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――紅は一人で立つ――夜。
山奥の廃寺。
雪紅:
「……気配が濃い」
月明かりの下、雪紅は一人、刀を抜いた。
この任務は単独行動。
情報では「強力な鬼が一体」。
だが――
空気が、重い。
鬼:
「来たか……柱」
雪紅:
「……喋る鬼か」
闇の奥から姿を現した鬼は、異様だった。
体表に走る無数の傷。
そして、歪んだ笑み。
鬼:
「女の柱とはな。
ずいぶん、紅い匂いがする」
雪紅:
「……黙れ」
踏み込む。
雪紅:
「紅の呼吸 壱ノ型
紅閃・初太刀」
紅い閃光が走る。
だが――
ガキン!!
弾かれた。
雪紅:
「……っ」
鬼:
「遅い」
一瞬。
腹部に衝撃。
雪紅:
「――!」
木を砕いて吹き飛ばされる。
雪紅:
(強い……)
息を整える暇もない。
鬼の再接近。
雪紅:
「紅の呼吸 弐ノ型
緋炎・旋連!」
連続斬撃。
確かに、斬った。
――のに。
鬼:
「浅い」
雪紅:
「……!」
血が、滴る。
腕が、痺れる。
鬼:
「どうした柱。
一人か?」
雪紅:
「……十分だ」
鬼:
「強がるな」
蹴り飛ばされ、地に伏す。
雪紅:
(ここで……終わるわけには……)
脳裏に、忌々しい顔が浮かぶ。
――にこにこ笑う、氷の柱。
雪紅:
(……来るなよ)
歯を食いしばり、立ち上がる。
雪紅:
「紅の呼吸 肆ノ型
紅蓮・踏砕!」
渾身の一撃。
――だが。
鬼:
「甘い!!」
刃が止められた瞬間、
胸に、鋭い痛み。
雪紅:
「……っは……」
血が、喉に上がる。
膝が、崩れた。
鬼:
「柱でも、この程度か」
雪紅:
「……まだ……」
刀を支えに、立とうとする。
その時。
――空気が、凍った。
鬼:
「……?」
雪紅:
(……え……)
聞き覚えのある、軽い声。
童磨:
「ひどいなぁ。
俺の柱、ずいぶん乱暴に扱ってくれるじゃない」
雪紅:
「……童……磨……」
鬼:
「誰だ」
童磨:
「氷柱」
一歩、前へ。
童磨:
「それ以上、その子に触れたらさ」
笑顔のまま。
童磨:
「溶ける前に、凍らせるよ?」
鬼が、初めて後退った。
雪紅:
「……遅い……」
童磨:
「ごめんごめん」
膝をつき、そっと雪紅を支える。
童磨:
「一人でよく頑張ったね」
雪紅:
「……来るなって……」
童磨:
「無理」
氷の気配が、完全に場を支配する。
童磨:
「君は休んでて」
鬼:
「……舐めるな!!」
童磨:
「――氷の呼吸」
その声から、笑みが消えた。
童磨:
「陸ノ型
凍獄・静寂」
一瞬。
音もなく、鬼の首が落ちる。
静寂。
童磨:
「……ほら、終わり」
雪紅:
「……大袈裟……」
童磨:
「全然」
抱き上げられる。
雪紅:
「……下ろ……せ……」
童磨:
「無理」
雪紅:
「……嫌い……」
童磨:
「知ってる」
でも、腕は緩まなかった。
紅は、一人で戦った。
氷は、最後に現れた。
――それでも。
雪紅:
「……次は……」
童磨:
「うん?」
雪紅:
「……ちゃんと……来い……」
童磨:
「最初から?」
雪紅:
「……そう……」
童磨:
「……はは」
その笑みは、いつもよりずっと静かだった。