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20 - 第20話 夫の新しい友人

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2025年05月14日

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◻︎新しい人間関係



キッチンを片付けた後、壁や床の汚れが気になると言い出したのは光太郎だった。せっかくだから壁も床も綺麗にしたいらしい。


「わかるよ、私もそうしたい。でもあんまりお金かけたくないんだよね」


「あのさ、下手くそだと思うけど僕がやってみてもいい?」


何を言い出すのかと思ったら。

料理教室で知り合った人の中に、内装業をやってる人がいるらしく、その人に教えてもらってやりたいらしい。


「でも、タダでってわけにはいかないでしょ?材料費は当然払うけど」


「そこはね、ギブアンドテイクで、僕がその人に釣りを教えるんだよ」


「釣り?」


「そう。ずっと興味はあったんだけど、自営業だからやれなかったんだって。今は息子に代替わりして自由な時間がとれるから、やってみたいんだってさ。釣竿も僕のやつ、使って貰えばいいし」


「ふーん、じゃあ、蕎麦打ちを教えてくれる人とは、どんなギブアンドテイクを?」


「あ、考えてなかった。そうだ、一度2人をうちに呼んでもいいかな?」


私は、さっぱりはしたけど古びて殺風景なキッチンを見た。


___ま、いいか、いまさら、見栄を張る必要もないし


「いいよ。おもてなしするのなら自分でやってね」


「うん、わかった。お茶の淹れ方とお菓子をどうするか教えてくれる?」


「いいよ。お菓子は適当に買ってきとくから」



◇◇◇◇◇



それから数日後。

光太郎の友達で、会社関係以外では初めてかもしれない人たちがやってきた。料理教室で知り合ったというのは、どんな人たちなんだろう。


「こんにちは」


玄関先で声がした。


「どうぞどうぞ」


いそいそと玄関へ出迎える光太郎。


「あがってもらって!」


「お邪魔します」


「はじめまして」


「あ、はじめましてって、あれ?」


光太郎に連れられてきたのは、光太郎と同年代の男性と女性だった。2人とも男性だとばかり思い込んでいたから、面食らってしまった。


「涼子ちゃん、紹介するね。こっちが蕎麦打ちを教えてくれる本村肇もとむらはじめさん、でこっちが内装を教えてくれる海山由理恵みやまゆりえさんだよ」


「はじめまして、主人がお世話になっております、涼子です」


「はじめまして。今日は突然お邪魔して申し訳ありません。これ、美味しいと話題のクッキー、よろしかったら……」


「ありがとうございます」


内装業をやっているという海山由理恵という女性が、手土産を渡してくれた。その手は職人さんらしく、がっちりとしていた。


「海山さんって、内装業をやってらっしゃるんですか?私、てっきり男性かと思い込んでたので、ちょっと驚きました」


「あら、性別は女ですけど性格は男なので、ガサツですよ」


カラカラと笑う豪快な人、という印象だ。

それから早速、壁を塗りたいと思っているキッチンを見てもらった。



「ここかぁ。広さとしてはそんなにないから、やろうと思えばDIYでも充分いけると思う。で、漆喰?値がはるけど」


「うん、壁塗りってやつをやってみたいんだよね。こう、なんていうの?板みたいなやつに取り分けてさ、こんなやつでこう、さーっと塗ってくやつ」


「左官屋さんがやるやつね。まぁ、自分ちのキッチンだから、ムラができても穴があいても、かまわないか。でも真っ白だとすぐに汚れが目立つかもだよ」


「でも、やってみたいんだ。失敗したらさ海山さんとこでやり直してよ」


「それじゃ教える意味なくない?」


なんだかんだと言いながら、楽しそうに話が弾んでいる。


「ね、涼子ちゃんはどうしたい?」


「私は明るくて清潔感があればいいかな?」


「だよね?じゃ、白だ!」


それからは、冷蔵庫や食器棚を動かして寸法を測ったりひどい汚れの落とし方を教えてもらったりして、準備をした。


「蕎麦打ちって、このテーブルでやるの?」


もう1人のお客さんの本村が、ダイニングテーブルをコンコンと叩いていた。


「うん、それくらいの広さでいいよね?」


「広さはいいけど、もう少ししっかりしたテーブルの方がいいと思う。これ、グッと力を入れて粉をこねたら、動きそうだよ」


「じゃあ、いっそのことテーブルも補強して固定しちゃう?流行りのアイランドキッチンみたいにさ」


「それもいいな。でもそうすると……書いてみないと、わからないや。何か書くやつは?」


光太郎は、ペンと紙を探しにリビングに行った。


「涼子ちゃん、ボールペンとメモ用紙ってどこ?」


「テレビのサイドボードの右側の扉を開けて」


「あったあった。あれ?ダメじゃん、これ。これも?」


筆記用具がパンパンに詰め込まれた空き缶から、何本かのボールペンを出して試し書きをしていた光太郎。次から次に、書けないボールペンを出していく。


「あっ、やっと書けるやつ!涼子ちゃん、これ、ほとんど書けないやつだよ。処分しないと」


「そっか、そこにも片づけたいものがあったか。トホホ」


考えてみたら、まだまだ家のあちこちに澱のように溜め込んでしまったものがある。そして一度それが気になると、いらないものを引っ張り出さないと気が済まなくなってきた。


「……でさ、ここを固定して…」


光太郎は、キッチンの改造に集中してしまったようだ。


___いまのうちに、この棚だけでもやってしまおう!


サイドボードの扉の中のものをリビングに出した。キッチンは光太郎に任せて、私はこっちを片付けることにした。


棚の中には、乾燥してしまって出てこない糊や、掠れてしまったサインペン、引っ込まないボールペン、なぜか三つに割れてしまってる消しゴム、何をこんなに書き留めるつもりだったのかわからないほどの量のメモ用紙などなど、不用品がどっさり出てきた。


そしてテレビの後ろには、綿埃がこんもり。


「え?あれ?」


その綿埃の中に、キラリと光るものがあった。









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