小峠さんの過去捏造してます。本当にすみません。
気を悪くされたらごめんなさい。
『何でさっき俺のことを人間じゃないようなものを見る目で見たの?』
『そ、それは…』
普通考えられない不可解な現象。それを生み出した小峠をみる目が偏見を持った眼差しとなったのは必然の結果だった。
『カブト〜、何訳分かんないこと言ってんだ〜?』
小林が場を和ませようとしたのか話に割り入る。
『小林の兄貴は黙っててください。』
普段なら考えられない小峠の物言いに、小林の雰囲気が変わった。
『カブト、今、何つった?』
『…黙っててください、と言いました。』
『…舐めてんの?』
『舐めてない。というか…』
小峠の目には光など宿っていなかった。それは彼らがよく見てきた、希望を失った目だ。そしてそれはもう、彼らの知る小峠華太ではなかった。小峠の姿形をした、得体の知れない何か。
それに気づいたのだろう、野田がその何かに問う。
『…お前は一体…』
その言葉を聞いた途端、その何かの顔から表情が消えた。
『……わからない。』
『は?』
突然発せられた意味の分からない言葉に一同は困惑する。その中でも何かは…小峠は言葉を続けた。
『俺の知ってるお前は…小峠華太という人間だ。それ以上でも、それ以下でも…』
紡がれる和中の言葉を小峠は遮った。
『違う、そうじゃない…俺は…ッ…小峠華太だって、分かるのに…全然、違う人間みたい…大切な人、傷付けて、泣かせて、そのくせに何も分からなくて…』
小峠の目に涙が溜まっていき、それは自然と白い頬を伝った。
『…ッ…ちゃんかぶ…!』
宥めようと必死になる青山の言葉も、小峠には届かない。
『嫌だ…嫌です、もう!誰も…ッ…傷つけたくない…ッ!傷つけられたくない!痛い、いたい、イタイ、イタイ…もう…ッ、もう!……消えてしまいたい…』
途端、『消えてしまいたい』と口にした小峠の身体が薄っすらと消え始めた。
『華太!/ちゃんかぶ!?/カブト!』
消えていく小峠の姿を見て、一同は焦る。小峠の身体が完全に消える直前、消え入りそうな声でこう聞こえた。
『兄貴…ッ助け、て…』
そして小峠の身体が完全に消えた。
『ちゃんかぶ、嘘…だよな。』
『青山、落ち着け。…だが、これは一体…』
青山は呆然と立ち尽くす。それに見兼ねた和中が声を掛けた。
流石の小林もこれには驚いていたようで、声も絶え絶えに呟いた。
『さっきまでいたよな、カブト。俺達の目の前に…』
『あぁ…何なんじゃ、あれは…』
野田も困惑したように言葉を発した。そこには、焦りも入り混じっていた。
『ちゃんかぶ、助けてって…言ってましたよね…』
少し冷静さを取り戻したのだろうか、青山が話す。
『そもそも…何故、華太は消えたんだ?』
和中の疑問に関しては当然、満場一致のものだった。
『まず、あいつの事について、詳しく調べるしかねぇな。ってことで青山ぁ、あいつは一体何をしてたんだ?』
野田が青山に向かって問う。
『…人が、浮いてたんです。多分、というか確実にちゃんかぶが人を浮かしていました…』
青山の答えに一同は信じられない、という顔をする。
和『人を…浮かしていた…?』
青『はい、にわかには信じ難い話ですが…ウソではないです。』
野『アホ。お前が嘘つくような奴じゃないことぐらい分かっとるわ。でも、まぁ…普通に考えるとちょっと信じられん話な野田。』
小『でも俺ら、さっきの見ちゃったかんなぁ…』
和『…あれを見れば、流石に嘘とは言えん。ああいう類のことに詳しい人間、それか先程のような現象をよく知っている人間に聞きたいな…思い当たる奴はいるか?』
しばしの沈黙が流れたあと、野田が思い出したように声を上げた。
野『そういや、丁度そういうのに詳しい奴がいるなぁ。しかも、華太専門で。』
和『それは一体…?』
和中の問いに、野田はニヤリと笑ってこう答えた。
『…………え?』
意外な人物に一同は驚いた表情をする。
青『京極組の久我…?あの、イカした髪型をしている…』
野『あぁ。久我と華太はかなり親交が深かったらしいからなぁ。後あの髪型はセンスが無いだけじゃあ。』
久我の髪型に対してかなり可哀想なことを言っているが、まぁ覚えやすいなら良しとしよう。
小『となると、早速聞き込みだなー。』
和『ただ、先程の現象を認知しているかは良く分からないな…。』
野『それに関しては心配無用じゃあ。前に久我が華太と良く分からん話をしていたのを聞いたことがあるからなぁ。人を浮かすとか、雷を落とすとか。』
小『カブト、雷落とせんのかぁ〜。凄えな。』
