テラーノベル
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1x1x1x1が率いる「緑のゾンビ軍団」が怨念の群れを食い止めている間に、一行はついに「theBanlands」の最果てへと辿り着いた。
そこは、重力すらまともに機能しない異常領域だった。
壊れたデータの破片や歪んだコードが宙を漂い、紫色の霧が渦巻くその光景は、まるで世界そのものが壊れてしまった後の水晶洞窟のようだった。
その中心に、ひときわ異質なものが存在していた。
最高神Robloxによって刻み込まれた、蒼紫色の「BANコード」。
それによって編み上げられた絶対封印結界が、巨大な檻のように空間を覆っていた。
そして、その結界の中には――一人の女性が静かに横たわっていた。
透き通るような肌。
流れるような美しい紫色の長い髪。
荒れ果てたBanlandsの中にありながら、彼女だけはまるで別世界から切り取られたような気品を放っていた。
「…………」
ハックロードの足が、ぴたりと止まった。
全身を包んでいた緑と黒のエーテルが、大きく揺らめく。
背中に巻きついていた太い鉄の鎖が、ジャラ……ジャラ……と音を立てながら緩んでいく。
そして――
ドォンッ!
背負っていた「大きな暗い棺」が、地面へと静かに降ろされた。
ハックロードは、ただ結界の中を見つめていた。
そして。
「……ブライト……アイズ……ッ」
声帯を失った喉から、かすかな声が漏れた。
その声は、これまで聞いたどんな咆哮よりも弱々しかった。
けれど、その奥に込められた喜びは、誰の目にも明らかだった。
赤い眼光の端から、緑色のエーテルの雫がぽろぽろと零れ落ちる。
「いる……」
ハックロードは震える手を結界へ伸ばした。
透明な壁越しに、彼女の頬へ触れるように指先を動かす。
「本当に……君が……」
そのままハックロードは天を仰いだ。
「何兆もの次元を越え……幾千もの絶望を踏み越え……私は、ついに辿り着いた……」
「おい、テラモン」
背後から1x1x1x1が小声で呼びかける。
「……なんだ」
「始まったぞ」
「何が?」
「愛妻家ポエムだ」
「……ああ」
テラモンは遠い目をした。
ハックロードは完全に二人の会話を無視していた。
「見てごらん……」
彼は結界の中の妻をうっとりと見つめる。
「この気高き姿……漆黒の闇の中に咲く、たった一輪の紫の花……」
「重いな」
「重いね」
1x1x1x1とテラモンが小声で頷き合う。
「封印に囚われてなお、その美しさは一切失われていない……。ああ……寝顔すら美しい……」
「寝顔を褒め始めたぞ」
「聞こえるように言うな、1x」
「君のいない世界は……ただの壊れたコードの残骸だった……」
「…………」
「…………」
「…………」
ビルダーマンとドゥームブリンガーまで、無言で視線を逸らした。
しかし。
その時だった。
ハックロードの身体から、淡い光が放たれた。
彼の魂そのものから溢れ出した「シェドレツキーの波長」が、結界へと伝わっていく。
パリィン……ッ。
蒼紫色の結界に、小さな亀裂が走った。
「……え?」
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蟹溝@プロフ必読
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テラモンが目を見開く。
パリッ……パリパリパリッ!
亀裂は瞬く間に結界全体へ広がっていく。
そして――
パァァァンッ!!
