あたしはワンピースのポケットからハンカチを取り出し、洟をかむ
「あたし達はそれはもう仲が良くて、結婚しているようでした・・・でも彼が船に乗る前に喧嘩したんです 」
「まぁ・・・・」
お母さんがハッと口に手を持って行く
ヒック・・・
「本当はこんなことをしたくなかったんですけれど・・・どうしようもなくて・・あたしが悪いんです、だって彼ったら他の女の子のインスタを見たりしていて、彼はあたしが勝手にスマホを見たことをすごく怒って・・・
ヒック・・・あたし・・謝りたくて・・・でも彼はlineもメールもブロックしていて連絡が取れないんです・・・・」
涙が頬からこぼれてその先の言葉が出てこない。
お母さんがわたしの膝に手を載せる
「では・・・俊太の子供なのね?」
あたしはうなずき、さらに激しく泣く。
つかの間の沈黙
お父さんはただ黙って口を一文字に結んで目を閉じていた
「俊太はあなたに赤ちゃんが出来た事を知らないのね?だってあの子は海の上ですもの」
お母さんは泣いているあたしを同情するように言った。そこであたしは涙を拭きながら鞄の中から胎児の超音波写真を撮り出した
ガバッとお父さんとお母さんが前かがみになって、その写真を食い入るように見つめる
ヒック・・・
「堕ろす事も考えました・・・何度も・・でもあたしのお腹の中に芽生えた小さな命の事を考えると・・・絶対そんなことは出来ないって・・・ 」
「ええ!ええ!そうでしょうとも!ティッシュペーパーを取ってあげてちょうだい!あなた!」
お父さんはあわてて立ちあがると、しゃんと背筋を伸ばしぐるりとその場で一回転してから、キッチンへと向かう
ティッシュペーパーを持ってきてくれたので、あたしはもう一度洟をかみ、涙を拭く、お母さんは予定日とか、健診には行っているのかといった当然の質問をしてきた。あたしとお母さんは超音波写真を見て話に花を咲かす
「まあ、まあ、見てお父さん!全部写っているわよ!指も爪先も」
「とても元気なんです」
あたしは言う、お母さんは小さな赤ちゃんの男性であるシンボルを見つけた
「あらあら・・・男の子ね?」
「はい」
「やっぱりうちは男の家系だわ」
すっかり打ち解けたあたし達は母親と義理の娘のように、病院やつわりや痛みを和らげる方法について語り合った
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!