テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
昼休みの終わり、廊下。
先生の介入で、露骨なことは減った。
でも、完全に消えたわけじゃない。
すれ違いざま、低い声。
「家でも居場所ねーんだろ」
一瞬。
足が、止まる。
「どうせ逃げたんだろ?
親からも」
その言葉が、
胸の奥を、正確に突いた。
教室に戻っても、
文字が、頭に入らない。
机の木目が、にじむ。
――逃げた。
――違う。
――でも、そう言われても、否定できない。
記憶が、勝手に開く。
怒鳴り声。
閉まるドア。
理由のない叱責。
「お前のせいだ」
その一言が、何度も落ちてくる。
痛みより、
「存在が邪魔だ」と言われる感覚の方が、きつかった。
ある日、限界が来た。
夜。
鞄に、最低限のものだけ詰めて。
振り返らずに、家を出た。
走った。
どこに行くかも決めずに。
――あの日から、
過去は、できるだけ考えないようにしてきた。
放課後。
今日は、準備室。
おんりーは、何も聞かずにいたけど、
おらふくんの様子が違うことだけは、分かっていた。
「……さっきの言葉」
おらふくんが、先に切り出す。
「……あれで、思い出した」
おんりーは、黙って、待つ。
逃げない。
急がせない。
「……家」
一拍。
「……俺、逃げたんだ」
指が、震える。
「……親がさ」
言葉を選ぶ。
「……叩くとかより、
“いらない”って言われるのが、続いて」
おんりーの眉が、わずかに動く。
でも、遮らない。
「……ある日、無理になって」
「……出てった」
静かな声。
「……それで、今」
少し、息を吸う。
「……今の方が、ちゃんと生きてる気がする」
おんりーが、ゆっくり顔を上げる。
「……前より?」
「……うん」
おらふくんは、はっきり言った。
「……前は、
“生きてるふり”だった」
「……今は」
一拍。
「……ちゃんと、考えてる」
「……明日とか」
「……一緒にいる時間とか」
おんりーは、少し間を置いてから言った。
「……話してくれて、ありがとう」
「……重かった?」
「……重いよ」
正直な答え。
でも、続く。
「……でも」
「……過去の話を、今の言葉で言えたってことは」
視線が、重なる。
「……前向いてるってことだろ」
おらふくんは、少し驚いてから、笑った。
「……そうかも」
「……悲しさ、なくなるまでさ」
おんりーが言う。
「……過去も、連れてっていいんだと思う」
「……置いてく必要、ない」
おらふくんは、ゆっくりうなずいた。
「……うん」
「……でも」
小さく、でも確かに。
「……今を、選ぶ」
外は、夕焼け。
影が、長く伸びる。
過去は、消えない。
でも。
今を話せる相手がいる。
それだけで、
世界は、もう少し、やさしくなっていた
かきだめなくなった…
コメント
1件
はぁ…ッ(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)