お試しでノベル作品に挑戦してみます。
人気であればノベルでの短編集作るかも。
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知りたかった。君のことの全てを。好きな食べ物も、タイプも、色も、服も、本も。君が煙草を吸う理由も。
だけど、何も聞けないままで。関係性も前までと何も変わらないままで。何年も前からずっと抱えてきた想いは、重くなっていくばかりで、もう抱えきれないくらいに膨れ上がっていた。
『ちょっと、ここにいちゃ駄目でしょ』
「なんで。おれ煙とか気にしないし」
『気にしない、じゃなくてね。危ないでしょ。健康面とか』
そんなのあんたも同じだろ、と言いかけて飲み込んだ。先端から焦がされたそれから大量の煙が出てきて。俺は反動的に息をとめた。
「なんで吸うの。死んでまうで」
『死んでもいいから吸いたい』
「馬鹿ちゃうん。依存してるで」
『だね。もう抜け出せないね』
そう言って無邪気に笑ったその目は、何かを思い出すかのように遠くを見つめていた。その細める目の先に、何が見えてるの。
君が煙草を吸っている、俺の嫌いな時間でさえ、君の隣に居たいと思っているのにどうしてその目に俺は映れないの。
『ロボロはね、私といちゃ駄目なんだよ』
「なんで」
『危ないからだって。私煙草たくさん吸うし、お酒もたくさん飲むから。ロボロに迷惑はかけられないじゃん。』
「べつに、迷惑とか思わへんけど。」
『でもね、駄目なんだよ。ロボロには長生きしてほしいからさ。煙草って副流煙の方が怖いんだよ。知ってた?』
そんなこと、知ってる。やっぱりまだ君の中で俺は子供のままなんだ。君と初めて会った時に俺がランドセルに慣れたくらいの少年だったから、その時の印象がまだ根付いてるのだろう。
実際は、君が思うより俺は大きくなって、もう自分一人で生きていかなくてはいけないくらいの歳にはなったのに。
でも、君との年齢差だけは埋まらない。7歳差というそれなりに大きい君との年齢差だけ、変わってくれなかった。こんなに歳が空いてるから、まだ子供を扱うように俺の頭を撫でてきたりするんだ。
「俺、長生きなんてしなくてええから、○○の傍にいたいんやけど」
『わたしには、ロボロを幸せに出来る自信はないもん。』
そんな言葉で、突き放さないで。
『…私、これから用事あるから。またね。』
またねって何。もうどうせ、また、もないのに。君が去ったこの場所に、俺は一人ぼっちになって。突き放されてもなお小さくならない彼女への好意を抱えて、俺は足をコンビニへと進めた。
君がよく吸う銘柄の煙草を買った。同じ銘柄の煙草を吸えば、少しは君に近づけると思った。
でも違った。ただただ、苦くて、苦しかった。一緒に買ったライターで、君に対する恋心も燃やして、無くしてしまいたかった。
でも、出来なかった。
コメント
1件
いつもとはまた違った雰囲気が感じられてノベルも良いですね!