こへ長

宜しければお進み下さい

どうかしあわせになってくれ。

お前には、こんな薄暗い道を進むことなど選ばなくても、沢山の選択肢があるだろう。畑を耕して、綺麗な奥さんと愛らしい子供達と、ささやかにでも幸せに生きて欲しい。だからそんな目で見ないで欲しい。そんな声で私を呼ぶのをやめて欲しい。大きな四白眼が、まるで愛おしい恋人を見るかのように、ゆるりと弧を描くのが。私の耳に入るお前の声が全て、ぼうろの様に素朴で甘く感じるのが。辛くて辛くて堪らない。どうかやめてくれ。私にそれ以上の幸せを与えないでくれ。勘違いしてしまうから。

私がお前の特別なんだと、分かっている。でも、それは私の思う「特別」とは違うんだ。ただ、お前と過ごしていたあの日々が、私はたいそう幸せだった。これからのお前の幸せを切に願っている。

お前が笑って暮らせていることが私の幸せなのだから。