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Never, Forever

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6

揺れるハート#1〈Black×Red〉

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2023年03月01日

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Side 黒


初めてなんじゃないかと思うほどの、すごい剣幕。

こんな怖い顔のジェシーを俺は見たことがない。

座って肩を縮こめる俺を、背の高い彼が見下ろしてくるものだから威圧感がすごい。

なぜこんなことになったかというと、ほとんど自業自得だ。

前にみんなで仕事をしたとき、テレビ局のエレベーターがたまたま壊れていて階段を使わなければいけなかった。

たったの2階分上っただけなのに、俺は息を切らし膝に手をつく始末。

そんなことは今までになかったから、5人に心配され、特にジェシーには「病院行っとけ」と忠告されたのだ。

そしてダンスの練習をしていたときにも胸が苦しくなり、倒れる寸前だったというのがさっきまでの出来事。

今、「だから病院行ったほうがいいって言っただろ」と怒られている。めったに怒らない温厚な彼のことだから、なおさら怖い。

「マネージャーさんに言って休みもらった。その日に予約取るから」

そう言うと、やっと納得した顔になった。

「わかった。…結果、ちゃんと話せよ」

強く言ったものの、ジェシーの表情はどこか怯えている。

俺だってわかっている。きちんと受診したほうがいいのは。

でも怖いんだ。もし病気だと宣告されたら。

みんなに迷惑をかけるし、活動もどうすればいいかわからない。

もういっそ、全部やめてしまえば……。

心の中で揺れ続ける思考を断ち切るように頭を振った。




重い足取りで病院から帰った日の夜、まず最初に電話したのはジェシーだった。

ほかの人――樹や高地のほうがしっかりしているけれど、彼なら何でも話せる気がして。

少しの呼び出し音のあと、いつもの調子で話しかけてきた。

「もしもーし、どうしたー?」

「ふふ……あのさ、検査結果」

抑えきれなかった笑いを漏らしながら、なるべく明るく言ってみる。

「ああ、どうだった」

相手もそんなに暗い声色ではないことに、ほっと安心した。

「なんか、肺高血圧症っていうらしい」

何でもないことのようにあしらいながらも、胸中ではどう打ち明けようか迷っている。

「……でも」

電話の向こうでは押し黙っているのか、珍しく相槌もない。

「音楽活動、厳しいかもって言われたんだよね」

やはり静かだ。少しの沈黙ののち、

「それでも続けろって俺が言ったら、北斗怒る?」

ううん、と首を振る。「怒りはしないけど……お医者さんに怒られるかも」

「そっか。だけど俺はやってほしい。それに北斗だって辞めたくないんでしょ?」

核心をつかれて、うっと言葉に詰まる。

「…やっぱり。じゃあやればいいじゃん。だって厳しい”かも”でしょ。できるかどうかなんて、やってみないとわかんない」

それがきっとダメなんだよ、と吐息をつく。

「やってみて倒れたら本末転倒だし」

「大丈夫だって。とりあえずみんなにも話しておくから。俺らがいれば大丈夫」

いつになく強いジェシーの口調に、その本気度がうかがえる。

みんなと一緒にいたい。だからやらないと。

自分とメンバーを信じよう、と思った。


続く

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