紫side
「あれ?あの2人は?」
青ちゃんがきょろきょろと辺りを見回す。
「ああ、あの2人は部屋にいると思うよ」
「またやってんの?」
やれやれ、といった様子で首を振る青ちゃん。
「愛やな〜」
「好きだよなー、あいつらも」
橙くんと桃くんが言う。
“あの2人”とは黄くんと赤くんのことだ。
2人は愛し合っている。
ただ、その愛の形が少し歪なだけ。
「あれだけ相手を愛せるってのも羨ましいもんだよ」
桃くんが笑う。
「あれ?桃ちゃんは青ちゃんが好きやろ?」
いたずらっぽく笑う橙くん。
「まあ好きだけどさ、なんつーか、弟って感じじゃん?」
「好きなのは認めるわけね?」
にやにやと桃くんの顔を覗き込む青ちゃん。
ふざけているけど、2人とも少し照れている。
「ま、あの2人はしばらく邪魔しないであげなね」
「うん、そうだね」
青ちゃんがまた、ふわりと笑った。
赤side
「ね、赤」
「すき、すきだよ」
黄くんの手が頬に触れる。
黄くんのモース硬度は7。
俺のモース硬度は5。
俺の欠片がぱらぱらと落ちていく。
「俺も、好き」
「ねぇ、僕のことどれくらいすき?」
「世界一。」
そう言うと、にこにこと笑う黄くん。
可愛いなぁ。
「ねぇ、僕はさ」
「赤の、どれくらい深いところにいるの?」
確信を持って、でも、少し不安げに言う黄くん。
「ずっとずっと、深く深く、愛してる。」
俺らは割れても死なない。
でも、割れた分だけ記憶を失う。
「ね、確かめていい?」
「…いーよ」
黄side
僕らの記憶は、失う身体の分だけ消えていく。
「ね、すきだよ」
「俺も」
ねぇ、君は、どれくらい失ったら
僕が消える?
途中までは、もう試した。
例えば、腕。
片腕を折ると、昔1度だけ考えた、剣の技名を忘れる。
両腕を折ると、先生が教えてくれた植物の名前を忘れる。
さらに片足を折ると、500年前に月へ行った仲間の名前を忘れる。
そして
両手両足を失うと、僕らの成り立ちを忘れる。
「赤、つらくない?」
「ん、大丈夫」
両手両足を失った赤の意識は朦朧としている。
でも、もう少し頑張れ。
少しずつ、身体を削っていく。
胴体も、もう半分ほどなくなってしまった。
「赤、僕がわかる?」
「黄、ちゃ、」
先程までの微笑みは消えている。
だけど、紅く輝く断面は、言い表しようもない美しさだ。
「赤、どれくらい覚えてる?」
「紫ーくんのことは?橙くんや、青ちゃん、桃くんのこと、覚えてる?」
「な、ぁく」
「………」
「紫ーくんだけ?僕と、紫ーくんのことしかわかんない?」
「ん…すき、黄ちゃ、ポロポロ」
赤の瞳から美しい液体がこぼれ落ちる。
「僕も、好きだよ」
こつん、と音がして、赤の欠片が落ちる。
そこで、赤の意識は途絶えた。
赤side
目が覚めると、いつもの部屋。
「あっ、起きました?」
心配そうにこちらを見つめる金色の瞳。
「あれ、足がまだ?」
「そうです、今つけるからね」
「ありがとう」
途中から記憶が曖昧だ。
結局どこまでいったのだろう。
「俺、ちゃんと覚えてた?」
自分でも少し不安だ。
「うん、僕のことと、紫ーくんのことだけは最後まで覚えてたよ」
紫ーくんも、か。
「そっか。」
「…ごめんね、赤」
泣きそうな顔をする黄くん。
「なにが?」
「僕、気づいたら赤のこと傷つけてる」
「大好きなのに、バラバラにしてやりたいって思っちゃう」
苦しそうな顔。
可愛いなぁ。
こつん。
俺の欠片が落ちる。
「赤ッ、割れちゃ、」
「俺は、黄ちゃんのために生まれて、黄ちゃんを愛すためにここにいる。」
黄くんが俺を抱きしめる。
優しくて、心地いい。
けど、手袋越しの君は少し物足りなかった。
コメント💬リスエスト✉️いいね♥️
お待ちしています!!
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