テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
39話 啓発本
昼
陽が高い
ふっくらは
丸い体を床に落とし
短い脚を投げ出して転がっていた
腹がふよんと上下し
目は半分閉じている
その横で
琶が椅子に座っている
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼を背に寄せ
分厚い本を
片手で支えて読んでいた
表紙
『10%の報酬で稼ぐ』
ふっくら
「……ねぇ琶……
それ……なに……?」
琶
「啓発本だ」
ふっくら
「ドラゴンが!?
啓発!?
読者、今の聞いた!?」
琶は
ページをめくる
紙は
かなり日焼けして
角が丸い
ふっくら
「……その本……
古くない……?」
琶
「初版だ」
ふっくら
「初版!?
自慢!?
それ自慢!?」
床には
他にも本が積まれている
『まいにちが楽しくなる報告書の書き方』
『1000回不思議のダンジョン並みに依頼が書けるマインド』
ふっくら
「……ちょっと待って……
これ……
タイトル……」
琶
「どうした」
ふっくら
「……上の二つ……
フォント……
似てない……?」
琶は
一瞬だけ
ページを止める
「……気のせいだ」
ふっくら
「絶対気のせいじゃない!!
同じ癖ある!!
行間の感じとか!!」
ふっくらは
丸い体で本に近づく
ころん
ころん
ふっくら
「……これ……
琶が書いた……?」
琶
「……よくできているだろう」
ふっくら
「認めた!!
さらっと認めた!!
著者名どこ!?
ペンネーム!?
ドラゴンネーム!?」
琶
「匿名だ」
ふっくら
「一番怪しいやつ!!
読者もメモして!!」
ふっくらは
最後の一冊を見る
『1000回不思議のダンジョン並みに依頼が書けるマインド』
装丁が
やけに新しい
文字も
やけに現代的
ふっくら
「……これだけ……
雰囲気ちがくない……?」
琶
「それは
他人が書いた」
ふっくら
「やっぱり!!
しかも浮いてる!!
ファンタジー世界で
この見た目は浮いてる!!」
琶
「内容は薄い」
ふっくら
「読者に聞こえるように言わないで!!」
琶は
本を閉じる
『10%の報酬で稼ぐ』
日焼けした表紙が
静かに鳴る
琶
「……基本は
最初の一冊で足りる」
ふっくら
「それ……
全部の始まり……?」
琶
「……そうだ」
ふっくら
「……世界……
この本のせいで
ちょっと歪んでない……?」
琶
「……読書は
世界を広げる」
ふっくら
「言い方ぁ!!
便利すぎる言葉!!」
琶は
読者のほうを見た気配を出し
静かに言う
「……実践している者が
一番強い」
ふっくら
「……やっぱり……
啓発本って……
こわい……」
床に積まれた本は
どれも
静かに
日焼けしたまま
次の依頼を
待っていた
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!