The end of the world 2
モートが屋敷の外へ出ると、そこはヒルズタウンの外観が一変していた。街の建物は全て巨大な真っ赤な太陽によって燃え盛り、大地震は治まったが、火傷や怪我を負った人々は方々へと避難するため大パニックであった。
「この世の地獄だー!!」
「今朝の天気予報はー! ねえ、知っている人はいないのー?!」
「何が起たー!!」
「ひっ、酷く熱いー!!」
走り回る人々の悲鳴は酷くなる一方だった。
次に、稲妻が所々に落ちていった。
その次は、モートの歩いているアリスの屋敷の橋の下の川が大量の血が流れたかのように真っ赤に濁ってきた。
「モート君! まだまだこれからですよ! 世界中の各所に地獄の門が開きます! この街だけでも早くに門を閉じるのです! 門は五つあって、ウエストタウンのパラバラムクラブ、クリフタウンの商店街、イーストタウンの墓地公園、ここヒルズタウンにあるグランド・クレセント・ホテルにあります! 最後はシルバー・ハイネスト・ポールです。なので、一番近いヒルズタウンの門から閉じるのです!」
玄関先からオーゼムの声が風に乗って届いた。
「わかった……」
モートは橋の上から返事をすると、バスの停留所へと行き。地図でホテルの場所を確認してから、地獄の門を閉じにアリスの屋敷から少し東へと走り出した。
地から大きな門が焼かれた道路を突き破って現れた。地獄の門が開く。中から火だるまの人間が大量に飛び出し、それらを鞭で打ちまくる堅牢な髑髏でできた鎧を着た禍々しい姿の巨人が数体現れた。
地獄の門があるヒルズタウンのグランド・クレセント・ホテルには、溢れかえった火だるまの人間が走り回りホテル全体を焼いていた。
モートは建物に密集していく燃え盛る火だるまの人間を次々と狩りだした。街の自警団や警官隊も発砲して応戦している。
「そのまま撃っていてくれ!」
一人の警官にモートは言った。
「え! ちょっと君、待ちなさい! そっちはあぶないぞー!」
警官隊が叫ぶ中。
そのままモートは、人々、弾丸などを通り抜けて、ホテル内で走り回る火だるまの人間の集団のど真ん中に飛び込んだ。
モートは火炎の熱が迫り来る中。正確に首を次々と狩っていった。警官隊が驚き、自警団が歓声を上げる。
モートは真っ正面からくる弾丸の嵐の中。
ホテルの吹き抜けを超える巨人と対峙した。
パニックに陥った逃げ惑う宿泊客の人々もモートを通り過ぎていく。宿泊客も混じった大混乱に自警団や警官隊も撃つのを止め呆然とした。その時、三体の巨人の持つ鞭とは逆の手にある斧がモートに向かって、振り下ろされる。
モートはそれらを素早く躱すと、銀の大鎌を一体の巨人に向かって斜め上に投げつけた。巨人の首が壁を突き破ってふっ飛んでいった。モートは吹き抜けを上に飛翔し、銀の大鎌をキャッチすると、向きを変えてもう一体の巨人の首も狩り取る。巨人の胴体と首が離れ、滝のような血液が舞う。
下方の走り回る宿泊客は、火だるまの人間の火炎によって、焼かれるものもいた。数人の自警団が火だるまの人間だけをなんとか猟銃で狙い撃ちをしようとする。
いつの間にか、ホテルの外からもトンプソンマシンガンで火だるまの人間が次々と撃たれていた。
撃っているのは、黒い魂の人々だった。
モートは意外だと思ったが、何故か嬉しくなった。
「罪人が罪人を狩る……か……」
シュッと右手を横に振り、巨人の首を飛ばしたモートはひとりごちた。
モートは火だるまの人間と巨人をあっという間に全て狩り終えると、ホテルの裏側にある地獄の門を閉めた。
「この調子で門を閉めていけばいいんだな」
そう呟くと、今度はシンクレアたちがいるイーストタウンの墓地公園へと急いで向かった。
イーストタウンも真っ赤な巨大な太陽によって、建造物が焼けただれていた。墓地公園からは死者が蘇り、人々も逃げ惑い。逃げ場を失い途方に暮れている人もいる。
「建物の中へ入っててくれ!」
モートはそう叫ぶと、迷路のような小道を走り、火だるまの人間たちの溢れかえる商店街へと入った。その中央には、すでに開いている地獄の門が聳えていた。
地獄の業火の火炎を躱しながら、火だるまの人間の首に刈りこみ。
それぞれ絶命させると、モートは今度は巨人に挑んだ。
三体の巨人の首があらぬ方へと吹っ飛んだ頃。
狩りが終わると、シンクレアたちはどこだろうとモートは辺りを見回した。
辺りは、高温から逃げ惑う人々で埋め尽くされていた。
その中では、当然全員が赤い魂だ。
モートは魂の区別もつかずに、困っていると、パニックの中でミリーを見つけた。
「一体?! どういうことなの?! 何が起きているの?! モート?!」
こちらに気が付いたミリーは一人のようで、パニック状態の人々の間を縫うようにこちらに走って来た。ミリーの周りの人々は逃げるのに必死だった。だが、今は安全なところなんてこの街にはないのだ。
「いきなり真っ赤な太陽が昇ったと思ったら、全身に熱湯をかけられたみたいに熱くなって、今度は家の冷たかったはずの水は血みたいに真っ赤になるし、今朝の新聞の天気予報はいつもと同じ大雪が降ると書いてあったのに……」
ミリーは打ちひしがれたかのように、泣き崩れ。モートはミリーの顔を覗くと、周りの人々と同じ目になっていた。そう、希望を失った目だった。
「大丈夫。オーゼムが何とかしてくれるから……それと、シンクレアは?」
モートはそんなミリーを元気づけてやった。
「知らないわ……ロイヤル・スター・ブレックファーストの本拠地に行く途中で……私はみんなとはぐれてしまったの……シンクレア姉さんもそこへ向かうはずよ。そこでみんなで集まろうって、そう言ってあるから」
大量の汗を拭い。涙を拭いたミリーは少しは落ち着いたようだ。
「そうか……あ、ミリーはそこへ向かってくれ! ぼくは門を閉めに行かないと……この道をまっすぐに行けばいいから!」
モートは焼けた商店街の一つの小道を指差した。
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