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#普通
野々さくら
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ありあ
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眩い光の中で、信愛の意識は千歳の記憶へと引き込まれていく。
そこは夕暮れの住宅街だった。
数人の女子生徒に囲まれた千歳は、気怠そうに周囲を見回す。
「どこに連れてく気?」
誰も答えようとはしない。
すると飛鳥が鼻で笑った。
「鈴蘭がお前を待ってんの」
別の女子生徒も冷たく言い放つ。
「わかったら黙って歩けっつーの」
千歳は立ち止まり、静かに問い返した。
「私に何の用なの?」
返ってきたのは嘲笑だけだった。
「さあ、知らない、多分暇つぶしっしょ」
「お前は良い暇つぶしの道具だから」
千歳はため息をつき、小さく首を振る。
「帰らせてもらう、アンタらに
付き合ってる程暇じゃないから」
その言葉に女子生徒たちの表情が険しくなる。
「何度も言わせんなよ」
「鈴蘭の命令は絶対」
「そうそう♬」
「お前に拒否権はねーから」
「ぐだぐだ言わずに来りゃいいんだよ。」
次の瞬間、一人の女子生徒が千歳の長い髪を乱暴に掴み、そのまま力任せに引っ張った。
「ちょ、ちょっと、痛いから辞めて」
千歳が苦痛に顔を歪めても、飛鳥は平然と吐き捨てる。
「お前が抵抗するからだろ?」
抵抗するほど強く引かれ、千歳は無理やり住宅街を歩かされていく。
やがて一行がたどり着いたのは、古海商店街近くの交差点だった。
そこには腕を組み、不敵な笑みを浮かべた鈴蘭が待っていた。
「あ、来たね」
女子生徒は得意げに報告する。
「連れて来たよ、ほら!」
その直後、千歳の背中に強烈な衝撃が走った。
女子生徒の蹴りが容赦なく突き刺さり、千歳の身体は前方へと投げ出される。
「あっ!」
足をもつれさせ、その場へ倒れ込む千歳。
痛みに耐えながらゆっくりと顔を上げると、怒りに満ちた瞳で鈴蘭を見据えた。
「こんな事して・・・どういうつもりなの?」
鈴蘭は冷めた目で千歳を見下ろし、つまらなそうに肩をすくめた。
「お前さ・・・つまんないんだよね」
千歳は眉をひそめる。
「は?何の話?」
鈴蘭は鼻で笑う。
「大抵のヤツは私に従うのにさ」
そして、ゆっくりと千歳を指差した。
「お前は違う」
「だから?」
千歳が即座に返すと、飛鳥が横から口を挟む。
「まだ分かんない?お前みたいに鈴蘭の
思い通りにならないヤツはいらねーんだよ」
「そーゆーコト♬」
千歳は静かに問い返した。
「だったら無視してくれれば良くない?」
鈴蘭は冷たく笑う。
「それは私のプライドが許さない」
千歳は呆れたように息を吐いた。
「プライドって言うより、意地の方が正しくない?」
鈴蘭の眉がぴくりと動く。
「あ?」
千歳はまっすぐ鈴蘭を見据えた。
「私があなたに屈服しないから、意地になって──」
その言葉を聞いた瞬間、鈴蘭の表情から笑みが消えた。
「そういう所がウザってーっつってんだよ!」
怒鳴ると同時に、鈴蘭は千歳の髪を鷲掴みにし、そのまま道路の方へ力任せに引きずり始める。
その様子を見た女子生徒たちの表情から、さすがに笑みが消えた。
「ちょ!?鈴蘭!?それはやりすぎだって!」
鈴蘭は振り返り、動揺した女子生徒たちを鋭く睨みつけた。
「お前らまで私に逆らう気?」
飛鳥は怯えたように口を開く。
「で、でも・・・」
しかし、その言葉を鈴蘭は怒声で遮った。
「こんなヤツ、死んで悲しむヤツなんて
誰一人居る訳ねーんだから問題ねーんだよ!」
狂気じみた笑みを浮かべると、仲間たちへ命令する。
「ホラ!お前らも!ボサっと
してねーで手伝えよ! ほら!」
三人は顔を見合わせる。
戸惑いはあった。
それでも、鈴蘭に逆らう勇気はなかった。
「わ、わかった・・・」
三人は鈴蘭に従い、千歳の身体を抱えながら道路の方へ引きずっていく。
「ちょ、やめて──」
千歳の必死の声が響く。
鈴蘭は冷たく吐き捨てた。
「今更命乞いか?ぁあ?意味ねーんだよんなの!」
そして、千歳を見下ろしながら言い放つ。
「こんな事して・・・アンタら犯罪だよ!」
千歳は涙を浮かべながら叫んだ。
「うるせーんだよ!」
鈴蘭は怒鳴ると、全身の力を込めて千歳を車道へ突き飛ばした。
