テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
姉さん……
頬に流れたひとすじの涙。
私、初めて見た、涼香姉さんが泣くところ。
やっぱり、美人さんの涙は……ものすごく綺麗なんだね。
「桜と水族館、お母さんの好きな懐石料理も食べられるような旅館に泊まろう。琴音、なるべく早く帰ってきてくれよ」
「うん、日本に戻る楽しみができたよ。本当に……すごく嬉しい」
私までグッと熱いものが込み上げてくる。
こんな時が来るなんて、ついさっきまで全く思っていなかった。
「あのね、だから、私はまだ行くって言ってないわよ」
「早速、場所を探さないとな。昔から行ってみたいところがたくさんあるんだ」
「数年先の話なのに、全くお父さんたら気が早いんだから」
お母さんがニコッと微笑む。
「早い方がいいだろ? どうせなら広くて豪華な旅館がいいな。部屋に露天風呂があればなおさら良い」
「ねえ、聞いてる? 私のこと見えてないの?」
「あら、ゆっくり部屋で露天風呂なんて最高じゃないの。お湯に浸かりながら見る景色はきっと素晴らしいんでしょうね。この年になって、こんなにもワクワクできることがあるなんて嬉しいわ」
「お母さん、人生はまだまだこれからだよ。この先も、いっぱいいっぱい楽しみがあるからね」
「そうよね、本当に。これからは楽しみを見つけて生き生きした人生を家族みんなで送りたいわ」
「うん、みんなが幸せでいなきゃね。誰か1人でも欠けちゃいけない、家族全員が幸せじゃなきゃ。あっ、水族館と桜、懐石料理に露天風呂、私も色々調べてみるね」
なんやかんや言って、私が1番ワクワクしてる。
「ちょっと、さっきから勝手に話を進めないでって言ってるでしょ? 私のこと無視しないでよね」
一瞬、顔を見合わせてみんなで笑う。
「悪い悪い。涼香もちゃんと行くんだぞ。家族旅行なんだから」
涼香姉さんだけは、まだまだ全然ぎこちないけれど……
それでも、明らかにいつもとは違う。
ほんの少しは……笑えてる……よね。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!