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実家への挨拶から数日
あの日、涼さんに突きつけられた
「今の僕がまだ嘘をついているように見えるのか」という言葉が、呪文のように頭から離れない。
会社では相変わらず、彼は「完璧な専務」として私に接する。
けれど、時折重なる視線の熱さに、私は耐えられなくなって、わざと深夜まで残業を詰め込んでいた。
彼が先に帰るのを見計らって、距離を置こうとしたのに。
「——そんなに避けられると悲しいんだけどな」
静まり返ったフロアに、革靴の音が響く。
心臓が跳ねた。顔を上げると、資料棚の陰から
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めた涼さんが現れた。
「涼さん…っ、まだ、いらしたんですか?」
「君が帰らないからね。……何か、探しているのかい?」
私は動揺を隠すように、棚の上の高い位置にある古い資料へ手を伸ばした。
けれど、指先が震えてうまく届かない。
「あっ……」
バランスを崩した私の背中を、大きな掌が支えた。
そのまま、逃げ場を塞ぐように、両腕で私を棚へと閉じ込める。
「……あ、ありがとうございます。あっあの、も、もう大丈夫ですから…」
「大丈夫じゃない。……君は、僕がどれだけ我慢しているか、本当にわかっていないんだね」
涼さんの低い声が、直接脳に響くような至近距離。
彼は私の手から資料を取り上げると、それを足元に落とした。
静かなオフィスに、紙の重なる音が虚しく響く。
「……涼さんっ、誰かが見たら……」
「警備員には、最上階のフロアのセンサーは切るように言ってある。……今は、僕と君以外、誰も来ないよ」
涼さんは、私の耳元に唇を寄せた。
吐息が肌をなぞり、全身に鳥肌が立つ。
彼は私の指を一本ずつ絡め取り、デスクに押し付けるようにして、深く、重い視線を向けてきた。
「実家で、演技だと言ったね。……あんな風に親族の前で君を自慢したのも、エリカに釘を刺したのも、全部僕の本心だ」
「っ、…でも、私は、不釣り合いで……」
「そんな言葉で逃げないで」
彼は私の項を熱い指先でなぞり、そのまま深いキスを降らせた。
爽やかな王子の仮面は、もう跡形もない。
そこにあるのは、一人の女性を独占したいという、剥き出しの執着心だけ。
深夜のオフィス
二人だけの密室で、私はついに、彼の愛という名の檻から逃げられなくなった。
#ワンナイトラブ
#ざまぁ