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#御子柴
ゆらり
81
「あぁ ?おまえタバコ吸ったことねーの?」
「うん、僕、タバコ苦手でさ。」
放課後、生徒会室に遊びに来た柴田くんが、フーン、と物珍しそうな顔で僕を見る。まぁ、そりゃそうだ。不良で有名なこの目黒川高校はタバコを吸っていないほうが珍しいだろう……って、そもそも高校生の喫煙は犯罪だろ。と、言いたくなるのを抑えて、柴田くんに言葉を返す。
「柴田くんはさ、美味しいの?そんなプカプカ煙吐き出して」
おう。と素っ気ない返事が返ってくる。どうやら、自分の爪の方に興味が移ったらしい。
はぁ、いつまで生徒会室にいるつもりだろうか、柴田くんは放課後、部活で忙しいはずだけど、作業をしなければいけない今日に限ってオフらしい。いつもオフなら友達と遊びに行くと思うけど、どうしてここにいるんだろう。ますます生徒会室を訪ねてきた理由が分からなくなった。
「柴田くん、今日部活休みなんでしょ、友達とどっか行ったりしないの?」
「今日あいつら全員、なんか用事あんだって。だから帰ってもヒマなんだよ。」
ああ、そうか。柴田くんの暇つぶし相手に抜擢されたワケだ、僕は。でも、僕もこの、文化祭の企画書を作り終わったら帰るワケだけど、それまでずっといるのかな。無事に終わればいいけど。
「なあ、おい。」
柴田くんの方を向く。なにか企んでるな、この顔は。
「どうしたの?」
「おまえ、タバコ吸ったことないっつったよな。ほれ、一本やるよ。」
は、はあ。吸ってみろってコトだろう。今さっきタバコが苦手って話したのに、 何を提案してきているんだ、この人は。
「あのね、僕——————。
「ホラ、火ィ。」
……まずい、全然話聞いてない。断ろうと、もう一度タバコが苦手だという旨を伝えようとするが、やっぱり耳に入っていないらしい。いや、ただ単に聞き入れてないだけか。
「だから—————。
ドカッ。
「さっさとしろよ。」
一瞬、何が起こったかよく分からなかった。少し遅れて、口の中に血の味が広がる。殴られたのか、僕。いくら僕が柴田くんの思い通りにならないからって、殴るこたないだろ。それにしても、痛いなぁ。柴田くんのパンチ。流石は不良。って、それはどうでもよくって、ここまできたら、もう吸うしかないか……また余計なこと言って、殴られたくないしね。と、僕は渋々、口を開いた。
「わかったよ。吸うよ。」
「おせーよ、バーカ。」
ホラ。とタバコ一本とライターを投げてくる。柴田くんの方をチラリと見ると、心底愉快そうな顔で僕を見ていた。生徒会に属する、所謂、優等生の僕が、タバコを吸うのがそんなに面白いのか?あー。そもそもどうやって吸うんだ?コレ。タバコを片手でつまんで、もう片方をライターで炙ってみる。火、つくかな。
着かなかった。今度はタバコを咥えて、みんながやってるみたいに、先端に火を近づける。
コレも、着かなかった。分からないなりに、それっぽいコトをやってみたけど、全然火がつかない。どうしよう。柴田くんに聞いた方がいいよな。コレ。
火の付け方を聞こうと、柴田くんの方を向いたら、柴田くんがケラケラ笑い出した。
「ぎゃっはっは、おまえ、ホントに吸ったことねーんだな!咥えて、吸いながら火ィつけんだよ。」
柴田くんの言う通り、咥えて、吸いながら火をつけてみる……タバコの先端が赤くなった。ついたってことなんだろう。ここまできたら、もう後には引けない。覚悟を決めて、僕は煙を吸い込んだ。
「ゲホッ、ゲホ、、う、うぅ……」
また、柴田くんがこっちを見て嬉しそうに笑っている。苦しそうな僕が柴田くんにはウケるらしい。
「こ、これでいい?」
心からの懇願だった。副流煙でさ吸い込むのが苦手なのに、主流煙なんて吸ってたら、苦しくなって倒れてしまいそうだ。どうか一吸いで満足してくれないだろうか、柴田くん。
「ああ?まだ火ィつけたばっかだろ、もったいねーじゃねーか。俺のタバコが。」
「お、お願い、これ以上は死んじゃうよ。」
「死んでろよ。ボケ 」
許してくれなかった。やっぱり、最後まで吸うしかないのか。と、半分泣きながら、吸う 決意を固めたとき、柴田くんが口を開いた。
「冗談だよ、バーカ。貸せ。」
手に持っていたタバコを取られたと同時に、僕は大きく安堵した。この苦しみから解放されるのを喜んだ。大袈裟かと思うかもしれないけど、ホントにタバコが苦手なんだよ。とかなんとか、色々考えていたら、柴田くんが僕から取ったタバコを自分で吸い出した。
「それ、僕が吸ったやつだけど、良かったの?」
「別に、このまま捨てる方が良くねーだろ。せっかくの一本がよ。 」
スー、と息を吸い込んで、喉から灰色の煙を吐き出す。柴田くんがいつからタバコを吸い始めたのか知らないけど、タバコにかなり慣れていることは、吸ったことのない僕でも分かった。すると何かいいことを思いついたのか、柴田くんの口角が上がった、と、思ったら、次の瞬間、僕の顔に向かってにその煙たい空気をかけてきた。
「うわっ」
僕が顔を顰めると、柴田くんの口角はさらに上がった、ご満悦な様。
それから少し時間が経って、タバコを吸い終わった柴田くんが立ち上がって言った。
「便所行ってくるわ。」
「あ、ああ、行ってらっしゃい。」
僕を見つめる。まだ何かあるのか、と緊張する。これ以上構われる前に早く出て行ってくれ〜……と思っている、柴田くんは口を開いて、
「次は最後まで吸わせるからな。」
と、満足したような顔をし、そう言い放って、この 生徒会室を出て行った。
そして、扉が閉まり、柴田くんに聞こえないように、小さく、僕は柴田くんに言葉を返した。
「もう来ないでくれ。」
コメント
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第1話めっちゃ刺さった…!不良×優等生の組み合わせ、しかもタバコ強要からの「冗談だよ」のギャップにドキドキした😳💕 主人公の苦しそうな様子と、柴田くんの愉快そうな顔の対比がエモすぎてやばい。最後の「もう来ないでくれ」の小声に切なさが爆発した…次どうなるの!?続き気になりすぎるよ〜!!⋆♡