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「…………ずっと振られ続けてきた俺は……『女に本気になっても、どうせ振られるんだったら、恋愛感情抜きのドライな付き合いした方がマシ』って考えるようになった」
額に掛かる前髪が鬱陶しくなり、純は両手でグシャリと髪を掴んだ後、後ろへ撫で付ける。
「バーや飲み屋で、好みの女がいたら声を掛けて、ワンナイトの関係を持ったり、その延長で、セフレになった女もいた。恋愛に臆病になっている自分の気持ちを隠すように……俺は……多くの女と…………遊び続け、身体の関係を…………持ち続けてきた……」
純の独白に、隣にいた恵菜が、ヒュッと息を呑んだような気がして、刹那、周囲が無音の空間に包まれたのは、気のせいだろうか。
恐らく、恵菜は純に失望しているかもしれない。
いや、失望しているだろう。
彼女の離婚の原因のひとつは、元夫、勇人の不倫でもあるのだから。
きっと恵菜は、女癖が悪く、遊んでいる男は、毛嫌いするタイプではないか、と純は思う。
「言い訳に聞こえるかもしれないけど、恋人がいた時には、他の女と遊んだ事は一切ない。特定の恋人がいない時に、女遊びをしていた、って事だけは伝えておく。とはいえ、こんな俺が言っても、説得力なんてないけどな……」
ハハハッ……と、彼は眉尻を下げながら、乾いた笑みを力なく浮かべている。
「俺も四月で三十五になるし、いつまでも遊んでいる場合じゃない。本気の恋愛をしたい気持ちも、当然ある。それに……」
海を眺めていた純が、ゆっくりと恵菜と向き合った。
「恵菜さんは信じてくれないかもしれないけど、ここ最近、女性と会っているのは…………君だけだから」
エキゾチックな顔立ちの彼女が、黙ったまま純を見上げている。
恵菜の面差しは無表情で、感情や気持ちが読み取れない。
打ち寄せる波の音が、先ほどよりも大きく響く中、気まずさを孕んだ雰囲気が二人の間に漂う。
「聞きたくもない変な話をしてしまって…………本当にゴメン」
上背のある彼が、身体を丸めるように、恵菜にペコリと頭を下げた。