あれから2日が経って、トリックスター…ジウンは私の側にずっといた。
私が離れようとすればすぐに泣き出しそうになるから、仕方なく一緒に行動しているけど…。
最近は一緒に寝るようにもなった。
一緒に寝ると言っても部屋が一緒なだけで
私が寝袋、彼が私のベッドで寝る様にしている。
ジウンにはなにもされてないし、特に気にすることもないだろう。
それに、寝袋だろうとベッドだろうと眠れるには代わり無いし、特に気にしていない。
「ねぇ、あんまり信用しちゃダメよ?仮にもキラーなんだし…」
「一緒の部屋で寝るのはまずいんじゃないかい?僕の部屋に彼を連れていこうか?」
「あんたは人が良すぎるから、私たちまで心配しちゃうじゃない!」
フェンミンとローリー、ドワイトにそう言われる。
「分かってるけど…うん。用心するわ」
反論する気は毛頭無かった。
だって彼女達の言っていることは正しいから。
仮にもキラー。
いつ殺されるのか分からない。
しかし、ジウンは
『キラーに戻りたい意思が強くなる度、あの日のゴスフェにされた事を思い出してしまう』
と言っていた。
だから私は、彼の心のケアくらいはしてあげようと思って接している。
ある日のこと。
私がいつも通り彼と一緒に集めた薪を斧で切ろうとした時…。
「ジウン、そこに座ってると木の破片とか飛んでくるから危ないよ。」
彼は切り株の目の前に座って私を見ていた。
斧が彼に当たらないか心配だ。
それに目に木の破片が入ると大変だし…。
近すぎるでしょ。
「気にせずどうぞ。」
そうは言われても、私が斧を振り下ろせばあなたの目は失明するかも知れないんだが?
「いいの?平気?」
一応聞くことにした。
「いいから。重いでしょ?それ。」
「う、うん…分かった。」
彼からも了承を得たし、私は遠慮無く斧を振り下ろした。
「はっ…!」
カンッ!と音が鳴り、薪が二つに割れる。
ジウンの方を向く。
「……」
良かった。彼に斧や木は当たってないみたいだ。
多分、振り下ろす瞬間に避けたのかな?
「ジウン、そこの丸太に座ってていいんだよ?」
「気にしないで!ねぇ、次は僕がやっていい?」
「え、う、うん…いいけど…結構重いわよ?これ」
「いいから!」
そう言われ、彼に斧を渡した。
「重っ…!!」
「だから言ったでしょ?ほら、速く返して。」
「やだ!するの!」
子供みたいだな…と思いながら、私は切り株に薪を置く。
「この薪の真ん中を割るようにイメージして、斧を思いっきり振り下ろすの」
「わ、分かったよ…はっ…!」
彼が斧を振り下ろし、薪が二つに割れた。
と、思いきやまさかの力が足りなく、斧は薪の真ん中部分で止まってしまった。
「あ、あれ!?ど、どうしたらいい!?」
オドオドと焦り涙目になる。
それをなだめるように私は対処の仕方を教えた。
「落ち着いて。そのまま斧をもう一回切り株に振り下ろしてみて?」
「大丈夫かな…えいっ!」
カンッ!と音が鳴り、今度はちゃんと二つに割れることが出来た。
「出来た…!!ねぇ、今の見た!?」
「もちろん。これはいい薪になるわね。焚き火でも良く燃えそう。」
私は存分に彼を褒めた。
「え、えへへ…そうかな?君がこれを割ってるのを良く見てた甲斐があったよ!」
「あ、だからいつも以上に近かったのね」
私は考えるより先にそう言ってしまった。
「えっ!近かったかな!?ご、ごめんね?」
「いいわよ別に。おかげで助かったわ」
「ねぇ、もう一回やりたい!」
「もちろん。お願いするわ」
それからジウンはすべて薪を割ってくれた。
「本当に助かったわ。ありがとう、ジウン」
「ぼ、僕頑張ったよ…疲れたぁ」
地面に腰を下ろしてそう言った。
「お疲れ様。川で顔でも洗いに行きましょうか。」
「うん!」
私だけかな?
この光景がまるで親子の団らん会話の様に思えるのは…。
まぁ、ジウンが楽しそうなら何よりかな。
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