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鳳崎と深瀬は、目の前に広がるものを見て驚愕していた。
歩くスペースをなくすほどのゴミの数。散らかった衣服。ぐちゃぐちゃに畳まれた布団。
そして……部屋の中央で、恍惚の表情を浮かべながら薬物を摂取する艦娘、鈴谷の姿だった。
「こいつは……元通りにするのきつそうやで」
(あかん。無理な依頼受けてもうたかもしれん)
すると、二人の隣にいた吹雪が声を上げた。
「……鈴谷さん!」
その声に気づいた鈴谷が振り向く。
「あれぇ〜その声は吹雪ちゃん? そこの二人は誰ぇ? 顔がぐにゃぐにゃになってて分かんない〜」
彼女の視覚は今、目の前の3人を姿だけでは判別できないほどおかしくなっている。全体的にぐにゃぐにゃした物が見えているのだ。
「鈴谷さん、はじめましてやな。俺は鳳崎桔平や。隣におるのは親友の深瀬。昨日からあんたらとここで過ごすことになってな」
鳳崎は一度冷静になり、はっきりとした声で自己紹介をした。しかし、今の鈴谷は薬の影響で意識がはっきりしない。
「わぁ、なんか周りがお花畑になったぁ! でも、なぁんで向日葵が緑なんだろぉ」
今の状態では、まともに会話できない。それは、誰がどう見ても分かることだった。
「効果が切れるまで……待つしかなさそうやな」
「ですね」
そして、しばらくした時だった。
笑いながら部屋を彷徨いていた鈴谷が、突如立ち止まる。顔から笑顔が消えていく。
次の瞬間、歯をガチガチと鳴らしながら震え始めた。そして、深瀬の近くにある棚に駆け寄ってきた。
「うおっ!」
彼女は棚をあさり始めた。
「気持ち悪い気持ち悪い! 早く薬をうたないと!」
そして、彼女が取り出したのは注射器。
「……あかん! 深瀬、止めるで!」
腕に針を刺そうとする鈴谷を、二人がおさえる。
「はなせぇ! なんだお前らぁ!」
「その薬をうつなぁ! まじであかん!」
二人は何とか彼女を止める。しかし、あまりの執念に引き剥がされそうになっていた。
その時、オロオロしていた吹雪がポケットから何かを取り出した。それも注射器だった。
そして、それを鈴谷の首に刺し、中に入っていた液体を注入した。
「あがッ……ぁ……」
すると、彼女は力を失いその場に倒れ込んだ。
「す、睡眠薬を入れました。これでしばらくは大丈夫です」
「おう…ナイスや吹雪」
その後、吹雪と深瀬が彼女を別室まで運んだ。鳳崎は部屋に残り、鈴谷が持っていた薬物を見ていた。
(今までにも薬中はめっちゃ見てきたけどなぁ……あの娘はなんか、普通じゃあらへんかった)
そして、彼はとある者の部屋に向かった。
「反町ぃ、おるか?」
彼が扉を開けると、そこにはこの世界の資料を読む反町と烏丸の姿があった。
「なんだ鳳崎……用件を言え」
鋭い視線を向ける反町。鳳崎はポケットから先程の薬物を取り出した。
「こいつは、ここの艦娘が使っとったヤクや。お前、成分とか調べられんか?」
「成分……? なぜ知る必要がある」
その質問に、鳳崎は使用者の鈴谷の状態を交えながら話した。普通のヤク中とは何か違うということを。
「なるほど……よし、少し待ってろ。烏丸、ついてこい」
反町が向かったのは、研究室。昨日、伊勢に「艦娘用の薬などを開発したり、科学関係のことを色々している部屋」と紹介されていたため、その存在を把握していたのだ。
「失礼する」
ノックして部屋に入ると、そこでは小人のような者達が飛びまわっていた。
「あ、ウラカンのひとだ」
「そうだ。『妖精さん』だったか……あんたらは、薬の成分を調べられるか?」
「おう、できるぞ」
「なら、少し手伝ってほしい」
そして、彼らはその薬物を徹底的に調べ始めた……。
数時間後。
反町達が部屋から出てきた。部屋の前で待っていた鳳崎と深瀬が立ち上がる。
「どうや、なんか分かったか?」
「ああ。このヤク、俺らの世界には存在しない物を使って製造されていた」
そして、反町は持っていた資料を二人に見せた。
「『クルイ草』。その名の通り、摂取すると狂っちまう草だ。こいつがふんだんに使われていた……。しかもこの草、かなり依存性が高くてな。ヤクに使われることも多いそうだ」
「そうなんやな……なんか、解毒剤とかないんか?」
「ある。今作った」
そして彼が取り出したのは、注射器に入った解毒剤。
「ヤクを取らずにこいつを使い続けると、中毒性は抜ける。まぁ、使い続けれるかはその艦娘の根気次第だ。」
その解毒剤を、鳳崎に渡す。
「その艦娘のヤクを、全部これにすり替えろ。色も似てるし、摂取するまで気づかないだろ」
「わかった……すまん、ありがとな反町、烏丸! それと妖精さんもな!」
そして、鳳崎と深瀬は鈴谷の部屋へと向かった。
「せや深瀬、鈴谷は今どうなっとる?」
「今は別室で眠ってます。一応手足拘束してますんで、戻ってくることもありまへん」
「そうか。ならええわ」
二人が鈴谷の部屋につくと、早速部屋の棚の中から薬物を探し、それを解毒剤にすり替えていく。
そして、全てすり替えおわった。
「でも……鈴谷はヤクをやめれるんすかね」
「分からん。そこはもう俺らが助けていくしかあらへん」
はたして、彼らは鈴谷を救えるのか?