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第十五章 契約は静かに〜映らない青
翔太📩「うまうまっ」
美味しそうなパスタの写真とともに、見切れた三分の一ほどの翔太の姿が、〝いつもの〟彼を思い起こさせる。
空っぽに平らげた、お皿に残るケチャップの赤が、なんだか不自然だ。
蓮📩「お顔ちゃんと見せてよ?」
翔太📩「そっちだって……早く……会いたい」
・・・
翔太📩「ごめん今のは無し」
〝今時間ある?ビデオ通話する?〟返事を待つより先に掛かってきたビデオ通話。
インカメになっていないのか、翔太の姿は見当たらず、彼らしい天然ぶりにクスッと笑うと〝おーいれーん〟と無人の映像に翔太の可愛い声だけが響いた。
向こうは俺が見えているらしい。
「インカメにしな翔太」
「やってるよ!」
デジタルに弱い翔太……相変わらずで、少しだけ安心した
……可愛いんだが
「真っ暗だぞ〜カメラに手が掛かってるんじゃないの?」
ようやく繋がった気がした。
画面が一瞬明るくなって、翔太が慌てているような気配だけが伝わってくる。
「ずっとインカメだったのに……」
そう言われて、俺は深く考えずに笑った。
何はともあれ、話せている。それでいい。
表情まではよく分からないけど、声が弾んでいた。
画面の向こうで、きっとにっこりと満面の笑みで笑ったんだと思う。
近況報告を交えて話をすると、嬉しそうな声で、へぇー、凄いなー。見てみたいなぁ撮影。などと言って、ファンの子がきゃあきゃあはしゃぐような声に、ついつい笑顔が溢れた。
「元気そうだね」
「翔太も」
顔は確認できないけれど、見えてるフリして答えた。
一拍遅れて〝うん〟と元気よく返事した翔太に少し違和感を感じた。無理しているように聞こえた。
俺の話ばかりを聞いて、翔太はほとんど近況を話さなかった。話すようなことがないのか……話せないのか。
「次またいつ話せる?」
慣れない海外での撮影。スケジュール通りに行かないことがほとんどだ。安易に翔太に約束はできない。
それを察してか
「ごめん今のも無し」
そう言った翔太の顔はきっと、涙を堪えて、悲しい表情をしている……そんな気がした。
現地スタッフに呼ばれて、別れを告げると〝さようなら〟と言った翔太のことが気になって仕方がなかった。
胸に引っ掛かった小さな小骨を、取り除く方法も、気休めの優しさも言えない俺は、目の前の現実を言い訳にして、少しの違和感に蓋をした。
翔太 side
瞼を閉じた。
蓮の声。優しい笑顔。翔太と呼んだ唇。
そのどれも忘れないように、脳裏に焼き付ける。
自然と流れた涙はご愛嬌。
いつだって泣き虫だから……
「早く会いたい」だなんて、蓮を困らせる言葉を、放ってしまい、咄嗟に繕った取り消しの呪文は、効かなかった。
握りしめたスマホを覗き込む。カメラに映し出されたのは暗闇で、俺の顔は映っていない。
壊れた……?
スマホをテーブルの上に伏せた。
明日、康二に聞いてみるか……こういうのは苦手だ。
――食欲がない。
ゴミ箱に捨てられたナポリタン。
真っ赤に色づいた、真っ白なお皿…
溜まった洗い物。
「ごめんね君達は悪くないんだ」
肩を震わせ泣いた夜。また今夜も隅っこ暮らし――
床に腰を下ろすと、右手に冷たい硬い物が触れた。
恐る恐る握りしめたその感触に覚えがあった。
蓮の指輪だった――
不思議と怖くなかった。
少しだけ大きな蓮の指輪は俺の中指にピッタリ嵌った。
月夜に照らしてみた。
お揃いの指輪のはずなのに、俺の指輪は蓮のものほど光放ってはいない。
最初から分かっていたのかもしれない。
夢じゃないって。
匂いに、温もり、触れられた感触。
そのどれも俺は知っている。
「とうとう本当に……魔女になっちゃった」
――なんてね――――
会いに行ける魔法なら、好きに行かせてくれよ、なんて悪態をつきながら、自由にとはいかないこの変な魔法を、すんなり受け入れた。
蓮に会えるならどんな代償だって
厭わない――
だって
会いたいし
愛してる
コメント
6件


なんで、映らないんだろう😱😱声は聞こえるのに😶🌫️😶🌫️
すんごく真剣に読んでたけど、途中のすみっこぐらし、でつい、クスッと笑っちゃった。可愛いなあ、しょっぴー、本当に可愛い💙