テラーノベル
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「クソ魔法使いを倒してルーマちゃんに褒めてもらうんだ!」
「なら私はあんたをぶっ倒してそのルーマっていうお友達にお前の手綱を握らせるとを誓わせようかなぁ?」
「やれるもんならやってみろ!このクソ魔法使い!召喚【三匹の銀狼】」
その掛け声とともに彼女の背後に魔法陣が展開されそこから銀狼が三匹現れる。
「ほぉ?召喚士としての素質もあるのか魔物使いていう職業は…。」
「ルーマちゃんに教えて貰って使えるようになったんだもんね!それに私ルーマちゃんの話だと難しいステ振りしてるって言われててそれを活かすためにも色々してたんだもん!」
「じゃあそれ『クソ魔法使い』に見せてくれるかぁ?」
「言われなくても見せてやるクソ魔法使い!行くよみんな!!」
呼び出した銀狼のうち一体に跨りほか二匹が先行してミーシャに迫る。本来魔法使いであるミーシャは接近戦が得意ではないのだが、その弱点を完全とまではいかないが克服しようと努力しその結果彼女は他の魔法使いとは少し毛色の違うものにと変わっていた。
「んなっ!?」
「私は魔法使いだけど、魔法だけに頼るチキン野郎とは訳が違うんだよね!」
襲い来る二匹の銀狼相手に杖でいなして拳よりも破壊力のある蹴りで攻撃を決めている。その異様な光景に少したじろぐベルノだったが彼女の考えていた策をそのまま実行する。
「みんな痛いけどもう少し耐えてよね!集合!【スライムの笛】」
前衛の銀狼二匹の後ろからやってくるベルノは突如笛を吹き鳴らす。そして銀狼から降りた後ウィンドウを開いてなにかを装備する。どうやら彼女の使う武器は拳のようで、装備したのは腕部を護る為の防具だった。
「クソ魔法使いと言えど距離を詰められこの数で囲まれたらどうにもできないでしょ!」
完全に意思疎通が出来ているかのような銀狼とのコンビプレイ。犬畜生を相手してるとクソガキの意識がそれて、逆にクソガキを意識すれば犬畜生がバランスを崩すような攻撃を繰り出す。なにより、こうも近寄られたら私の十八番である魔法も機能しない。ガキのくせに考えてるな。
「だがしかし、こんな薄っぺらい装備でこのイベントに参加してる時点で気が付くべきだったなクソガキ?」
「な、なにをぉ!?」
「絶対に負けない、とは言わないがそれ相応の覚悟があり自信があるからこの装備で私はここに立ってるんだよ。」
「私の攻撃に対して何も出来てないくせにエラソーにしやがって!」
「それじゃあ少し見せてやる。私がこのイベントに向けて練習した技のひとつを!」
銀狼とベルノの攻撃をいなしながら魔力を体内の一点に集めていく。そしてそれが一定値を超えた時今まで貯めていた魔力を外部に向けて拡散する。
「クソガキが吹き飛びな!【魔力暴走『壊』】」
瞬間ミーシャの体が白く発光し直後膨大なエネルギーが外部に漏れる。その衝撃により呼び出した銀狼は消え失せ、爆心地の中心にいるベルノもまたその爆破に巻き込まれる。
「はぁ…はぁ………。無駄に威力が高いし消費MPもデカイから無闇やたらには使えないが、今回のように囲まれた時に小出しで使えるようになればまだギリ実用的か?なんにせよ、これでクソガキも反省したろ。」
「…反省もクソもないもんね!」
「なっ!?」
何処から現れたのかは分からないが一瞬の油断。その隙に距離を詰められ腹部に一撃衝撃がはいり後方に大きく飛ばされる。
「ゴホッゴホッ……。んのやろう……!」
「見たかクソ魔法使い!私だって戦えるんだよバーカバーカ!」
(幸い火力は無いようだが、それでも私のステ振り的にあの攻撃をあと三回は受けたらやられるな。んで、あの爆破を受けといてケロッとしてるあのクソガキだけど絶対なにか秘密があるはずだ。仮にあの瞬間私から離れたとしても致命傷、あるいは重症を負うはずだが見たところ体力五割は削った程度で済んでる。そのわけはおそらく……。)
「…なるほどさっきの笛はそういう事か。」
「おっ!クソ魔法使いも気が付いたのか?そう!私の本職は魔物使いだ!一定の数モンスターを倒すことで得られる専用スキル【〜の笛】これで今まで私が倒してきたモンスターを呼んで戦闘を有利に進めるそういうしょくぎょーなのだ!
