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MINAMO

12 - ◆ 11話 無線給電のある日常

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2025年12月31日

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◆ 11話 無線給電のある日常

朝の大学前。

薄灰パーカーに緑Tシャツの 三森りく(24) が、

水色寄りフレームのMINAMO“ミナ坊”を指で軽く整えながら歩いていた。


そのたびに、視界の端に淡く文字が現れる。


『りく、MINAMO充電状態 92%。

AirWayは 94%。

すべて“いたわり充電”で維持しています。』


りくは小さく頷く。


「寝てる間に勝手に満たされてるの、ほんと助かるな。」


家に置いてある“個人バッテリー”の10m圏内。

そこで彼の

・MINAMO

・AirWay

・スマートリング

・タブレット

全部が音も光もなく満たされる。


ケーブルを差した覚えなど、もう何年もない。


********************


キャンパスに入った瞬間、

ミナ坊がそっと淡い文字を浮かべる。


『りく、大学のバッテリーサービス圏に入りました。

電力提供を受けますか?』


「お願い。」


視線で“YES”の丸いアイコンに触れると、

MINAMO・AirWay・リングが静かに給電を開始する。

もちろん、見た目には何も変化はない。


後ろから聞き慣れた声がした。


灰スカートに黄緑トップスの 杉野いまり(20) が

淡緑のMINAMOを髪に馴染ませながら近づいてくる。


「りくくん、またバッテリーサービス使ってたでしょ?」


「まあね。ここ入るだけで充電されるの便利すぎる。」


いまりは笑いながら指を鳴らす。


「スマホの頃は“充電席どこ?”って探してたのにね。

今は席に座る前に充電終わってる。」


通りすがりの学生たちも

「リングもいつのまにか満たされてる」

「充電するって言葉もう死語だよな」

と自然に会話していた。


********************


食堂で並んでいると、

ふとりくのリングにトントンと軽い振動。


ミナ坊の通知だ。


『りく、AirWayが93%になりました。

大学ゾーンからの給電が安定しています。』


いまりが覗き込み、ニヤッと笑う。


「はいはい、ミナ坊優秀だね。

わたしの“ミナリン”はさっきリングの充電忘れてたよ。」


りくは肩をすくめた。


「お互い、AIの性格が出るな。」


ふたりのリングはもちろんナトリウムイオン電池で、

Qi圏に入るだけで自然に満たされる。


それでも、リングがふたりの“本人確認”を黙々と担当しているため、

ほぼ全員が毎日つけている。


********************


午後の講義後、

大学のメインホールに入った瞬間──


『りく、広域給電ゾーンに入りました。

個人登録デバイス4台すべて給電します。』


淡い文字が視界に静かに重なる。


ホール全体が“見えない充電フィールド”になっており、

数百人が一斉にデバイスを満たしていた。


いまりが両手を腰に当てて言う。


「こういう場所、ほんと未来っぽいよね。

ケーブルもいらないし、座るだけで満たされるし。」


りくは笑う。


「もう“充電器忘れた!”って慌てる人いないよな。」


「スマホの頃は大変だったんだよね〜。

充電しながら配信して、バッテリー膨らませる人とかさ。」


ふたりは苦笑しながら並木道を歩き出す。


空気の中を、

MINAMO・AirWay・リングが

何事もなく満たされていく。


“充電”という行為はすでに過去形。

電池切れは、伝説上の現象になりつつあった。


ミナ坊が控えめに光る。


『りく、今日の充電状態はすべて最適です。

明日も同じようにサポートします。』


りくは頬を掻きながらつぶやく。


「……ほんと、何もしないで生きていけるな。」


淡緑のフレームを押さえながら、

いまりが柔らかく笑った。


「それが、MINAMO時代の当たり前だよ。」


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