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この間起こった、不思議な話。
SNS経由で自身の心霊体験のお悩みを相談してくれて、それがきっかけでお友達になった、なーちゃん。
なーちゃんの守護はちょっと特殊で(親族の守護もいるが今回の話には直接関わりがないので一旦省く)、彼女がとても大事にしている手作り感のある座敷わらしのぬいぐるみ、それに宿る、かなり強い付喪神的な存在だ。
うちのS兄達と分類が似ている。
霊体の見た目は、和風の可愛い童子だ。
付喪神はあまり特定の容姿を持たないと言われているが、器にしている座敷わらしのぬいぐるみを気に入っている為、その形を保っているのだろう。
なーちゃんのことがとにかく大好きな座敷わらしちゃんは、むしろそれ以外はわりとどうでもいいに等しいくらい一途な子で、尚且つ非常に私と波長が合う。
なーちゃんに危険が迫っている時には、何が言いたいのかはっきり正確に聞き取りやすく伝えてくれるので、なーちゃん本人への伝達がやりやすい。
座敷わらしちゃんは彼女を守れるなら結構手段を選ばないタイプなので、うちのS兄達とも気が合うようだ。衝突しなくて本当に良かった。
流石に個人的な相談事なのでここでは詳細を省くが、当時なーちゃんは人間関係での悩みから相談をくれて、座敷わらしちゃん単独ではどうにもならない部分を私が伝達する形でじっくりと時間をかけてひとつの大きな悩み事を解決した。
後日、座敷わらしちゃんが器から出て、霊体で私のところに来てくれた日があった。
ちょうどその時期、私は丸一年ほど何故かほぼ毎日眩暈が起きて、発熱も伴う原因不明の体調不良が続いていた。
病院での検査では特に何も引っかからず、仕事でのストレスかと思っていたのだが、あまりにも治らないので嫌気がさしている頃だった。
横になったままで申し訳ないなと思っていると、座敷わらしちゃんは先日の手伝いのお礼を告げた後、私の全身をスキャンするような仕草をした。
「随分と調子が悪そう」と座敷わらしちゃんが言う。
「病院は行ったんだけど原因不明なんだわ」と返せば、座敷わらしちゃんは少し考える素振りをした後、ふと両手を私に向けた。
「……今回のお礼に、“雪ちゃんは”病で苦しむことがないようにしてあげる」
ぽつりとそんな事を呟いた。
うちのS兄達でさえ私の原因不明の体調不良を(軽減はできるが)治すまではできなかったので、「まさか治してくれるの?」と驚いて尋ねる。
しかし答えはなく、ふふっと笑ったのを最後に座敷わらしちゃんの姿が消えた。
それと同時に、ふっと体の何処かが軽くなった気がした。
短いやり取りが終わり、はて何だったのだろう?と思うこと数週間。
不思議なことに、以前より仕事は多忙なのにあれから発熱もしなければ、眩暈も全く起こらなくなった。
日常が凄く快適で、これが座敷わらしちゃんの能力だとしたら凄いなぁと心の中で拍手する。
ところが、後日思わぬ形で本当の効力を知ることになる。
ある日、うちの夫が仕事終わりに電話をかけてきた。
いつもの疲れた様子ではなく、なんだか腑に落ちないような困ったような、悲しいような何とも言えない声音だった。
「今日仕事に行ったら、Aさんが入院したって上長から言われてさ」
Aさんというのは、夫の職場の(私は個人的に好きではない)ぶりっ子タイプの女の子だ。
常に夫への距離感が近くて、何年か前に職場の別の男性スタッフと結婚してからもプライベートで遊びや飲みに夫を誘ってくる。
Aさんは夫を「お兄ちゃん的存在なので大好き!」と言っているが、私は結構何年も前から警戒していた。
そんなAさんが突然入院したという。
「先週まで普通に元気そうだったんだよ。急に発熱と眩暈で起き上がれなくなったみたいで」
「あらら~、前の私と同じじゃん……」と返した辺りでふと、唐突に座敷わらしちゃんの言葉が脳裏を過ぎる。
ーーー“雪ちゃんは”病で苦しむことがないようにしてあげる。
座敷わらしちゃんが私に何かしてくれたことは、あえて夫には言っていない。
私が目眩で酷く寝込んでた時は「ふーん、病院行けば?」くらいの反応だった夫。
それに対して、Aさんの入院は精神に打撃でもあったような反応だった。
「病院に行ったらなんと緊急入院だって。雪ちゃんも大きい病院に行ってたら、入院になってたんじゃないの!?念の為もう一回検査したら!?」
夫がそんなことを言う。今更過ぎてどうでも良かった。
「いやごめん、言うの忘れてたけど私、あの眩暈も発熱も気付いたら治っちゃったんだよね」
ずっと安定した平熱で、眩暈も全くない。
それどころか、今まで毎月コロナを発症するくらい免疫が低下していた私が、急に免疫が向上したかのようにコロナにも丸っきりかからなくなった。
残った症状といえば花粉症くらい。
今から病院に行ってもそれこそ何の意味があるというのかと思い、もちろん更に異変があればすぐに受診するつもりだと、やんわり断った。
私は冗談混じりに「もしかしたら、誰かがAさんに私の病を移してくれたのかもね」と言ってみた。
夫は生真面目に「うーん」と唸って首を傾げる。
「うちの百鬼にそんなことができる奴、いたかなぁ……?」
……実はあの日、座敷わらしちゃんがスキャンのような仕草をしている時、深い意味はなかったが、ただ何となく私はAさんの顔を思い浮かべていた。
彼女と夫が会社の連絡手段以外のSNSで時折、二人にしか分からない単語でやり取りをしているのを私は知っている。
確実な不倫の証拠がある訳でもなく、夫がAさんと恋愛をするかまでは正直微妙なところなのであえて今は黙って傍観しているが、二人の距離感の近さを私が内心良く思っていないのは事実。
Aさんは夫に対して「お兄ちゃんだと思っているので、恋愛発展は絶対ないです!」と公言していた。
だが、まず成人女性が会社の既婚者の三十路男性を「お兄ちゃんだと思っている」と公言するのも、内心普通に人として気持ち悪いなと思っている。
なんだろう、あの距離感。嫉妬というより、普通に見ていて気持ち悪くて引いている。
そもそも夫の職場は不倫が横行している。
はっきり既婚者だからと誘いに断るならまだしも、「何もないよ、むしろ妹みたいな感覚なんだよね」と夫からも口裏合わせのように言われてしまえば、本当に何もないにせよ、信頼度はそりゃまあ下がるに決まっている。
でも別れるにせよ何にせよ、私の体調が絶不調だと環境も整わない。
そんな意味でも、早くこの体調不良を治したかった。
ーーーひょっとしたらあのスキャンで座敷わらしちゃんに、私の思考の全てが伝わっていたのかもしれない。
元々神様のような妖のような類いだ。病を完治させるのも、誰かに移すこともできてしまうのかも。
そんな神業ができるのは、本当に凄い。
更に後日談として、Aさんは最初検査入院だったらしいのだが、途中から長期入院に変更したそうだ。
よほど重症だったのか、座敷わらしちゃんがちょいと細工したのかは不明。
何にせよ、不安の種がひとつ減って精神的にも非常に楽になった。
座敷わらしちゃんには、感謝しかない。