絶対封印が、光の粒となって弾け飛んだ。
静寂が訪れる。
結界の中にいた女性の紫色の髪が、ふわりと宙へ舞った。
そして。
ゆっくりと、その美しい瞼が開かれる。
「…………」
ハックロードの全身の炎が、一気に燃え上がった。
「おお……!」
巨体が震える。
「ブライトアイズ……!」
ハックロードは大剣すら忘れて、両腕を大きく広げた。
「ついに……ついに目覚めてくれたのだね! 私だ! 君のシェドレツキーだ! さあ、我が胸へ――」
その瞬間。
ブライトアイズはゆっくりと身体を起こした。
紫色の長髪を、サッと後ろへ払う。
そして。
目の前にいる巨大な緑の骸骨マスクを、じーっと見つめた。
「…………」
ハックロードも見つめ返す。
数秒間。
誰も動かない。
そして――
ブライトアイズは、すん、と目を細めた。
「ちょっとアンタ」
「……はい?」
「相変わらず声が暗いのよ!!」
「…………え?」
ハックロード、停止。
両腕を広げたまま完全にフリーズした。
「何よ、その格好!」
ブライトアイズは立ち上がるなり、ハックロードを指差した。
「骸骨のマスクなんか付けちゃって! しかも声帯でも壊したの!? アンタが喋るたびに『ボソ……ガラ……』って聞こえづらいったらありゃしない!」
「い、いや……これは……」
「それに!」
ブライトアイズがハックロードの全身を上から下まで眺める。
「アンタ、お風呂入った!?」
「…………」
「カビ臭いのよ!!」
「…………ッ」
ハックロード、沈黙。
そして。
ペシッ!
ブライトアイズの手が、ハックロードの額を容赦なく叩いた。
「シャキッとしなさい、シャキッと!」
「は、はい……!」
「助けに来てくれたことは嬉しいわよ!」
「……!」
「でもね! なんでそんな世界の終わりみたいな顔してんのよ!?」
「…………」
「私を迎えに来たんでしょ!?」
「……はい」
「だったらもっと堂々としてなさい!」
「……はいっ!」
ハックロードの巨体が、どんどん小さくなっていく。
さっきまでマルチバース中のシェドレツキーを狩り続けていた恐怖の死神とは思えない。
完全に妻に叱られる夫である。
その光景を後ろから見ていた1x1x1x1が、肩を震わせた。
「ぷっ……」
テラモンも口元を押さえる。
「……1x」
「なんだよ」
「笑うなよ」
「無理だろ」
「……私も無理だ」
二人とも、ついに耐えきれなくなった。
「ブッ……!」
「ハハッ……!」
ビルダーマンとドゥームブリンガーまで、必死に笑いを堪えている。
ブライトアイズが振り返った。
「……あなたたち」
「「「はい」」」
「さっきから何笑ってんの?」
「いえ、何でもありません」
テラモンが即答する。
その隣で1x1x1x1が小声で呟いた。
「なぁ……」
「なんだ?」
「俺、こいつの嫁にだけは絶対逆らわねぇ」
「奇遇だな」
テラモンも真顔で頷いた。
「私もそう思う」
そしてハックロードは、そんな仲間たちの様子など一切気にせず、妻を見つめていた。
「……ブライトアイズ」
「なによ?」
「私は……本当に……君を取り戻せたのだな……」
その声だけは、震えていた。
ブライトアイズは一瞬だけ表情を柔らかくすると、ハックロードの骸骨マスクを軽く撫でた。
「……遅いのよ、バカ」
「……すまない」
「でも」
彼女は小さく笑った。
「迎えに来てくれて、ありがと」
ハックロードの赤い眼光が、再び大きく揺らめいた。
そしてその背後では――
「……なぁテラモン」
「なんだ、1x」
「俺たち、世界を救いに来たんだよな?」
「そのはずだ」
「なんで最後だけ夫婦喧嘩見せられてんだ?」
「……私にも分からん」
theBanlands。
絶望と抹消の果てにある、世界でもっとも救いから遠い場所。
その最深部で今、数兆年ぶりに再会した愛妻家と妻の間に、妙に生活感のある夫婦漫才が繰り広げられていた。
コメント
2件
更新ありがとうございます!🙇♀️全てのシェドレツキーを♡♡♡以外の方法を思いついた展開もハッピーエンドに向かっている感じがしますし1xがテラモンに褒められて照れているのもとてもツンデレ感があって可愛いと思います!ブライトアイズを見つけた時や最後にブライトアイズが起きた時にハックロードを注意しているのもハッピーエンドに向かっている感じがしていいと思います!