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Side 大我


今朝は珍しく調子が良く、通学の電車にも立ったまま乗れた。もっとも、鞄につけているヘルプマークは隠しているんだけど。

両親はつけていろとうるさい。でも何だか見せるのも嫌で中に入れている。

しかし登校中の道を歩いていると、急に動悸に襲われた。

立ち止まり、壁に寄りかかってさする。

何人もの生徒が俺を抜かしていく。みんな、気にも留めない。だけど慣れてるからいいんだ。

何とか学校にたどり着いたはいいものの、教室に入る気にはならない。

始業式に行ってから最近まで入院していて、顔なじみの人なんかいないから。

この間やっと退院になり、学校に行けるようになったがクラスには入れず結局保健室行き。

でも保健室の先生は、俺の生まれつきの病気である「エプスタイン病」もよくわかってくれて、優しく部屋に入れてくれた。

今日は数日ぶりに登校できたけど、この調子だとずっとベッドのようだ。

しばらく布団をかぶってボーッとしていると、隣に誰かやってくる気配に気づいた。

1人がいいのにな、と思ったが寝るだけなら静かだろう。

と、少し存在を潜めていた胸の苦しさがまたやってきた。息が詰まり、思わず声が漏れる。

するとしゃっとカーテンが開かれて、茶髪の男子が顔をのぞかせた。その人は先生を呼んでくれた。

背中をさすられているとだんだん楽になってくる。

まだ立ったままのその生徒は、俺を見つめてこう言った。

「……京本」

驚いた。なぜここに俺の名前を知っている人がいるんだろうか。

友達なんていう人はいない。クラスメイトだってほとんど俺のことを知らないだろう。

思考を巡らせていると、

「俺、3年6組の田中樹。京本だよな。隣の席」

彼が言う。それで、やっと記憶の中から少しだけ引っ張り出すことができた。

始業式の日に、隣席に座っていた。かなり派手で明るそうで、自分とは正反対の印象だった。

しかし今同じ場所にいる。なぜだろう。

「ここにいたんだ。…教室、来ねえの」

小さくうなずく。

よく見ると、その着崩した制服や耳のピアスとは違ってクールな顔だった。かっこいい、の部類に入るだろう。

彼は「ふーん」と興味なさそうに鼻を鳴らし、カーテンを閉めて隣のベッドに戻っていく。

やっぱりそんなに気に掛けてはもらえないようだ。

と思った矢先、

「また苦しくなったら言えよ」

声がした。

驚きと戸惑いの混じった感情で、「ありがとう」と返した。

人は見かけによらないというのが彼に対してのイメージだった。

もしかしたら、頼れるかな、なんて。


続く

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