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お母さんは家族のアルバムを持ち出してきて、赤ちゃんの頃の俊太の写真を見せてくれる。
「大きな赤ん坊だったの。四キロもあったのよ」
彼女が言う
「しばらく縫った痕が痛くてね~」
あたしがたじろいだのを見て、お母さんが励ますようにあたしの膝を叩く
「心配いらないわ、あなたはちゃんと産めそうな体つきをしているから、わたしはとても細かったからそれにお乳も沢山出そうね、ねぇ!お父さん」
お父さんは無言で目を閉じている
どこに住んでいて、どうやって暮らしているのかと、お母さんに訊かれたので大阪のショッピングモールのフードコートで働いている事や、今はそこの近くのアパートで独り暮らしをしている事や
隣の家で猫を3匹飼っている仲良しのキャリアウーマンのよっちゃんの話もした
そして・・・当然ながら二人はあたしの両親の話を聞きたがった
「11歳の頃に母が再婚したんです・・・あたしは継父とソリが合わなくて・・・継父は無職みたいなものでしたから・・・ 」
まぁ!とお母さんは口に手を当てた、お父さんは「当然だ!」と憤慨していた
「それで・・・16歳の頃に家を出て一人暮らしをしました。高校卒業までは学費を出してもらっていたけど、生活費はアルバイトをして稼いでいました。あたしはあの人達と暮らすより早く自立したかったんです。今は独学で調理師の免許をとってクレープ屋でパティシェとして働いています 」
二人はしんみりとして言った
「苦労したのね・・・・」
「その若さで立派なもんだ!」
あたし気がつけば、よちよち歩きの頃や学校に通い始めた頃や、ソバカスだらけのティーンエイジャーだった頃の俊太の写真を眺めていた。お母さんに彼の寝室に案内され、サッカーで取ったと言ういくつものトロフィーの話を聞かされる
外はすっかり暗くなっていた。お母さんに泊って行くように勧められ、あたしはお母さんの夕食の準備を進んで手伝った。お母さんはとても楽しそうだった、応接室であたし達が楽しそうにキッチンで料理するのを、お父さんは新聞を読むフリをして幸せそうにじっと眺めている
あたしのお腹の中には二人にとっての初めての孫がいる、大事件であることがよくわかる。お母さんは沢山食べろと、あたしに次々とお代わりをよそう