テラーノベル
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信愛は一歩前へ出ると、村人たちを見渡した。
「皆さんにやっていただきたい事は、三つあります」
勇が首をかしげる。
「三つ?」
信愛は静かに頷いた。
「まず、祠の建て替えです」
その言葉に、村人たちの間にざわめきが広がる。
「建て替え?」
「今の祠は崩壊していて、長年放置された事による
腐食もかなり進んでいます、ですから
一度取り壊して、新しい祠を建てるんです」
さくらが不安そうな表情を浮かべる。
「でもさ、信愛?木材はどうするの?」
焔垂も続けて尋ねた。
「御神木とかじゃなくて大丈夫なのか?」
信愛はゆっくりと首を横に振る。
「確かに御神木が望ましいとは思う
でも、御神木を使うには神社の許可が必要だし
伐採の儀式もしなきゃいけないの」
少し間を置いて続けた。
「時間的に、今からだと間に合わない
それに、今の時期では手に入れる事自体
難しかったりするんだよね」
茜は納得したように頷く。
「なるほど・・・」
「だから、普通のお店で売ってる木の板で大丈夫」
勇が驚いたように目を見開く。
「普通の木の板?」
信愛は穏やかに微笑んだ。
「むしろ、そっちの方が
おじろくおばさには最適かもしれません」
村人が不思議そうに首をかしげる。
「何故だい?」
信愛は静かに答えた。
「おじろくおばさは神じゃ無いからです」
その一言に、その場は静まり返る。
「必要なのは、おじろくおばさの新しい拠り所なんです
何も、おじろくおばさは自分たちを『崇め奉れ』
って 言ってる訳じゃないと思うんです」
真っ直ぐ前を見据えながら続ける。
「自分を知ってほしい・・そう思ってる筈なんです
御神木だと、その想いに反してしまいます」
朝陽は深く頷いた。
「なるほど・・だから普通の板なんですね」
信愛も静かに頷き返した。
「そういう事」
信愛は村人たちを見渡し、静かに続けた。
「次に、新しい祠を建てる場所の検討です」
勇が腕を組みながら口を開く。
「日光が差し込んで、清らかな場所に
建てるのがセオリーだったな?」
信愛は頷く。
「その通りです」
しかし、その表情はどこか申し訳なさそうだった。
「ですが、村の人間じゃない
私たちにはその判断が出来ません」
一度言葉を切り、村人たち一人ひとりを見つめる。
「ですから皆さんで考えていただきたいんです
おじろくおばさが、安らかに眠れる場所を」
勇は静かに息を吐いた。
「分かった・・・」
その一言には、決意が込められていた。
信愛は小さく微笑むと、さらに話を続ける。
「そして最後です」
その場の空気が少しだけ引き締まる。
「それは、わらべ歌、三番の作詞です」
勇が不思議そうに眉をひそめた。
「作詞?」
信愛は静かに頷く。
「先程も言ったように、今の
わらべ歌の歌詞はおじろくおばさの
意に反した内容になってしまっています」
美羽もゆっくりと頷く。
「そうね・・・」
「ですから、新しい歌詞は
おじろくおばさにもっと理解を寄せ添って
暖かく包み込むような歌詞にしてもらいたいんです」
そして信愛は、少し柔らかな笑みを浮かべた。
「これに関しては、私たちも協力させてもらいます」
すると美羽が困ったように笑う。
「でも、歌なんて作った事ないわよ?」
「歌を作る必要はありません」
信愛は首を横に振った。
「一番重要なのは、おじろくおばさを
深く理解してそれを詩にする事です」
少し間を置き、真っ直ぐに続ける。
「今の歌詞は、おじろくおばさを
山姥の為に利用した、そう思われても
不思議ではない歌詞ですから」
美羽は納得したように頷いた。
「そういう事ね・・・」
「ですから、新しい歌詞を考えてあげたいんです」
勇は静かに目を閉じ、ゆっくりと頷く。
「分かった・・・」
信愛は最後に、改めて村人たちへ向き直った。
「ですから皆さんには、新しい祠を建てること
その祠を建てる場所は、明るくて
お参りしやすい場所を選ぶこと
そして最後に、わらべ歌三番の歌詞を考えること」
ゆっくりと頭を下げる。
「以上の三つを、お願いしたいです」
勇が真っ先に口を開いた。
「分かった!約束しよう」
別の村人も力強く続く。
「ああ!それが弔いになるんなら」
「そうね!」
村人たちの賛同の声が次々と上がる。
その光景を見届けた信愛は、胸をなで下ろすように息をつき、深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします」
#普通
野々さくら
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ありあ
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コメント
1件
「おじろくおばさは神じゃないから」っていう信愛の言葉、すごく沁みました。崇め奉るんじゃなくて、知ってほしい存在として向き合うっていう視点の転換が、この物語のテーマをぐっと深めてる。祠を建て替える・場所を選ぶ・歌詞を書き直す——どれも「理解」をもとにした実践で、設定の設計がしっかりしてるなって思いました。新しい歌詞がどんなふうに紡がれるのか、すごく楽しみです。