「あっ!車──」
次の瞬間、飛鳥の言葉をかき消すかのように、甲高いブレーキ音が住宅街に響き渡った。
タイヤが激しく路面を擦り、車は急停止する。
しかし、その時にはもう遅かった。
千歳は道路の上に倒れたまま、ぴくりとも動かない。
頭から赤い血がゆっくりと流れ出し、アスファルトを真っ赤に染めていく。
言葉を発することもなく、その瞳は静かに閉ざされていた。
飛鳥は震える声で呟く。
「ち・・・千歳?」
返事はない。
女子生徒の一人が恐る恐る鈴蘭を見る。
「鈴蘭・・・これ・・どうすんの?」
誰も動けない。
誰も現実を受け止められなかった。
一人を除いて。
鈴蘭だけは、千歳の顔を見つめると、小さく口角を吊り上げた。
「ふふふ・・・」
その笑みは、背筋が凍るほど不敵だった。
やがて女子生徒たちは、その異様な笑みに気付き、鈴蘭の表情を覗き込む。
そして、目を見開いた。
鈴蘭は楽しそうに笑っていたのだ。
「死んだよ・・・」
ぽつりと呟いた次の瞬間、その笑いは爆発する。
「あははは!死んだよ!ほら!死んだ!あははは!」
まるで面白い冗談でも見たかのように、腹を抱えて笑い続ける。
「呆気なく死にやがったよ!あははは!あんな
偉そうにしてたくせに死にやがったよ!あははは!」
飛鳥は呆然と鈴蘭を見つめることしかできなかった。
「す、鈴蘭・・・」
そこへ、車のドアが勢いよく開く音が響いた。
青ざめた若い男性が車から飛び降りてくる。
「あ・・ああ・・・」
突然の惨状に言葉を失い、その場に立ち尽くした。
鈴蘭はその男性へ視線を向ける。
先ほどまでの狂気じみた笑みは一瞬で消え、何かを思いついたように目を細めた。
そして、慌てた様子を装いながら千歳のもとへ駆け寄る。
「千歳! 千歳!」
肩を揺さぶり、涙声を作る。
「目を開けてよ!」
もちろん返事はない。
鈴蘭は震える声で叫び続ける。
「千歳ったら!ねぇ!」
しかし、その瞳は閉じたままだった。
鈴蘭は唇を噛み、悲痛な表情を作りながら叫ぶ。
「なんで自殺なんてバカな真似したのよ!」
鈴蘭は千歳の亡骸に縋りつき、その胸へ顔を埋める。
肩を震わせながら、悲痛な声を漏らした。
「なんで!なんで!なんで!」
その姿は、まるで最愛の友人を自殺で失った悲劇のヒロインそのものだった。
車を運転していた若い男性は、青ざめた顔で一歩近づく。
「あ・・あの・・・」
恐る恐る千歳を指差した。
「そ、その子は?」
鈴蘭は涙に濡れた顔を上げる。
男性を睨みつけると、震える声で叫んだ。
「なんで千歳を殺したの!」
突然浴びせられた言葉に、男性は息を呑む。
鈴蘭はさらに畳みかける。
「あなたがちゃんと確認してくれていれば」
涙を流しながら千歳を抱き締める。
「千歳は死なずに済んだかもしれないのに!」
男性は言葉を失った。
「でも、今のは明らかに君たちが──」
そう言いかけた瞬間、鈴蘭は鋭く叫ぶ。
「あなたのせいよ!」
「そ・・そんな・・・」
男性の脳裏に、一瞬だけ先ほどの光景が蘇る。
少女たちが千歳を無理やり道路へ突き飛ばした、あの瞬間。
しかし、その記憶はすぐに揺らぎ始めた。
目の前では、友人の亡骸を抱いて泣き崩れる少女。
自分は車を運転していた当事者。
強烈な罪悪感が現実を塗り替えていく。
もしかしたら、自分が見間違えたのではないか。
飛び出してきたのは事故だったのではないか。
自らの過失を正当化したいという無意識の防衛本能は、目撃したはずの事実さえ曖昧なものへと変えてしまった。
男性はその場へ力なく座り込み、震える声で呟いた。
「俺・・なんて事を・・・」
男性はアスファルトに膝から崩れ落ち、両手で顔を覆った。
男の言葉を聞き、千歳の胸に顔を埋めて泣くふりをしていた鈴蘭は、計画通りと言わんばかりにほくそ笑んでいた。
コメント
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読み終わりました……🥀 この話、本当に心臓に来ました。千歳が「言い返す強さ」を持ってたからこそ、鈴蘭の執着がどんどんエスカレートしていくのが怖くて。あの最後の笑い声、鳥肌立ちました。車道に突き飛ばされる瞬間、そして事故の後、平然と「♡♡♡」に仕立て上げようとする鈴蘭の異常性が、本当に生々しくて。 千歳の無念が痛すぎる…😢 この先どうなるのか、気になって仕方ないです。続き、待ってます。