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#普通
野々さくら
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ありあ
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勇は信愛を見つめ、静かに問いかけた。
「なら、おじろくおばさには恨みは一切無いと?」
信愛はゆっくりと頷く。
「少なくとも、奴隷として働かされている間は
恨みはなかった・・・私はそう考えてます」
しかし、そこで言葉を切った。
「けど──」
勇が眉を上げる。
「けど?」
信愛は静かに息を吸い、皆を見回した。
「このわらべ歌が怒りを与えてしまった」
その言葉に、村人の一人が首をかしげる。
「どうして、わらべ歌が?」
信愛は確信を帯びた口調で続けた。
「私の推測通り、おじろくおばさに
恨みがなかったとしたら、この歌詞に怒りを覚えた
そう考えると、色々と辻褄が合います」
秋穂が小さく呟く。
「辻褄?」
「私の夢の中に出てきた子供が
このわらべ歌を歌っていた事
そして、茜に取り憑いた霊が
このわらべ歌を口にしていた事」
美羽は腕を組み、ゆっくりと頷いた。
「そっか・・わらべ歌の歌詞には、村民を憎むとか
腑が煮え繰り返るとか、いかにもおじろくおばさが
恨んでいるような歌詞があるものね」
信愛は静かに目を伏せる。
「そうです・・・」
そして、まるで当時のおじろくおばさの心を代弁するように、ぽつりと続けた。
「おじろくおばさは──
『僕たちは、ただ働いていただけなのに
何でこんな風に言われなきゃいけないの?』
こう思ったんだと私は推測してます」
少しの沈黙が流れたあと、信愛は勇へ視線を向けた。
「そもそも、何でこんな歌詞にしたんですか?」
勇は静かに語り始める。
「このわらべ歌は、当時の村長が書いた歌なんだが」
遠い昔を思い返すように目を細めた。
「大昔、祠がある森には『神隠し』の伝説があってな」
「神隠し?」
「山姥という妖怪による神隠しだ」
「山姥?」
信愛は聞き馴染みのない妖怪の名前に首を傾げる。
「ヤマンバの事だよ・・・」
「なるほど・・ヤマンバか・・・」
納得する信愛に勇は静かに頷いた。
「美しい女の姿で人を誘惑し、旅人や子供を
山奥へ連れ去る妖怪と伝えられていてな
当時の村長は森に人を近づけたくなかったそうだ」
信愛は息を呑む。
「ま、まさか・・・だからこの歌詞に?」
「そう。おじろくおばさの弔いと
森へ足を踏み入れる事への警告
二つの意味を込めた歌詞にしたかったそうだ」
「なるほど・・・」
「俺たち村民は、このわらべ歌は
おじろくおばさの気持ちを代弁した歌だと
信じて疑わなかった」
信愛は何も言えず、ただ黙って話を聞いていた。
やがて勇は、穏やかな眼差しを信愛へ向ける。
「だが、君の話を聞いて
それは間違いだったと気付かされた」
勇は目を潤ませ、信愛の目をまっすぐに見る。
「教えてくれ!どうやったら彼らを弔う事ができる?
俺たちに出来る事なら何だってやるつもりだ!」
勇は深々と頭を下げる。
コメント
1件
×××さん、こんばんは。あおいです。 今回のエピソード、わらべ歌に隠された真実が明かされる重要な回でしたね。おじろくおばさには恨みがなく、ただ「何でこんな風に言われなきゃいけないの?」と思っていたという信愛の推測に胸が痛みました。村長が警告として作った歌が、後世になって勝手に恨みの歌として誤解されてしまう…皮肉でありながら、とてもリアルな人間の物語の描き方だなと感じました。 勇が「間違いだった」と認め、弔い方を真剣に問う場面は、長い連載を経てようやく村と向き合おうとする姿勢が現れていて、じんわりきました。続きがすごく気になります。