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【第4話:成田決戦と深夜の滑走路】
1. 時速200キロの昭和×Z世代テクノロジー
深夜3時50分。東関東自動車道を、異様な重低音を響かせて爆走する1台の軽トラがあった。
「うおおおおお! 揺れる揺れる! 車体が分解するーっ!!」
ハンドルを必死で握りしめる佐藤(42歳)の叫びが車内に轟く。
助手席の春日(19歳)はシートベルトを両手で固く握りしめ、顔面を蒼白にさせていた。
「さ、佐藤さん! メーターが210キロ指してるっす! 軽トラの出す速度じゃないっす!!」
「あたしの特製ニトロエンジンをナメないでよね!」
荷台から窓越しに身を乗り出しているニトロ(爆弾魔・女子高生)が、ガムをパチン!と鳴らして笑う。
彼女が軽トラのエンジンルームに強引に接続した怪しい高圧ボンベから、青い炎のような排気が吹き出していた。
「佐藤さん、成田のプライベートポッドまであと5分! ターゲットの搭乗手続きは終了してるって!」
春日が必死でスマホの運行情報を確認しながら叫ぶ。
「よし! このまま突っ込んで城ヶ崎の鼻っ柱をぶちのめす!」
「待って佐藤さん、警備のセキュリティゲートはどうするの!?」
「止まったら負けだ! 全員、口を噛まないように噛み締めろ!!」
佐藤はアクセルペダルを床が抜けるほど踏み込んだ。
2. 空港敷地内のカーチェイス
ドガシャーン!!!
成田空港裏手のプライベート専用ゲートの遮断機を、軽トラのバンパーが無慈悲に粉砕した。
「不審車両侵入! ストップ! ストップ!」
闇の中から光る誘導灯と、警備会社のブラックSUVが2台、滑走路脇の誘導路から滑り出してくる。
「ニトロ! 追手だ!」
「はいはーい! 粘着系ペイント爆弾、投げまーす!」
ニトロがリュックからゴルフボールサイズの球体をいくつか取り出し、後方へ投擲した。
パン! パパン!!
追跡してくるSUVのフロントガラスに、極太のピンク色のペンキと強烈な粘着ノリが大量にへばりつく。視界を奪われた警備車は激しくスリップし、誘導路の芝生へと突っ込んでいった。
「ナイスだニトロ! 春日、城ヶ崎のジェット機はどこだ!?」
「あそこっす! タキシング(誘導路の走行)始めてる!! 離陸しちゃいますよ!!」
誘導路の先、光り輝く小型プライベートジェット機がエンジン音を轟かせ、まさに滑走路へ進入しようとしていた。
機内の窓越しに、高級シャンパンのグラスを傾けながら高く笑う城ヶ崎の姿がうっすらと見えた。
「逃がすかよ……! 俺の10万(※報酬300万の山分け分)がかかってんだ!!」
佐藤はギアを叩き込み、軽トラを滑走路へと侵入させた。
3. 滑走路のデッドヒート
ジェット機のジェットエンジンが凄まじい風圧と爆音を撒き散らす。
軽トラのフロントガラスにメキメキとヒビが入る。
「佐藤さん! 風圧で飛ばされる!!」
「ニトロ! ガムテープ持ってこい!」
青い子
69
東雲 琴葉
2
くろぬか
3,233
「はいよっ!」
佐藤は自作の【超高電圧スタンガン・V2】を握り締めると、春日にハンドルを押し付けた。
「春日、そのままジェット機の前輪の横に車を並べろ!」
「えぇっ!? 俺が運転するんすか!?」
「10万欲しいんだろ! やれ!!」
春日は覚悟を決めてハンドルを握り、滑走路を並走させた。
時速200キロを超える極限の並走。ジェット機と軽トラの距離、わずか1メートル。
佐藤は助手席の窓から身を乗り出した。
「城ヶ崎ぃぃぃぃ!! 定時過ぎてんだよバカヤロー!!!」
佐藤は軽トラの窓から飛び移るようにして、ジェット機の搭乗用ハッチ(半開きになっていた緊急脱出用レバー)にしがみついた。
「マジで!? 飛び移ったんだけどあのおじさん!!」ニトロが目を見開く。
佐藤は強風に耐えながらハッチのロックレバーを叩き落とし、扉を強引にこじ開けて機内へと雪崩れ込んだ。
4. 決着と、新しい朝
「な、なんだ死神か!?」
機内で優雅に寛いでいた城ヶ崎が、濡れ鼠で泥まみれの佐藤を見て悲鳴を上げた。
「なぜ生きている!? 40階は爆破したはずだぞ!!」
「……お前のせいで、今夜はファミレスのドリンクバーしか飲んでねえんだよ」
城ヶ崎は懐から拳銃を抜こうとしたが、佐藤の動きの方が一瞬早かった。
佐藤は間合いを詰め、泥とテープで補強された自作スタンガンを、城ヶ崎の首筋へ最大電圧で叩き込んだ。
バチバチバチバチチチチチッ!!!!
