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檻の中の動物のように、定正は部屋のあちこちを行ったり来たりしていた・・・



鈴子に対して腹が立って仕方がなかった、その怒りは同時に自分に対する怒りでもあった


定正百合との結婚生活を大事にしていた、例えば、妻と行くレストランに、愛人を連れて行くなど夢にも思わないことだし、百合は定正の付き合いのある富豪達とも上手くやってくれていた、美しい妻を養っている結婚生活は、彼の人生そのものである



鈴子と出会う以前にも浮気はしていたが、これはまったく別の自分がするのだと心得ていた、定正の仲間達はみな愛人を持っていたし、彼らの間ではこれが普通のライフスタイルだった


百合と鈴子を比べたら・・・やはり正妻の方が今まで一緒に人生を歩んで来た重みがある、百合のいたらない所は鈴子が埋めてくれていた




それでも鈴子だけは他の誰よりも違った、彼女に全てを与え、定正の人生といえる仕事の仕方も教えた、まさに結婚指輪以外は・・・鈴子にもう会えないなんて・・・彼女をこの腕で抱く事が出来ないなんて残酷過ぎる




自分が女の事でこんなに苦しむなんて・・・今まで定正が望めばどんな女でも手に入った、鈴子一人失ったとて、そんなものはこれからの人生でいくらでも挽回できる、そうだ、去る者は追わずだ!


定正はウィスキーをぐいっと飲み干した




「勝手にしろ!!あんなに幸せだったのに・・・彼女はどうしてそれをぶち壊すんだ・・・」





どんなに彼女を深く愛していようと結婚はできない・・・鈴子を正妻にすることだけは出来ない・・・でも彼女を正妻にするメリットは100以上思いついた、彼女は定正の事業欲をこの上なく満たしてくれる、同士の様な存在だ、それでも色んな事を考えて見てもどうしても無理だった、鈴子を正妻にするということは今まで定正が築きあげてきたことを全てひっくり返すことになる






やっぱり別れるしかないのか・・・明日飛行機は一人だな・・・





定正はもう一度ウィスキーを煽った





・:.。.・:.。.





朝方・・・鈴子は部屋のインターフォンの呼び出しで目が覚めた、ベッドの上で上半身を起こすと、フラフラしながら部屋のドアを開けた



そこには定正が立っていた、着替えもせず、シャツのボタンを二つ外し、一睡もしていないのだろう、血走った眼を鈴子に向けていた



「定正さん・・・?」





先に喋ったのは定正だった









「妻とは別れる!結婚してくれ!鈴子!」









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