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「アンナ、とてもよく似合ってる。可愛らしい君が、ぐっと大人になった感じで綺麗だね!」
大人に……って、失礼な! と思った。私だって、もう立派なレディであるのだ。
でも、今日はそんな小さなことでジョージアに文句は言わない。だって、本当にこのドレスは、素敵なのだから。
「ありがとうございます。ジョージア様もとっても素敵ですよ!」
お互い褒め合戦が始まるところであったのだが、ジョージアが机の上に置いた綺麗に装飾された箱から何かを取り出してこちらに歩いてくる。なんだろうと目を凝らしてみたが、わからなかった。そうこうするうちに、目の前にジョージアがきており、私にそのまま腕を回してくるところだった。すると、簡単にハープアップに結われていた髪が、いきなりずしりと重くなった。
「うん。これも、アンナの髪に良く映えるね!」
ジョージアに耳元で囁かれ、今の腕の中にいるという状況もすごく恥ずかしくなってきた。
「手鏡、用意してくれる?」
侍女に頼んで、ジョージアは私から一歩後ずさった。その場に残ったのは、顔を赤くしている私がその場で佇んでいるだけ。
「見てごらん。とっても似合っているから!」
侍女から手鏡をもらい、先ほどの重みの正体を確認する。そこには、サファイアで作られた青薔薇の髪飾りがあった。
「ジョージア様! これは……?」
「うん。俺からの贈り物。アンナが俺には青が似合うっていうから、青薔薇を君にも贈ることにしたんだ。あとは、あの宝石箱の中に入っている。つけて見せて」
ずっしりとした髪飾りは、とても大きくて綺麗なサファイアで作られているものである。
「もらえません! とても高価なものですよね!?」
「さすがのセンビガンだね。これは、俺と一緒に卒業式に出てくれるお礼だと思ってくれたらいい。両親も納得している贈り物だから、もらってくれないと困るよ?」
私は、サファイアの価値に固まってしまい困るといい、ジョージアは貰ってくれないと困ると苦笑いしている。
どうしよう……? こんな立派なものもらえないよ……。
断ることばかり考えていた。とても綺麗なサファイアに心惹かれないとは言えなかった。透き通るような青が素敵なのだ。
「……わかりました。ありがたくいただきます!」
私が折れることにする。私もこのサファイアに似合うものをジョージアへ贈ろう。
「よかった。もらってもらえないと本当に困ってしまったところだったよ」
嬉しそうに笑うジョージア。
「他もつけてみて! ピアスとネックレス、ブレスレットを用意しているから! なんか、青いものばかりだから……俺色だな……」
!!!!!!!
「あっ! ……いや、失言かな」
ジョージア様って素はこんななの? と内心、心臓がバクバクしながらジョージアの言葉を聞いている。
「いえ、大丈夫です……」
「あ……じゃ……じゃあ、つけてみて!」
宝石箱を渡され、侍女がつけてくれる。鏡を見ればわかる。ジョージアを纏っているかのごとく青薔薇で着飾っている私。その隣には、とても嬉しそうにしているジョージアがいる。将来、こんな風に一緒に並ぶ日がまた来るのだと思うと素直に嬉しく思う。
「どうですか? 似合います? 宝石が綺麗すぎて、私、かすんでしまいますね……?」
「とっても似合ってる。かすむだなんて、とんでもないよ! よかった、少ない時間でも一緒に過ごせる時間が取れて……」
ジョージアは、本当に嬉しそうに笑って同じ鏡に映っている。
「ジョージア様、私のために本当にありがとうございます。卒業式、楽しみですね!」
「そうだな」と言ってくれるジョージアに鏡越しに微笑んだ。でも、ジョージアにとって卒業式は最後の自由な日になるのだ。少し寂しそうにしているのが印象的だった。
「衣装合わせは以上で終わりです。卒業式までこちらで衣装の方はお預かりさせていただきますね。宝飾品のほうは、アンナリーゼ様が管理ください……」
相当高価なものなので、自宅で保管した方がいいだろう。
「わかったわ。このサファイアは私が預かりますね。少しお待ちください」
宝石箱を持って、母に管理してもらうようお願いしにいった。ちょうど出かけているようだったが、快く母の侍女が預かってくれる。ジョージアも一緒に母へ挨拶に行きたいと言われたが、卒業式の日でいいと断って兄の部屋で待っていてもらう。
「お待たせしました。今日は出かけてるようでした。母も是非挨拶をしたいと申してましたので、卒業式の日にと伝えておきます」
「そうか、ありがとう。卒業式の日には、ご両親にきちんと挨拶させてもらうよ。あぁ、そろそろ日も暮れそうだね。また長居してしまったようだ。今日はそろそろお暇するよ」
そういってジョージアは席を立つ。なんだか、とても寂しい。胸の中にもやっとしたものを押し込める。今日は、こちらに別に宿をとっているそうで、そちらに向かうとのことだった。玄関まで見送り馬車が去るまで私は、そこで佇んでいた。