和『とりあえず、ここにいるだけでは時間が勿体ない。決まれば早速久我に聞きに行くぞ。』
一同は久我の元へと向かった。
そして、現在に至る。
先程の天羽組4人組が小峠の事を聞き出すべくして、京極組本部にて久我と話していた。
久『えーと…天羽組の皆さん、何か用ですか?』
オーラがエグい、という表情を浮かべながら久我は尋ねる。
野『単刀直入に聞く。お前、華太が人を浮かせることができるのを知ってるか?』
久『………何で、それを知ってるんスか?』
信じられない、と言った表情で久我は顔を強張らせる。野田は経緯を簡単に話した。その話を聞いた後、久我はしばし考え込んでしまった。
和『…先程の様子を見るに、何か知っているな?』
その言葉に久我は、仕方ないという風に話しだした。
久『小峠さんは代々、特殊な能力が発現する一族の生まれなんです。…御前って知ってますか?政界の重鎮って言われている…』
野『あぁ。』
久『小峠さんは、その御前の甥にあたるんです。それで、その…噂にしか聞いてないんですが、御前は小峠さんに執着していたそうで…というのもそれが、小峠さんの持っている【能力】がかなり一族のなかでも特殊だったらしくて…』
青『やっぱちゃんかぶは、普通じゃ考えられない力を持っていたんだな。』
小『それで、その能力って何だ?』
小林の問いに対して久我は言い渋っていたが、決断したのか、話し始めた。
久『小峠さんは、【思ったことを何でも実現できる能力】の持ち主なんです。人を浮かそうと思えば人を浮かすことができる、氷で剣を創ろうとすれば創ることができる…だけどそれは強力な分、扱いが難しいんです。何せ、思ったことが現実になってしまうわけです。軽々しく、こいつ死んじゃえば良いのに、なんて思うならば相手は本当に死んでしまったり…とにかく、本人が悩んでいたことは確かです。』
和『それで、御前が華太に執着していたのはその能力が原因なんだな?』
久『……はい。』
野『理由は何なんじゃ?』
久『……小峠さんの能力は強力です。小峠さんを手元に置いておけば、気に入らない相手だって簡単に消してしまえる。それが理由だそうです。』
小『でもよぉ、何でカブトは反抗しなかったんだ?逃げようと思えば簡単に逃げれるだろ。』
久『あぁ…それに関しては本当に後味が悪い理由があります。聞きますか?』
野『もちろんな野田。』
久我は大きく息を吸って吐いた。他から見ればそれは、怒りを抑えるためのようだった。
久『小峠さんは一度、逃げ出そうとしたそうです。だけど失敗した。それが理由で御前は、小峠さんの目の前で彼の両親を殺したんです。』
『…は?』
一同は呆然とした。というよりも怒りと呆れというと正しいだろう。
青『それは…本当に気分が悪くなる話だ…』
静かな怒りを滲ませて青山が呟く。
そんか一同に久我は更に言葉を続けた。
久『そんなの見せられたらもう、何もできないじゃないですか。ましてやその時の小峠さん、まだ中学生だった。それからずっと、御前に従ってきたと…けれど高校生になったことを区切りにしたのか、彼は御前から逃げた。悲しいかな、失うものは…何もなかった。だから…』
久我はやっと小峠のことは全てを伝え終わったというように息を吐いた。どうやら、この話をするのに相当疲れたようだ。そして久我は、伝えていなかった自分の気持ちを言葉にした。
久『皆さん、さっきの話を聞いて俺、思いました。小峠さんが貴方達に助けを求めたんだなって。抱え込んできた傷を…貴方達に打ち明けたかったはずです。でも彼は消えることを選んでしまった。そうせざるを得なくさせたのは御前だ。御前にされたことが…させられたことが…彼を今まで、蝕んでいた…。誰もいないどこかで彼はきっと、今も苦しんでいる。御前の呪縛から彼を救えるのは多分、貴方達しかいない。だから、どうか…』
小峠を救うこと…それは言われなくとも自分達がすべきことだと彼らは理解していた。
和『ああ、分かっている。だが…』
青『どうすればちゃんかぶを救えるか、分かりませんよね…もうちゃんかぶには俺らの声が届かない。』
その会話を聞いていた久我が何故か自信ありげに笑った。
久我さんの髪型可哀想なこと言われてましたけど、私あれめっちゃ好きです。髪長くて綺麗です。自分もああいう髪型してみたいけど似合わないって分かってるので出来ません…
コメント
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ツヅキガタノシミダヨ! いっつも最高の作品を描いていただきありがとうございます!