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「やめてくれ…もう俺から引き離すな…」
もう、中原の体は冷たい、中原は
俺みたいに、すぐ傷が回復する
わけじゃない
「…わかった」
鰄郎は中原の生気を失った目を、じっと
見つめて言った
「治君、かっこ悪いとこ見せちゃったね、
ごめん、帰ろう」
鰄郎は、何もかもを失った目…いや、
まだ中途半端に、守るものあるような
目をしていた
(目が…死んでない)
治は心の中で少し驚いた、長年一緒に
いる中で、こんなにあっさりだなんて
「待てよ」
そこで、極限状態の2人に、声を掛ける者
がいた
「逃がすと思うか?」
「俺の総長に何してくてんだ…」
その瞬間
お互いに、自分の限界を、雷斗に
ぶつけたのだ
「お前ら!!」
咄嗟に雷斗が防御する、だが
グシャッ…
「ぐぁっ!?」
雷斗の手に平に、大きな穴が空いた
ザァァ…
「ぅ…クソ」
「うぐぁぁあぁぁあぁぁ!!!!!」
鰄郎が、全てに響き渡る声を放つ
「!!!!」
治が、ピタッと動きを止める
(今の咆哮は…?こいつか…?
そんなに、この男が憎いのか?)
鰄郎は、ひたすら技を繰り返した、
十分すぎるほどに、雷斗をいたぶった
「か….あ…」
雷斗は、死戦期呼吸をしていた
そう長くはない
見る限り、わかりやすい傷はない。
相当体の内部を荒らされたのだろう
「はぁ….はぁ…」
ザーーーー…
いつの間にか、そこら中大雨になっていた
鰄郎の髪から雨が、一滴、また一滴と
零れて行く
「おい」
治が、口を開いた
「….」
鰄郎は何も答えない
「お前、それ全部自作だろ」
「!」
「…今、なんて?」
「さっきから見せびらかしてるそれ、自分で
考えた技か聞いてるんだ」
明らかに、いつもの治ではないが
鰄郎は少し嬉しかった
こんな状況でこんな感情になるのは
おかしいと自覚してるけど、何故か
嬉しくなってしまう
「まぁ…そうだよ」
「…」
「それにしても、鰄郎だっけ?お前さ
少し思考力足りねぇよ」
治が言い放ったその瞬間
「正解ー」
雷斗が起き上がった
「全く、汚れさせやがって、ゼッテェ
仇取るまで返さねぇ」
「は?なんで」
「根本的に考えて、第一総長があんなんで
死ぬと思うのか?あれで死んだんなら、
第四の方がつえーって理屈になる」
「だいぶ痛かった、だけど俺は仇取るまで
死ねねぇんだよ」
「…鰄郎、お前先にどっか行ってろ」
治が呟く
「は!?そんなの無理に決まってるだろ!
もうこれ以上死なせる訳には」
「行けつってんだよ」
治から滲み出る何かは、興奮だった
(こいつと本気で殺し合いたい、こいつ
になら…)
「ダメだ」
バガッ!!
鰄郎は、思いっきり治の後頭部を殴った
しかし、ただ殴った訳では無い、人間の
弱点を正確に把握してでの技である
「ぅ…」
治は、そのまま地面へと倒れた
「悪いけれど、これで失礼する」
鰄郎は、雷斗に背を向けた
「待て」
「っ!?」
バッ!
鰄郎は、後ろを振り向いた
逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない
鰄郎は、今までで最大の、命の危機を感じた
約10年前…
鰄郎は、その日道場で訓練をしていた
「はっ!」
ズバッ!
鰄郎は、その日は正拳突きをしていた
その日は、師範のいない、孤独の日だった
「ふぅ…」
「もう終わるのか?」
とある男の子が、鰄郎に話しかけた
「…やっぱもう少し」
「いいよ、俺とやろ」
「容赦しないからな」
「もちろん、アキッちには負けねーよ」
「おい、その呼び名やめろよ..」
「はー?鰄郎なんかだせぇ名前より、
本名の秋夜 不時無のがかっけーだろ!」
「不時無なんて、この世に俺しかいない、
こんな名前はもう嫌だわ…」
「てか、不時無がカッケーって思うなら、
なんでアキッちって呼ぶんだ?」
「…そりゃ、俺が秋という季節が
大好きだからだよ」
「…変なやつ」
「さ、早くやろ、」
「…しゃーねーな」
この時は、まさかこいつに恨まれて、あんな
悪行をしてしまうだなんて、夢にも思わな
かった。