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……目を覚ますと、珍しくまだ彼が傍らに眠っていた。
閉じられた目蓋に前髪がかかって、寝顔さえも美麗に感じる。
眠っていても綺麗だなんてと感じていると、彼が「ん…」と目を開けて、
「……もう起きていたんですか?」
と、長めな睫毛をしばたいて、寝乱れた髪を片手で掻き上げた。
自分の髪を片手に掴んだままで、もう一方の手を差し伸ばし、私の首筋を抱くと、
「……女性と過ごして、こんなに安らかな朝を迎えたのは初めてです」
彼が口にして、そういえばいつもは先に起き出して、服まできちんと着込んでいたことを思い出した──。
「……一夜を過ごした翌朝は、いつもやり切れない思いだけが残って、早くにも目が覚めて……」
彼の胸に身体がそっと引き寄せられる。
「私は、家では与えられることのなかった愛情が、ただ欲しかっただけで……。なので抱いて落としてしまえば、もうそこには欲していた愛情も、ありはしない気がして……」
そう言うと、彼はふっと小さくため息をこぼした。
「けれど…あなたと共に過ごせたことに満ち足りて、目も覚めずに眠ることができて……。こんな気持ちになれたことは、今までなかったと……」
抱えられた腕の中で、小さく頷いて応えると、かつては抱かれても冷えた感触しか湧かなかったのが、今はそのあたたかな体温が、重なる肌を通して熱く伝わるのを感じるようだった……。