テラーノベル
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ニュースの冷徹なアナウンサーの声が
成田薫がストーカー規制法違反と殺人未遂の罪で起訴され、執行猶予のつかない懲役刑が確定したことを告げる。
テレビの画面越しに、ようやく尊さんの周囲に真の平穏が訪れたのだと実感し、俺は深く安堵の息を吐いた。
ふと、「ストーカー規制法」という言葉の響きから、成田と同等レベルに恐ろしい自分の元カレである亮太さんの顔が脳裏をよぎる。
けれど、俺はすぐに小さく頭を振って、その残像を意識の彼方へと追いやった。
もう、すべては終わったことなのだ。
今の俺が見つめるべきは、過去の因縁ではなく
隣にいるこの人との未来なのだから。
そして今日、慌ただしい会社での通常業務を終えた俺たちは、帰路を急ぐ電車の中にいた。
家路につく人々で混み合う車内、俺たちは当然のように隣同士に座り
ガタンゴトンと揺れるリズムに合わせて、肩や腕から伝わる尊さんの確かな体温を感じていた。
窓の外を流れる都会の夜景。
宝石を撒き散らしたような光の粒が、ふと、あの運命の夜の記憶を呼び起こす。
「なんだか、すごい記念日でしたよね、あの日」
俺が窓に映る自分たちの姿を見つめながらぽつりと呟くと
尊さんは視線をこちらへ向け、少しだけ眉を下げて柔らかな表情を浮かべた。
「……ああ。もしお前が嫌な思い出になっていたら、祝い直すが」
冗談めかして、けれどどこか真剣にそう言ってくれる優しさが胸に沁みる。
「まさか。いい日でしたよ、尊さんが隣にいてくれたので……」
「……ふっ、お前らしいな」
尊さんは少し照れたように鼻先を鳴らして笑った。
その短い笑い声さえ、今の俺には愛おしくてたまらない。
俺は一呼吸置いてから、自慢するように自分の左手を持ち上げた。
「……それに、素敵なプレゼントも貰えて、更に尊さんと繋がれた気がします」
左手の薬指。
そこには、あの日、尊さんから貰ったペアリングが、車内の照明を反射して誇らしげに輝いている。
尊さんは優しく頷くと、自分の薬指でキラリと光る同じデザインのリングを、慈しむように指先で撫でた。
その仕草だけで、言葉以上の想いが伝わってくる。
「尊さん、今日……泊まっていってもいいですか?」
抑えきれない愛しさを声に乗せて、俺は尊さんの広い肩にそっと寄りかかった。
「ああ、もちろんだ」
尊さんの逞しい腕が、自然な動作で俺の身体を引き寄せる。
その柔らかな感触と、安心させてくれる独特の温もりに包まれて、全身の強張りが心地よく解けていく。
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