア端でこうして座ってるところを見られたら安置狩りしてるやつと思われても仕方ないもんな。やり合いになったらなったで腹を括る………か?
覚悟をして立ち上がり構えていたがこちらに向かってくる者たちの様子が少し変に見えた。安置に入ろうと必死になってると言うよりは明らかに『なにか』から逃げてきているように見えたのだ。構えを解かずジッとその先を見つけると人混みのさらに奥の方に原因と思われる『なにか』のシルエットが見えてきた。
「……あれぇマジでこっち来る感じ?」
ミーシャも確認した『なにか』の正体は以前プリンと協力しやっとの思いで倒したキングレオと同じサイズのイノシシ。それが文字通り猪突猛進してきているのだ。
確かにそのサイズのイノシシに引かれたら確実にやられてしまうだろうから死にものぐるいで走ってくるのは納得の一言だ。そんな奴らがこちらに向かってきているということは必然的にミーシャも巻き込まれる形になるということでもある。
「天秤にかけるまでもなくあの人混み使ってトラップの性能見るよりもまずは自分の命最優先だよね!というわけで私もちょっと場を離れようかな!?」
こちらに向かってくる集団に対してその進路に入らないよう逃げる。が、追われている集団は自暴自棄になっているのか一人でも被害者を増やそうと進路を変えてミーシャの方にと走ってくる。
「ばかばかばかばぁかがぁぁぁ!!?」
相手の意図を察したミーシャは左右どちらかに避けても相手がこちらに合わせてくるためプランを変更して直線上に逃げつつ【トラップアップ】を展開し向かってくる集団の人数を減らしつつ突っ込んでくるイノシシを減速させられるか試すために動きを変える。
「私の貴重なMPを使って展開してるんだから何かしらの成果を出してくれないと困るんですけどぉ!」
目を凝らさないと見えなかった集団が気が付けばすぐそこまで迫ってきており、その集団が来てるということはあのバカでかいイノシシもすぐそこまで来ているということ。
改めてそのイノシシを見ると一つ気がついたことがあった。
「……人が、跨ってる…のかぁ!?」
確認するや否やあの集団が【トラップアップ】による被害にあったようで『ソイルニードル』によって足を貫かれて身動きできなくなったところを迫り来るイノシシが容赦なく引いて、その肉壁によって速度も減速してきてミーシャのところに辿り着くちょっと前で今度はイノシシ自体にも【トラップアップ】が作動しそこでイノシシも止まりそのまま光の粒になって消滅した。そして上に乗っていた何者かが情けない声を上げて地面に突き刺さる。
「……ふぅ。良かったぁ【トラップアップ】覚えてて。これが無かったら私も引かれてたわけだしな。さて、と…。んでもってこの騒動を起こした張本人にちょっと話聞かないとな…。」
「ふぐぐぐっ!?ホガァホガァ!!」
上半身が地面に突き刺さり下半身をジタバタさせている何者かの両足を掴み思いっきり引っこ抜く。すると現れたのは背の低い茶髪な獣人アバターの女の子だった。耳を見た感じ恐らく狼とか犬科の動物モチーフだろう。髪型もウルフカットと言われるようなやつなのでまぁ狼を模したアバターなのは確かなようだ。引っこ抜いて足をつかみ逆さで眺めていると顔に着いた土を首を振ってふるい落としたあとこっちを睨んでただ一言。
「そんな持ち方してないで早くおろして!」
「あ、ごめんごめん。」
声は見た目相応で少し高く生意気ないわゆるメスガキっぽさがそこにあった。
言われた通り彼女の足を掴んでる手を離す。案の定顔から地面に激突し顔を抑えて悶絶しているが、少ししてまた立ち上がり土を落としこちらを見て吠えてきた。
「お前良くも私の可愛い可愛い『ベンゾルテ』ちゃんを倒してくれたなぁ!!?」