あの爆発の瞬間私はすぐに離れてさっき呼んだスライム達を使って私の体を包んでもらって保護したのだ!どーだ!!賢いだろ!」
(スライムを防護服みたく扱うとはその辺は子供ならではの発想か。それで守られたのも癪だがそれより驚くべきなのは私の爆発に対して即座に離れることの出来る脚力。子供の俊敏さと言うにはちょっと説明がつかないが……。いや待てよ?さっきこいつルーマというお友達から難しいステ振りをしてるって話をしてたよな?それで今の超スピード。まさかこいつ…………。)
「おいクソガキ!」
「なんだクソ魔法使い!」
「お前もしかしてそのルーマって友人から足が早いとか言われなかったか?」
「おぉそうだぞ!リアルでも私は足が早いからな♪」
(やっぱりコイツプリンと同じ極振り型の馬鹿だ。しかもプリンと違って速さオンリーに極振りした正真正銘の速さ極振りのプレイヤー。
プリンはこの手のゲーム初心者でオススメと言われた数値だけを上げたように、このクソガキはリアルで足が速いからこっちも同じがいいとかそういう理由だけで上げたタイプの馬鹿だ。だが、その馬鹿さがあいつの性格とマッチしている。リアルでも足が速いから身体の使い方も直感的にわかる。その上あのクソガキ、少なくとも小学生とかその辺の歳頃だろうからこういう『遊び』に関してはそれを卒業した私は不利であいつの方が有利だ。
私だって魔法攻撃力に特化させたとはいえ動き回るやつに当てられなければそんなものないのと変わらない。身体能力は確実にこちらが負けてるなら頭で勝負するしかないが、私とてそんな賢い訳じゃないからどうする……。あっ、そうか。あいつバカなら丸見えの罠にもハマるよな。なら、その速さと自身の馬鹿さを恨みながらやられてもらおう。)
「なるほど…。速さが売りだからこそ火力が低くてそういう装備を付けてなお私を一撃で仕留められないわけだ。」
「いーもんべつに!私はこの速さとスキルを使ってすうてきゆうりを生み出しつつ、手数の多さで圧倒するのがきほんせんじゅつってルーマちゃんが言ってたからね!」
「ま、とにかくさっきの一撃で私を倒せなかったのを悔やむといいよクソガキ?」
「うっせぇ!クソ魔法使い!!今度こそボコボコにしてやる!召喚【三匹の銀狼】集合【アタックボアの笛】」
再び銀狼が現れベルノの笛が平原に木霊する。さっきのスライムの笛といい直ぐにその効果が発動するわけじゃない。頭数増やされる前にこっちのやるべき事は終わらせておくか。
「これだけ距離があるなら『魔法使い』としての本領発揮が出来そうだ!【魔法複合】『火』『氷』振りそそげ【オーロラシャワー】」
空に数え切れないほどの魔法陣が作られた後そこから『ファイア』と『アイスランス』が大量に降り注ぐ。
「のわぁぁぁぁぁ!?あ、危ないだろクソ魔法使い!?」
「そりゃこっちもやられる『かも』しれないんだ。自衛としてここまでやるのは当然でしょ?」
「むぐぐぅ…。ルーマちゃんがいればこんなの簡単に突破できるのに!」
「その場で雨避けてるだけじゃ私に攻撃できないぞぉクソガキぃ?」
「う、うるさい!すぐに向かうから待ってろ!アチチチ…」
さて、この【オーロラシャワー】に気を取られてるうちに【トラップアップ】を使わせてもらおうかな。流石に私も人の心は持ち合わせてるから『ソイルニードル』で串刺しはちょっとね。なので、さっきやったみたいな落とし穴を大量生産しておこうかな。そこを踏んだらそのまま落ちてまた下半身だけ埋まるようにしておけばあれも懲りるだろうし。
「んぁ!!お前今地面に何かしたろ!?」
「あっ、やべぇ…バレた?」
