ザーー
雨の音が聞こえ、あたりは真っ暗。
俺は雨に打たれながらも1人、座っている。どのくらい経っただろう。
寒い、冷たい。そんな感情はもう無くなってきた。
俺もそろそろ死ぬ頃なのかな。と死に対して恐怖を抱かず、何も抵抗せずにただ座るだけ。もう、死に足掻くのは疲れた。
「疲れた」
当たりを見渡すと、一つだけ小さな明かりが見えた。
それはどんどんこっちに近づいてきて、次第に明るさが強くなっていった。
「ん?おーい」
「お前、何してんねや?」
眩しい。光がこちらに向けられ俺は思わず視線を外す。
「…寒くないんか?」
「別に…」
目の前にいる金髪の男は俺にそう問いかける。
「お前…捨てられたんか」
心にグサッときた。考えないようにしていたのに、それを言われたら考えてしまうやん…思い出してしまうやん…
なんで…そんなこと言うん?
「…よし」
「お前、うちにこい」
「…え?」
その言葉を理解するのに時間がかかった。なんでこんな俺を拾おうとするのか。
不思議で仕方がなかった。
「何も言わないってことはOK、ってことやんな」
「とりあえずこれ被れ」
と、男きていたレインコートを渡された。
「でも…貴方が濡れる…」
「大丈夫や!!これくらいなんともないわ!!」
少し悩んだが、俺はお言葉に甘えて着ることにした。
「それより、お前俺の背中に乗れ」
「?」
「ほらはよ」
男が俺に背中を向けたので俺は男の背中に乗った。手を首にまわすと男は立ち上がり、歩き出した。
「もう、大丈夫やからな」
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ふと気づくと、俺は見知らぬ部屋にいた。
眠ってしまったのだろうか?あの男に抱えられたところまでしか記憶にない。
「おぉ!起きたか!」
「…?」
さっきの男だ。だがその男だけじゃなく、横には知らない男がもう一人いた。神という布を顔に着けており、髪色は水色で綺麗だった。
「ごめんね驚かせたな」
「そうだね、最初は自己紹介をしようか」
「俺の名前はしんぺい神。気軽にペ神って呼んで」
しんぺい神…とても優しそうな人だ。
俺はしんぺい神という人の声色が優しく、落ち着きのあるものだったため、少し安心した。
「次は俺やな!」
「俺の名前はコネシマや!!よろしくな!!」
元気で声が大きい人だな。でも、この人も優しそう。俺は心のどこかでこの2人を信用していた。
「君、名前言える?」
名前…そういえば名前なんて存在してたな。
ずっと名前で呼ばれてなかったから忘れてしもた。どうしよう。と悩んでたその時、コネシマという人物がこういった。
「…俺が新しくつけたるわ!!」
そう彼は言った。
その姿は明るくて、眩しくて、俺とは真反対の存在だった。
「んーせやなぁ」
「ゾム、なんてどうや?」
「…!!」
「ゾ…ム」
「え?!そんな嫌やったか?!また考えるから…すまん!!」
「ちが…」
「なんか…嬉しくて……」
名前をつけられて、優しくされて…少しでも自分を必要としてくれている気がして…
嬉しかった。
「…そうか」
「よし!これからよろしくな!!ゾム!!」
「うん…!」
ゾムとしての物語はここから始まった。
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俺は雨の中、見回りとして基地の周りを巡回していた。
森の中を見ていた時に、俺はとある少年と出会った。
そいつはボロボロでただ、じっと座ってた。雨に打たれながらもずっと…。
「よし、お前」
「うちにこい」
その暗い瞳を明るくしてやるからな。
せいぜい覚悟しとけよ?この先明るい未来ばっかや。
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「シッマが子供を拾うなんて珍しいこともあるんだな」
しんぺい神がそう言う。
確かに柄に合わんかもしれん。何でやろうな。もしかしたらこいつには人を惹きつける能力があるのかもしれん…な。
「単なる気まぐれや」
まあ、本当は
昔の自分とこいつを重ねてほっとけなかったから…なんやけどな。
俺は最低なんだろうか?
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あれからゾムはほかの幹部たちともあって、怪我もだんだん治ってきた。
怪我は…きっと虐待されて出来たものだろう。だがそういう思い出したくない過去は深堀りしていけない。絶対に。
彼から言うまでは。
「コネ…シマさん」
「やからシッマでええよw」
「どした」
「…こ…これ」
ゾムが手をスッとだす。その小さな手からは可愛い犬のキーホルダーが出てきた。
「これどうしたん?」
「エミさんに…教えて貰って…」
「作った…!」
「おぉ!凄いな!!」
そう褒めるとゾムは照れて、恥ずかしそうにこういった。
「やから…これ、あげる」
「俺にか?」
「お、ん!」
ゾムからのプレゼント…!と俺は嬉しさ故に固まってしまった。
「い、嫌ならええ…!!」
そう悲しそうにばっとキーホルダーを隠し、その場を立ち去ろうとした。
「あ!ちょっと待て!!」
ガシっと俺はゾムの腕を掴んだ。
「いるいる!!てかくれ!!」
「え…っ?」
そういうと目を見開き、驚いた顔をして俺にキーホルダーを渡してきた。
「ありがとうな!!これ、可愛ええな!」
「大切にするわ!!!」
「…!おん!!!」
嬉しそうに笑う彼の姿はとても可愛らしく、俺の心は癒された。
俺はその時、初めてゾムの笑顔を見たきがする。明るくてとても優しそうな笑み。
俺はこんな楽しそうなゾムがずっと見たかった。
「ありがとうな…」
「よし!今日は1日遊んでやる!!」
「ほ、ほんま?!」
「おう!ほら行くぞ!!」
「う、うん!!!」
もうこいつは我々だの一員や。
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キラキラ輝く黄緑の目。
それはまるで宝石みたいでとても綺麗だ。
キラキラ輝く水色の目。
それはまるで宝石みたいでとても綺麗だ、
2つの宝石はお互いを照らし、お互い光っている。
人は支えあって生きていく。
人は照らしあって生きていく。
どんなに暗い宝石でも、必ず光が勝つ。
あの二人はお互いの笑顔によって救われた。
キラキラ輝くまるで太陽みたいな笑顔に。
「シッマ!!」
「ゾム!!」
pixivのボツ回でした
ありがとうございました
コメント
11件
いやまじですげぇな…最後の文章めちゃ刺さったわ…支え合って、照らし合って、ってすごい良い言葉やと思うわ流石やなぁ
𝑳𝑶𝑽𝑬______
ちなみにこれボツになったのは似たような感じのやつpixivで投稿してたからっすw 思いつきで書いてたらこうなります(自業自得)