「は、はぁ?ベンジョデルちゃん?」
「そんな汚い名前違うわ!!ベ・ン・ゾ・ル・テ!ベンゾルテちゃんだよ!!」
「…それってもしかしてさっきの暴れイノシシの事か?」
「そーだよ!私の可愛い可愛いペットのベンゾルテちゃんを…よくもやってくれなぁ!?」
「私は自分の身を守るために倒したの。大体そんなのに乗って暴れてれば遅かれ早かれやられてたわよ。」
「生意気だぞお前!ただのへっぽこ魔法使いのくせに一丁前にこのイベントに出やがって!」
その発言にイラッとしたので少女の下の地面を【トラップアップ】を使い落とし穴を作り出し下半身だけ沈めたあと土魔法で固めて閉じ込めてみた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「クソガキが調子に乗るなよ?」
「びぇぇえええん!ごベンなざいごベンなざい!!ベンゾルテちゃんの事も許すからたずげでぐだじゃぁぁぁぁいぃぃ!!!」
「……はぁ。なんなんだこのガキ。」
すぐに魔法を解除すると素早く抜け出しその辺のリーマンも驚くほど綺麗な土下座をしてきた。
「お命だけは勘弁してください!」
「初対面の人間にこういう事は言いたくないけどお前馬鹿だろ?」
「バカとは失礼な!?私はクラスで一番天才なあお………『ベルノ』様だぞ! 」
「今思いっきり本名言いかけてたよね?」
「そそそ、そんなわけないだろ!!」
「で?アンタ何してたの?」
「何って…私を子供とバカにしてきた大人達にしゅくせーしてやってたんだ!」
「追いかけ回してた奴らがそうなのか?」
「そうだ!私をガキとか言ってきて腹が立ったから私のスキルでベンゾルテちゃんを呼び出して実力を示してたのだ!」
(この子の言うベンゾルテっていうのがさっきのイノシシだろうけど、あれは確かモンスターだったはず。て事はこの子はマイナーな職のひとつ『魔物使い』なのか。)
「なら、ソイツらを倒したのはお前だ。良かったな。それじゃあ私は別の用があるからこれでな。」
「まてまてまてまてー!?」
「なによ?私はあんたに用がないの。私は私でやりたい事あるからばいばいね。」
「やっぱりベンゾルテちゃんの件許さないから私と戦えぇ!」
「嫌だ。」
「なんでだ!?」
「今は目立ちたくないの。」
「イベントに参加してる時点で目立つのは確定なのに何言ってんだお前?」
「…そういうことじゃなくて、参加者の中で目立ちたくないの。」
「でも目立たないと一番にはなれないぞ?お前馬鹿じゃないのか?」
ベルノに近づき彼女と同じ目線に屈んでニコッと笑った次の瞬間容赦なく左頬に平手打ちをする。
「いだぁぁぁぁぁぁい!!?」
「私には作戦っていうのものがあるの。アンタみたいに目先の感情で行動するほど頭は悪くないのよ。」
「でも…でも今……目先の感情で………私の頬をぶったのだ……………。」
「物分りの悪いガキにはこれくらいしないと通じないからね。」
「私物分り悪くないのだ…。」
「…はぁ。とにかく私は私なりの方法で上を目指す予定があるから今あんたとやり合う理由がないの!わかった!?」
「……私はあるもん!」
「はぁ?」
「ベルノ…私クソ魔法使いにぶたれたもん!やられたらやり返す!それがことわりだってみら……『ルーマ』ちゃんに言われたもん!」
「……もー面倒くさいわねぇ。分かった分かった相手すればいいんでしょ?相手してあげるから私が勝ったらこのイベント中は関わらないでね?」
「じゃあ私が勝ったらクソ魔法使いをしもべにしてやる!」
「私子供は好きな方だけど、こういう生意気な子供は嫌いなのよねぇ…。ま、あんまり好きじゃないけど暴力での教育っていうのもたまには必要だしお互い同意の上やり合うから問題なし、か。遠慮なくぶっ飛ばすから覚悟しな!」