「私が雨に夢中になってる間にそんな卑怯なことしようとしてたのか!やっぱり魔法使いはクソだな!」
「けど、バレたところで特に問題ないんだよね。だってお前こっちに来れないだろ?」
「行けるもん!ルーマちゃんが言ってた!魔法やスキルを使うにはMPが必要でそれが無くなると何も出来なくなるから大事に使うんだって!お前のこの危ない雨もMPをいっぱい使ってるから時間使えばいずれ止む!その時がお前の最後だクソ魔法使い!」
「やまない雨はない、か。確かにそうだけどそうだとしても私のところにお前は来れないの。」
「そんなわけないもん!行くよ銀狼ちゃん!それとベンゾルテちゃんの子分達!」
銀狼のうち一匹がベルノを自身の背に乗せてほか二匹が先導する形の陣形を作る。その後ろから目視で見る限り三十体以上はいるであろうイノシシの群れがどこからともなく現れ銀狼たちの前を走り出す。【オーロラシャワー】は未だ発動しているにもかかわらずベルノとその仲間たちは真っ直ぐこちらに向かって走ってくる。
炎や氷に貫かれてやられていくイノシシもいるがそいつらがやられた事でその道が瞬間的に安全になりその判断をベルノが乗っている銀狼がしてそこに移動し徐々に距離を詰めてくる。
「モンスターをこうまで従えてお前さん森の王でも名乗るつもりかぁ?」
「みんなの頑張り、ベルノ無駄にはしないのだ!!」
また一匹また一匹とイノシシがやられていく度距離が近くなりベルノを護る二匹の銀狼も心做しか顔つきが勇ましくなってる。
「このクソ魔法使い!私がお前のような心無い攻撃を破って私の為に頑張ってくれたイノシシちゃんや銀狼ちゃんの仇をとるのだぁぁ!!」
目前まで迫っていたその時【オーロラシャワー】が突然ピタリと止み、前を走るイノシシたちが突然姿を消す。そして護衛の銀狼も視界から消え、自身の視界も変にぐらついたあと何故か宙を舞ってそのまま地面に顔から落ちる。痛みはなくあったのはただ広がるだけの闇だった。
『ど、どうなっているのだぁぁぁ!?』
「あちゃ〜、頭から入ったのかお前さん。」
『訳わかんないのだァァ!?』
「声が籠っててもうっさいのは伝わるもんだなぁ?今あんたは私の作った落とし穴にハマってるの。」
『なぬぅぅぅ!?』
「前を走ってたイノシシが消えたのも突然視界がクルクル回ったのも乗ってた狼が落とし穴にハマったから身を投げ出されて起きた現象だよ。で、今視界が暗いのはその落とし穴に顔からハマってるから。」
『く、くそぉぉぉぉぉ!!卑怯者だぞぉ!』
「さっきまで降らしてた【オーロラシャワー】実はあれにも細工しててファイアやアイスランスが落ちた箇所に【トラップアップ】の効果を付与して落とし穴を形成。発動条件は【オーロラシャワー】を止めることとその上に何かが乗ること、通ることが条件。であんたは見事それにハマったわけ。最初にあんたに見せてたあの魔法は別になんでもない光るだけの魔法、言うなればただのブラフよ。」
『クソッ!クソッ!!悔しいのだァ!!』
「そんなジタバタしても負けは負けだクソガキ。分かったらイベント終了後私の元に来ること。そのお友達のルーマって子も連れてな?」
『認めたくけどそうするからせめてクソ魔法使いの名前を聞かせろ!』
「あ〜そういえば名乗ってなかったね。私は『冷笑の女帝ミーシャ』てネット掲示板で言われてるわ。」
『ミーシャだな!?覚えたぞクソ魔法使いの名前!!次は絶対勝つから覚えとけ!!』
「はいはい…。そんじゃ助けてやるから大人しくしとけよぉ?」
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