「あぐばばばばばばっ!?」
青白いスパークが機内に飛び散り、城ヶ崎は白目を剥いて豪快に失神、絨毯の上へ崩れ落ちた。
佐藤は激しく息を吐きながら、ポケットから通信用のインカムを取り出した。
「……こちら佐藤。ターゲットを確保……いや、『清掃』完了だ。機長に引き返せと伝えろ」
『了解っす! 佐藤さんマジ最高! TikTokに撮っておけばよかったっす!』
春日の気楽な声がインカムから流れてきた。
5. 清掃員たちの「定時退社」
午前5時半。
成田空港の裏手、朝焼けが空を紫から橙色へと染め上げていく。
ボロボロになった軽トラのボンネットに腰掛け、佐藤、春日、ニトロの3人は缶コーヒー(ニトロはイチゴミルク)を飲んでいた。
佐藤のスマホに、口座への入金通知が届く。
【お振込:3,000,000円】
「……よし。着金確認」
佐藤が呟くと、春日とニトロが「うぇーい!」とハイタッチを交わした。
「100万! 100万入ったっす! これで限定スニーカーと最新のiPhone買えるっす!」
「あたしも新しい爆薬の材料買い占める〜!」
「お前らな……少しは堅実に使えよ……」
佐藤は苦笑しながら、冷えた缶コーヒーを飲み干した。
そこへ、1台の黒い高級外車が静かに停車した。
降りてきたのは、第1話で二人を追い詰めた『黒傘の女(特別清掃員)』だった。
春日とニトロが瞬時に身構える。
「……警戒しないで。仕事は終わったわ」
女は冷徹な表情のまま、佐藤の前に立った。
「協会のシステム障害は全て城ヶ崎の仕業だったことが証明されたわ。あなたたちの処分撤回も正式に決定した。……見事な手際ね、佐藤」
「……もう二度とごめんだね。俺は静かに定時で帰りたいんだ」
女はフッと口元を緩め、名刺を一枚佐藤に差し出した。
「私のコードネームは『アルマ』。また厄介な『残業』が発生したら、あなたたちを指名させてもらうわ」
「お断りだ」
「ふふ、断れないと思うわよ。協会はあなたたちのコンビ……いいえ、トリオを高く評価しているもの」
アルマが車に乗って去っていくのを、3人は黙って見送った。
「……佐藤さん」
「なんだ」
「俺たち、これからもチームなんすか?」
春日がニヤニヤしながら尋ねる。
ニトロも「あたし、報酬が良いなら付き合ってあげてもいいよ?」と生意気に鼻を鳴らした。
佐藤は溜息をつき、ボロい軽トラのドアを開けた。
「……ハメられたり、爆破されたりしない仕事ならな。ほら、帰るぞ。腹減った」
「あ、途中のファミレス奢ってくださいよ!」
「あたし高級ハンバーグ食べる!」
「自分で払えバカ野郎」
朝焼けの国道を、ガタゴトと音を立てながら走っていく1台の軽トラ。
うだつの上がらないベテランと、生意気なZ世代、そして危険な女子高生爆弾魔。
彼らの不条理で賑やかな「殺業」は、これからも続いていく。
(第1期・完全完結)
コメント
1件
いやー、第4話、第1期完結編っすね!最後まで読んだけど、めちゃくちゃ熱かった🔥 軽トラで時速200キロのカーチェイスからの、滑走路でジェット機に飛び移る佐藤さん、マジで昭和のアクション映画みたいで痺れたわ。しかもスタンガン一発で決めるスタイル、渋すぎる。 あと、ラストの朝焼けの風景と3人の何気ない会話、お金入って「100万!限定スニーカー買う!」って春日と「あたし爆薬買う」ってニトロ、そして呆れつつも「自分で払えバカ野郎」って言う佐藤さんの関係性がすごく好き。チーム感がちゃんと出ててグッときた。 「殺業は続く」って終わり方も、続きが気になる!お疲れ様でした、青い子さん!完結おめでとう🎉