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校舎の時計は午後の授業を告げるチャイムを鳴らしていた。
翔はいつも通り、クラスの中心に立ち、周囲の友達に笑顔を振りまいている。
一方、紬は静かに席に座り、ノートに向かっていた。外の世界ではお互い仮面をかぶり、学校では距離を保つ二人。
でも、翔の胸の奥には、いつも21:29のことがあった。
それは、二人の最初の特別な記憶――まだ中学の頃、偶然出会った神社の小さなベンチでの出来事から始まったのだ。
あの日も、放課後の校庭は静かで、夕日が赤く校舎を染めていた。
翔は学校での人気者としての顔とは別に、ひとりでベンチに座り、黙って空を見上げていた。すると、紬が同じ場所にやって来た。
「ここ、座ってもいい?」
「ああ…いいよ」
二人は初めて心を開いたまま座った。
翔はそのとき、外では見せない自分の内面を少しだけ話し、紬もまた、学校では隠している明るく抜けた自分を見せた。
その日の時間がぴったり 21:29。そして偶然にも「21:29」という歌を見つけたのだ。
「…なんで、こんなに話しやすいんだろう」翔は心の中で思った。
「私も…不思議。外ではあんなに緊張するのに」紬も同じ気持ちだった。
その瞬間から、21:29は二人だけの秘密の時間になった。
学校では距離を置いても、この時間だけは本当の自分でいられる_互いの心を確認できる時間になったのだ。
翔はふと思い出す。「あの日から、21:29だけは守りたい時間になったんだ」
紬も心の中で同じことを思う。「ここでなら、翔と私…心が重なっている」
その日の記憶が、今でも二人を21:29に引き寄せる。
「ねぇ翔…」紬が小さく声をかける。「今日は少し寂しかった」
翔はそっと手を握る。「俺もだよ、紬。でも、ここに来れば全部忘れられる」
しかし、学校では二人の距離は微妙にすれ違う。翔が女子と楽しそうに話す姿を見て、紬は胸を痛める。
紬も別の男子と話す姿を翔が目にし、心の奥がざわつく。
「外ではまだ、互いに素直になれないのかな…」翔は心の中でため息をつく。
「でも、21:29さえあれば大丈夫」紬も同じ気持ちで、夜のベンチを思い浮かべる。
放課後、二人は神社のベンチで再び向かい合う。
「翔…やっぱり、ここが一番落ち着くよ」紬が微笑む。
「俺もだ。21:29…最初の日のこと、覚えてるか?」翔は尋ねる。
紬は少し頬を赤くしながら頷く。「覚えてる。夕日が赤くて…二人だけの世界みたいだった」
その記憶があるからこそ、二人は21:29にこだわる。
学校では仮面をかぶる日々でも、夜のこの時間だけは本当の自分でいられる。
翔は紬の手を握りながら心の中でつぶやく。
「あの日の21:29が、今の僕たちを繋いでくれているんだ」
紬も同じ気持ちで手を握り返す。
「21:29は、私たちの原点…私たちだけの記憶」
夜風が頬を撫で、葉のざわめきが耳をくすぐる。
二人の心は、外の世界のすれ違いを超えて、静かに触れ合っていた。
21:29――最初の記憶から続く、二人だけの時間。その特別さが、これからも二人を支える。