テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
光の届かない場所で」― ジョングクとミンジュの過去 ―
☽ Jungkook side ──
「SSクラスなんて、なりたくなかった」
SSクラス。
それは、“最強”であり、“異常”だった。
生まれた瞬間から、周囲の空気が変わる。
親も、教師も、誰もが「お前は特別だ」と言った。
でも──“特別”は、“孤独”と同じ意味だった。
Subの子たちが怯える。
Domの先輩たちでさえ、近寄ってこない。
誰も、心の奥まで近づこうとしなかった。
「グク、お前が感情を乱すと、空気が歪むんだよ」
「頼むから、抑えてくれ。怖いから」
──怖がられることに、慣れた。
強さなんか、欲しくなかった。
ただ、“普通”に話せる誰かが欲しかった。
でも、俺の支配欲は強すぎた。
「ただのDom」になりたいと願っても、
フェロモンが、声が、目線が、すべてを支配してしまう。
「誰も、本当の俺を見てくれない」
「皆、俺を“SSクラス”としてしか見てない」
──そう思いながら、大人になった。
心がどこか冷めていた。
期待されすぎて、信じることが怖くなった。
でも、彼女に出会った。
“バースを隠している女マネージャー”
名前は、キム・ミンジュ。
最初は気づかなかった。
でも、ある日ふと──彼女の“無臭”の裏にある、かすかな“共鳴”に気づいた。
「あれは……Subの反応?」
でも、俺に怯えなかった。
俺を“SSクラス”として見なかった。
──それが、すべての始まりだった。
⸻
☽ Minju side ──「SクラスのSubに生まれた罰」
SクラスのSub。
それは、“選ばれし存在”だった。
でも、私にとっては、“呪い”でしかなかった。
母が泣いていた。
「どうしてこんな希少なバースに……危ない目に遭うかもしれない」
父が怒鳴っていた。
「いつか奪われる。力で。バースだけを見て寄ってくるDomに」
だから、私は育てられた。
「フェロモンを封じなさい」
「感情を抑えて。匂いを漏らすな。顔を下げて、主張するな」
生きるために、「自分でいること」をやめた。
でも──夢だけは諦められなかった。
「音楽のそばにいたい」
「ステージをつくる側になりたい」
そうして、BTSのマネージャーという仕事に辿り着いた。
7人のDomと一緒に過ごして、
どこかで安心してた。
「この人たちは、私より強い。でも──誰も私を“奪おう”としない」
そんな中で出会ったのが、彼だった。
──チョン・ジョングク。
初めて目が合ったとき、
空気が一瞬、止まった。
全身の細胞が震えて、心が悲鳴を上げていた。
「この人は、私のすべてを“見透かす”」
そして、怖かった。けど、
ほんの少し──あたたかかった。
⸻
☽ Two side ──「似た者同士の、孤独」
傷つけられた過去。
隠し続けた“バース”の真実。
誰かに見つかることへの恐れ。
ふたりは違うようで、
同じ孤独を背負っていた。
だからこそ、惹かれた。
だからこそ、許せた。
他の誰でもなく、
お互いだけが、お互いの“痛み”を理解できた。
──それが、つがいになるということだった。
⸻
【End:グクとミンジュの過去】
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!