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アルメリアは自分に対してやったことについては、もう許すつもりでいた。だが、エミリーがテイラー侯爵令嬢にさせたこと事態は良くないことだと思っていた。なので、エミリーから直接テイラー侯爵令嬢に謝るよう説得することにした。


「ごきげんよう、フィルブライト公爵令嬢」


すると、エミリーはアルメリアを見て驚き、怯えたように頭を下げた。


「お、お茶会でのことは、た、大変申し訳ございませんでした! もう二度とあのようなことは致しません!」


「わかりましたわ、謝罪は受け入れます」


そう言って、頭を下げているエミリーの手を取ろうと、アルメリアは手を伸ばした。指先がエミリーに触れた瞬間、彼女はあからさまにびくっとし、後ずさりした。


「ひっ!」


と小さく声をもらすと、恐怖に顔をひきつらせもう一度頭を下げ、アルメリアが声をかける間もなく走り去っていった。


驚きながら、ルーカスに訊く。


「私なにかしてしまいましたでしょうか?」


「いや、そんなことはないと思うが……。あいつらしくないな。それに、謝るのにあんな態度では失礼ではないか。すまない、後で注意してもっとしっかり謝って話をするように言っておく」


あれだけ怯えられては、話をするどころではない。アルメリアは話をすることを諦めると


「いいえ、もう謝ってもらったからいいですわ」


そう言って微笑んだ。そうして、この日はフィルブライト家を後にした。





配役が決まった数日後、ルーファスが慰問の帰りに寄ることがあったので、アルメリアは色々決まったことをルーファスに伝えた。すると、嬉しそうに頷き役のことも快諾してくれた。


「本当にありがとうございます。子どもたちも喜ぶでしょうし、先日は色々ありましたから、こういった催しは我々にもよい息抜きになるかもしれませんね」


先日色々あったというのは、ブロン司教とオルブライト子爵の冤罪事件のことだろう。あのときは確かに大変だったと思い出しながらアルメリアは答える。


「本当に、そうですわね」


そんな会話をしていると、不意になにかを思い出したようにルーファスは言った。


「そういえば『子どもたち』で思い出したのですが。アルメリア、ありがとうございます」


アルメリアには劇のこと以外で、お礼を言われる覚えがなかった。


「劇のことなら、もういいですわ。|私《わたくし》も楽しんでやっていることですから」


すると、ルーファスは首を振る。


「その事ではありません。キャサリンのことです」


そう言われても思い当たる節がなく、首を傾げてルーファスを見つめた。アルメリアのそんな様子に、ふっと笑うとルーファスは言う。


「キャサリンの就職先が、貴族の屋敷のメイドに決まりました。あれは貴女の口添えでしょう?」


そう言われて、フィルブライト公爵に孤児院の子どもたちの就職先の斡旋を頼んでいたことを思い出す。



「そうなんですのね、良かったですわ。では、キャサリンはフィルブライト公爵家に?」


ルーファスは首を振る。


「いいえ、クインシー男爵家です」


アルメリアはその名を聞いて胸騒ぎを覚えた。クインシー家といえば、ダチュラの家だったからだ。だが、ダチュラはほとんど屋敷におらず、教会に行っていたり教皇と行動を共にしているようだったし、クインシー男爵は良い評判しか聞いたことがなかったので、大丈夫だろうと自分を落ち着かせる。


しかし、もしものことがないとは言いきれず、何かあれば、自身の身分が知られてしまってでもキャサリンを連れ戻すことを心に決めた。


急に押し黙ってしまったアルメリアを心配して、ルーファスは声をかける。


「どうされたのですか? 少し顔色が悪いようですが」


「大丈夫ですわ。思いもよらない名前を聞いたので、少し驚いただけですわ。ところでルフス、キャサリンのことは、今後も定期的にどう過ごしているのか教えてくださらない?」


ルーファスは満面の笑みを浮かべた。


「もちろんです。アルメリアもキャサリンのことは心配なんですよね」


「もちろんですわ」


そう言って微笑み返した。






劇の準備は着々と進められていた。アルメリアはスパルタカスに、信頼のおける口の固い部下を数人選んでもらい、彼らにその他の役や、幕の代わりの布を広げ舞台を隠す役、道具係などを手伝ってもらうことにした。


そうしてあれやこれやと準備をしているうちに、あっという間にセントローズ感謝祭の当日となった。


劇は午前中に行い、その後孤児院の庭で兵士たち含め全員で昼食をとった後解散。子どもたちは、ルーファスにつれられて、セントローズ感謝祭の祭りに出かけることになっている。

物置小屋を楽屋として使用させてもらうことになり、早朝からそこへ集まった。

アルメリアはなんとか当日までに衣装を仕上げ、最終チェックで全員に衣装を着てもらった。


リカオンは細身なので、そこまでお直しは必要なかったが一番衣装の種類が多いので大変だった。


アルメリアは衣装を着たリカオンを、ほころびやサイズの合っていないところがないか、上から下までくまなく確認する。

そして、改めて頭のてっぺんから爪先まで確認すると驚く。


「リカオン、貴男もともと細身なのもあってとても似合ってますわ。流石ヒロインと言ったところかしら」


「お嬢様、そうやって僕をおもちゃにして面白がっていますね? こんなこと、お嬢様のお願いでなければ絶対に引き受けませんでしたからね」


アルメリアは笑いながら答える。


「わかってますわ。リカオン、付き合ってくれてありがとう」


すると、リカオンはさっと目を反らした。突然アルメリアがお礼を言ったから、照れているのかも知れなかった。

と、そこにリアムがやってくる。


「アルメリア、君たちはいつもこんな窮屈な格好をしているんですね。美しさや優雅さを追及するということは、影での努力が必要なのだと実感しました」


窮屈そうに、ドレスの胴回りの布地を引っ張りながらリアムは苦笑した。


そこにムスカリがドレスの裾を持ち上げながら歩いてくる。やはり所作が優雅で美しくいかにもどこかのご令嬢然としていた。

アルメリアは、なんだかんだ言いながらも、すべてのことをパーフェクトにこなす姿に驚きを隠せなかった。ムスカリはそんなアルメリアに微笑みかけた。


「これから先一生、このような格好をすることは二度とないだろうな」


まったくその通りだと思った。一国の次期国王陛下ともあろう人物が、このような場所で芝居のためとはいえドレスを着ているなど誰が予想できよう。


そのとき、魔法使いのお婆さんが現れて言った。


「ですが、殿下。私はその優雅さから、本物の気品と言うものを感じとりました」


その正体は、もちろんスパルタカスである。

魔法使いのお婆さんの格好をした彼が、真面目くさってそんなことを言うものだから、ムスカリ含めみんなで声を出して笑う。


「みなさん、着替えるのが早かったのですね」


そう言いながら、アドニスが衣装を着てみなの前に姿を表す。ムスカリはつまらなさそうな顔をした。


「君はいつもとなんら変わりなくて、面白くもなんともないな」


そう言うムスカリを無視して、アドニスはアルメリアのほうを見ると、微笑みかける。


「アルメリア、わたしのこの格好はどうでしょうか?」



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