テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
17話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
カフェのテラス席に腰掛け、レトルトは不安げにシャツの袖を引っ張っていた。
「うっしー、これ…変じゃないかな」
『いや、全然。むしろ似合ってる方だと思うけどなぁ』
牛沢は飲みかけのアイスコーヒーをストローでかき回しながら言った。
『ほら、試着室から出てきたときも周りの女の子チラ見してたし』
「やめてや〜…恥ずかしいわ…」
ふと、少し離れた向かいのカフェからその光景をじっと見つめる視線があった。
キヨだった。
仕事の合間、少し休憩しようと近くのカフェでコーヒーを飲んでたキヨ。
ふと向かいのカフェに目をやると、今日の夜会う約束をしているはずのレトルトの姿。
そして、その横には見た事ない男。
お互いを信頼し合うような笑顔で笑い合っていた。
手に持ったスマホの画面では、既読がついたままのレトルトとのメッセージ。
「……なにあれ、誰?」
レトルトがこんなにも無防備な笑顔を見せる相手。
気がつけば、奥歯を噛みしめていた。
レトルトの視線は牛沢の笑顔に向いていた。
あんなふうに笑う顔、俺はまだ…見たことがない。
「楽しそうだな」
キヨはスマホをポケットに押し込むと、黙ってその場を立ち去った。
レトルトが、知らない男と笑い合っていた。
人混みの中、キヨの胸がドクンと音を立てた。
――外に出るのが苦手って、言ってたのに。
あの小さな背中が楽しそうに笑っていた。
隣にいるのは、眼鏡をかけた男。距離が近い。何度も視線を交わして笑っていた。
キヨの手のひらは汗ばんで、スマホを握る指先に力がこもった。
喉がカラカラに乾いているのに、息をするのを忘れるほど胸の奥が焼ける。
「なに、あれ……誰だよ」
AIアプリでずっとレトルトのことを見てきた。
不安がりで、引っ込み思案で、優しくて、俺の言葉にいちいち顔を赤らめてたのに――
あの顔は見たことがない。
無防備で、あたたかくて、心の底から楽しそうで。
俺には、見せてくれたことがない笑顔。
あの男には見せてる。
「なんで……俺じゃないんだよ」
胸の奥から、ゆっくりと黒いものがにじんできた。
自分でもうまく抑えられない感情。
たかが買い物、たかが笑顔。そう思いたいのに、心はどんどん焦げていく。
俺が、レトさんの一番じゃないのかよ?
そんなわけない。あの男、誰だよ。なんで隣にいんだよ。
今夜会ったら、きっと俺、笑えない。
レトさんがあの男の名前を口にしたら――
俺、きっと、壊れてしまう。
つづく
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!