テラーノベル
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この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません
宮舘→《》
阿部→「」
佐久間→『』
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宮舘side
ひらり、はらりと散りゆく桜は美しくも儚い。どんなものも、咲くまでには長い時間が掛かるのに散り際は一瞬だ
この恋と、一緒だな。
《阿部、好きだったよ》
「…え?」
《入学式の日からずっと、君のことが好きだった》
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俺にはずっと好きな人がいた。一目惚れだった。入学式の日、主席として壇上に上がって堂々と代表挨拶をやりきった彼は、どこか冷めた顔つきをしていた。でもその冷えきった表情が、その瞳が美しくて。その人が”阿部亮平”という人だということを知ったのは入学して3日目のお昼休みだった
『今日知ったんだけど俺っち隣の席さぁ、主席くんだったんだよねぇ』
【俺入学式行ってねえから顔も知らねー…】
《へぇ、いいなぁ…》
【いいなぁ?!笑 なんでだよ、どんな人かもわかんねーのに】
咄嗟に本音が溢れてしまうほどには既に惚れ込んでしまっていたらしい
《いや、勉強教えてもらえるじゃん?俺らみたいな馬鹿にはもってこいじゃない?》
『確かに、席替えするまでは教えてもらっちゃおっと』
【そういやその主席って誰だっけ?】
『誰って?』
【名前。まさか知らんとか言わねえよな?】
『そりゃ流石に知ってるわ笑 阿部くんだよ、阿部…なんだったかな、あそう、阿部亮平くんだ』
《阿部、亮平…》
【何、涼太知ってんの?】
《なんか噂には聞いてたから》
『もう噂ンなってんだ?』
うちのクラスでも阿部くんはクールでかっこいいだの喋ってるとこほぼ見たことないからミステリアスでいいだの色々と言われているのは聞く。その裏側にある何かを俺は知りたかった。本来の彼は、もっと明るい人なんじゃないかとか、逆にあれが素なんだとしたらそれはそれで大人っぽくていいなぁとか、色々考えていた。密かに彼に想いを寄せながら日常を過ごしていると俺にも転機が訪れて
『よっ!今日はねぇ、一緒に飯食うやつもう1人連れてきた!』
【えっ誰?…俺人によっては多分会話出来ねえぞ】
《そうなったら佐久間が全部繋いでくれるでしょ笑》
『まあなんとかなるなる、おいでー』
「あ、どうもあの…初めまして」
申し訳なさそうにお弁当を持って俺の真向かい、佐久間の隣に座ってきたのは紛れもない俺の想い人、阿部くんだった
次の日も、さらにその次の日も、阿部くんを入れて4人で一緒にご飯を食べた。いつしかそれが日常になっていって、4人で居ることは当たり前になっていた
「舘さまの弁当っていつも綺麗だよね」
《そう?普通でしょ》
「いやいやその卵焼きとかさ、形だけじゃなくて層綺麗すぎる。俺そんな綺麗に作れないもん。それ地層とかだったら教科書載るんじゃないかなぁ」
《地層?!笑》
わけわかんない例えとかを出してきたり知らないことを聞いたらすぐに答えてくれたり。優しくて知的で芯があって、でも何処か儚くて目を離したら消えてしまいそうな彼が俺にはとても魅力的に見えていて。どうやったら佐久間よりも、翔太よりも仲良くなれるのかを考えたりもしていた。実際は作戦も何も思い付かなくて、全然関係性は変わらなかったんだけれど
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2年の夏、翔太から”阿部ちゃん佐久間のこと好きなんだって”と聞いた。薄々気付いてはいたけれど、言葉にされるとやっぱり理解できなくて、というか理解するのを拒んでしまって。この恋は諦めようと思っていても時間が経てばいつか、という思いを捨てきれないのが辛かった
《阿部はさ、佐久間のどんなとこが好きなの?》
こうやって少しでも阿部の好みに寄ればわんちゃんあるんじゃないかとかも考えて聞いてみたことだってあった
「んぇー…なんだろうな、俺もあんまわかんないんだけどね。好きになったキッカケ?らしきものが多すぎて笑」
《どっからどう見ても良いやつだもんね、佐久間って笑 例えば?》
「んー…聞き取りやすい声とか俺を見てるときのキラキラした目とか、アニメとかの好きなものに熱中してるときの横顔とか、あの無邪気な笑顔とか、最初はそういう見た目のアレが多かったかな」
《最初は…最近は中身なんだ?》
「関われば関わるほど共通点がないんだよね、でもそれが逆に心地よくて。俺の好きなものを理解してくれようとする姿勢がよく見えるとことか特に好きなのかな」
《…そっか、大好きなんだね笑》
「もーめっちゃ!笑 舘さまはいないの?そういう人」
《んー…いた、けど。その人はその人で別の好きな人いるみたいだから諦めようかなって》
「ぇーなにそれ辛…その人が他に好きな人がいるってのはもう確定なの?」
《…うん》
あぁ、勝てないなって、思った。俺がどれだけ頑張ってもこの二人の間に割って入ることは出来ない。そんなことは許されない
彼のことを諦めたかった。何もないみたいな顔をして、またみんなで笑いたかった。阿部の顔を見る度に佐久間が脳内にちらつくのが嫌で
《佐久間はさ、阿部のことどう思ってんの?》
『んえ、阿部ちゃん?友達…いや親友?!』
《好きとかはないの?あのー恋愛感情的な》
『んや俺は別に居るから笑 ま、そいつ彼氏出来たみたいだから俺勝手に失恋したんだけど~』
《えっ佐久間も好きな人居たんだ》
『いたいた、涼太も仲良い人だよ』
《…翔太、?》
『内緒ね笑』
いっそ佐久間が阿部のことを好きで居てくれたら良かったのに。そのせいもあって、この熱を冷ます方法もわからなくて。ズルズル気持ちを引きずったままついに受験生になってしまった
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受験も終わって一段落ついて、寒くなってきた頃に佐久間の様子がおかしくなってきた。あの明るい笑顔は全然見えないし、覇気がない。遊びに誘っても断られるばかり
何があったのかしつこく聞いていると、ストーカーにあっているかもしれないとの事だった。犯人捜しをしたいというよりは平穏な生活を取り戻したい、佐久間はそう言っていた。そんなときに俺はそのストーカーの存在に気が付いてしまった。盗聴器を彼のカバンにつけていたり、家まで帰るのを見送って?いたりするところを目撃してしまった。でもそれを佐久間に伝えることは出来なかった
俺が判断を間違えてしまったから。未だに佐久間は見つかっていない。佐久間はきっと…いや、もう既にこの世には居ない。悔やんでも悔やみきれないし、本当に申し訳ないことをしてしまったとつくづく思う、というか申し訳ないなんて言葉じゃ足りない。そして佐久間の命を奪ったのは
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《…でも、俺は阿部と同じくらい佐久間のことも好きだった。それは友達としてだけど》
「…ん?なんで急に佐久間の話?あ、卒業だk」
《佐久間を殺したの、阿部だよね》
「…」
頼む、否定してくれ。そんな願いも虚しく黙りこくった彼が俺に向けた眼は、出会った日とは違う冷たさを持っていた
コメント
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阿部ちゃんなんですかー⁉️❓❓❓❓❓片思いだから・・❓❓🍀😱😱