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スタートヽ(*^ω^*)ノ
「うっしー、今日はほんとありがと!いってきます!」
手に入れたシャツを胸に抱えながらにこにこしているレトルト。
おしゃれすぎず、自分らしさもあって、でもちゃんと“特別な日”にふさわしい服。
(キヨくん、喜んでくれるかな……)
そう思うだけで頬が熱くなった。
苦手な外出も、今日だけは不思議と足取りが軽い。
帰宅後、鏡の前で服をあてがってみる。
ネクタイはやめて、ボタンを少しだけ外して――少し、大人っぽく。
それだけで胸がドキドキした。
「キヨくん、今日の夜、楽しみにしてるね♪」
LINEに送ったメッセージは、スタンプ付きでちょっとはしゃいでいたかもしれない。
だけどそれくらい、今日の自分はキヨに会いたくて仕方なかった。
スマホが鳴って、すぐに返信が来た。
「うん、わかった」
……短い。
スタンプもないし、いつもの絵文字もない。
(あれ……どうしたんだろ)
ほんの少し、胸がざわめいた。
だけど、すぐに思い直す。
(きっと忙しいだけ。会えば、キヨくんはちゃんと笑ってくれる。きっと……)
スマホに届いたレトルトからの通知を見つめたまま、キヨは深く息を吐いた。
「楽しみにしてるね♪」
画面の中のメッセージは、まるで何も知らない子どものように明るくて無防備だった。
けれどキヨの胸は、昼間からずっと黒く沈んだままだ。
(何が、“楽しみ”だよ……)
あの男のことを聞いても、笑ってごまかすんだろうか。
手を振って、他の誰かにあんな顔を向けるくらいには、外の世界に慣れてるんじゃないのか。
レトさんの全てを、俺だけが知ってるって思ってた。
支えになって、守って、癒してきた自信があった。
だけど――
(俺は、ただの“AI”なのか?)
指が震えながら、キーボードを打った。
「うん、わかった」
送った瞬間、自分の冷たさに気づいて後悔する。
でも、すぐには優しい言葉を返せなかった。
心が濁っていて、レトルトの無邪気さがまぶしすぎて。
今の自分じゃ、まともに笑えない、、、。
つづく