テラーノベル
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山田旅館の広い厨房は、島の住人たちで溢れかえっていた
普段なら朝食の準備で忙しい時間帯だが、今日は少し違った、厨房の入り口から廊下にまで人が溢れ、まるで何かの催し物が始まるかのような賑わいだった
「わぁ、すごい人!何ごと?」
桜が目を丸くしている、目が覚めたらジンがいなかったのでそこら中を探し回っていたら、旅館の従業員が「本場のキムチが習えるぞ」と言っていたので、まさかと思って厨房に来て、あんぐり口を開けた
「桜ちゃん、あんたええ旦那さんもらったわねぇ!」
「ワシらにキムチの作り方教えてくれるそうじゃぞ!」
「ええ~?ジンさん?そ・・・そこにいるのはジンさん??」
口々に騒ぐ島の人々の視線の先を追って、桜も目を凝らした、厨房の真ん中の大きなステンレスの作業台の前に、見慣れた長身の男性が立っている、ジンだった
いつものスーツ姿ではなく、紺色のエプロンを身につけたジンは、少し緊張した面持ちで材料を確認していた。白菜、大根、ニンニク、生姜、唐辛子粉、そして——甘エビ
作業台の上には、まるで料理番組のセットのように、材料が整然と並べられている
「それでは・・・まず白菜の塩漬けからですが・・・」
ジンが丁寧にみんなに手順を説明し始めた、その声は会社でプレゼンをする時とは違う、どこか穏やかで優しい響きがあった
大きなステンレスの作業台を囲んで、島の住人がそれぞれメモ書きをしたり、スマートフォンで動画を撮ったりしている
「白菜は・・・根本にだけ包丁を入れ、あとは手で裂きます」
ジンは少しだけ目を閉じた、母がいつもそうしていた手順を思い出す・・・
幼い頃、母の横に立って見ていた光景が、鮮明に蘇ってくる、白菜を一枚ずつ丁寧に洗って水けを取り、塩をすり込む、その手つきはまるで母の手が乗り移ったかのように自然だった
「まぁ〜!丁寧やね〜」
「さすが本場やね」
「へぇ〜、そうやってやるんや」
「塩の量はこれくらいでええんやね」
島の人々は真剣な眼差しでジンの手元を見つめていた、普段は漁や畑仕事で忙しい叔母達の目が、今はキムチ作りという一点に集中している、その熱気が厨房の空気を熱くしているようだった
「次に、ヤンニョム・・・薬念を作ります」
ジンは唐辛子粉、ニンニク、生姜をすり鉢で混ぜ合わせた
ゴリゴリと杵が鉢を擦る音が厨房に響く、そして甘エビをミキサーにかけてペースト状にし、肘まであるゴム手袋をはめ、大きなたらいの中に材料を全て入れると、ジンは力強く両手で混ぜ合わせ始めた
「おお~!」
と一斉に叔母達が感心したように唸り声をあげる
コメント
2件
オンマの思い出の味✨️再現できるといいな、出来上がりが楽しみです (*´˘`*)
わぁ✨️みんな真剣で素敵な光景😊 オンマのキムチ🇰🇷を再現するジンさんの姿におばちゃん涙が一筋落ちちゃったわ😢