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―――撮影現場での出会いが、
すべての始まりだった。
人気俳優として活躍する道枝駿佑。
若手実力派女優・那須〇〇。
同年代ということもあり、
ドラマでの共演をきっかけに、二人の距離は自然と縮まっていった。
撮影の合間、何気ない会話を重ねるたびに、
互いに気を許していく。
『ねえ道枝くん、今日のシーン、ちょっと緊張したよね』
駿佑「え、〇〇も?俺だけかと思ってたわ」
『ふふ、なんか安心した』
…彼女にとって、
そんな他愛もないやり取りが、とても心地よかった。
―――そしてある日。
駿佑「今度さ、撮影終わったら俺んち来る?ゆっくり話したいし」
『え、いいの?行きたい!』
…その一言に、少しだけ間があったことに、
那須は気づかなかった。
―――数日後、道枝の家。
『おじゃまします』
駿佑「どうぞ。散らかってるけど」
部屋は驚くほど整っていた。
むしろ、几帳面すぎるほどに。
『めっちゃ綺麗じゃん。イメージと違うかも』
駿佑「そう?」
少し照れたように笑う道枝。
だがその直後、
彼の表情がほんのわずかに曇る。
駿佑「あ、そうや…一つだけ言わなあかんことあんねん」
『ん?』
彼が視線を向ける先を那須も追うと、
そこにはどこか不穏な気配を帯びた部屋があった。
駿佑「この奥の部屋だけは、入らんでほしい」
『え?』
駿佑「…なんでもない部屋やけど、ちょっとな」
その言い方に、違和感が残る。
『ふーん…?わかった』
そう答えながらも、
心の奥に小さな引っかかりが残った。
―――しばらくして。
『ごめん、ちょっとトイレ借りていい?』
駿佑「ああ、廊下の右」
『ありがと』
……トイレに向かうふりをしながら……
那須の視線は“あの部屋”へと向いていた。
ーー『…ちょっとだけなら』
静かにドアノブに手をかける。
……カチャ、と小さな音を立てて
ゆっくりと開いたその部屋。
…そして、次の瞬間。
彼女の目に入った光景、それは……
『……え……?』
壁一面に貼られていた那須の写真だった。
撮影現場でもない、
オフの瞬間。
街を歩いている姿
カフェで笑っている姿
気づかぬうちに撮られたものばかり。
『なに…これ……』
恐怖で手が震える。
足がすくむ。
…そのとき――
駿佑「……〇〇?」
背後から、
静かな声が響いた
『っ……!』
振り返ると 、
そこには無表情で、どこか狂気を帯びていた目をした道枝が立っていた。
駿佑「なんで、入ったん?」
『ごめ…ごめん…』
『…でも、これ…どういうこと…?』
道枝は一歩、ゆっくりと近づく。
駿佑「…あー、見られたかぁ…」
『……道枝くん…これ、全部…私…?』
道枝「うん。〇〇やで」
『なんで…こんなこと…』
しばらくの沈黙。
そして、彼は小さく笑った。
駿佑「好きやからに決まってるやん」
『え…?』
駿佑「ドラマで初めて共演して会ったときから、ずっと見てた」
『み、“見てた”って…』
駿佑「全部知りたかったんよ。〇〇のこと」
…一歩、また一歩と距離が詰まる。
逃げたいのに、足が動かない。
『…普通じゃないよ…こんなの…』
気づけば壁に追い詰められている…
駿佑「普通じゃなくてええやん」
その声色は、
優しく、どこか恐怖に包まれていた
駿佑「俺だけが、〇〇のことちゃんと見てる」
『やめて…』
駿佑「他の誰よりも」
彼の手が、
そっと那須の頬に触れる。
『……っ』
駿佑「怖い?」
『……こわいよ…』
駿佑「そっか」
どこか、少しだけ寂しそうに笑ったあと、
彼は耳元で囁いた。
駿佑「でも、もう遅い」
『え…?』
駿佑「入ったやろ、この部屋」
静寂が落ちる。
駿佑「ここ、俺の“全部”やから」
その言葉の意味を理解した瞬間、
背筋が凍る。
駿佑「逃がすわけないやん」
『……っ』
喉がキュッ、と縛れるように締めつき、
声が出ない。
ただ、彼の瞳から目を逸らせなかった。