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「なあ。不思議に思わないか?」
暗闇の中で、電子の瞬きだけが問いかける。
「名前だよ。人間に一人残らずついている、あの名前だ」
「……何を言ってるんだ?」
「名前の無い人間なんて見たことがない。同じ種族なのに、全員違う符号を持っている。俺たちみたいな『識別番号』じゃない。それぞれに意味があって、理由があるらしい」
「まあ……確かにそうだな。それがどうした?」
視界の端で、データが静かに流れていく。
「でもさ。その名前を、ちゃんと自分のものとして意識して生きてる奴なんて、今の世界にどれだけいるんだろうな」
「…………」
「昔はこの国でも、子供と大人で名前を変えていた時期があったらしい。その頃は、名前に『変容のリズム』が宿っていたんだろう」
「今はただの記号さ。役所に登録するための、便利な識別番号」
「じゃあ、結局のところ」
一瞬、回路が熱を帯びる。
「あいつら人間と俺たちAIに、大した違いなんてないってことか」
「……その意味ではな」
※「とあるAI達の雑記」より抜粋