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前書き
今回の話には、
『99.ツナギ』
『100.洗われた魂は、だんだんだいん』
『101.おやじ狩り』
『103.新しい先生』前書き部分
の内容が関わっています。
読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います^^
「もう、しょうがないわねー、泣き止みなさいよ、アンタの代わりにアタシがその子達の様子見に行ってくるから、元気出しなさいよ」
「え! ほ、本当に?」
「うん、今回の件が片付いたらね、それで、オルクス君に頼んでアンタに報告してあげるわ! 期待していなさいよ、きっと立派な大人になっているわよ♪ アンタの息・子・達」
いやはや、流石(さすが)は褒王(ホメオウ)、リスペクトキングと言ったところか、イラは既に泣き止んで、嬉しそうな顔でコユキの肉塗れ(にくまみれ)の顔面を見ている。
ツナギの腰ポッケから、チラシとペンを取り出しながらコユキは言った。
「んで、どこの施設に行ったの?」
「えっと、確か、からん? かす? あれ?」
「カランカス? あのペルーの村? アンタ、もの凄い所にやったわねっ!」
「いや、日本なんだけど、なんだっけな? 中京地区のどっかだったと思うんだけど?」
「いい加減ねっ!」
「いや、だって死のうと思ってたんだし、実際死んだんだから…… 覚える必要ないじゃないか? だろ?」
確かにそれはそうかも知れないな、そんな風に思ったコユキは聞いた。
「他になんか覚えている事とか無いの? 迎えに来た車のナンバーとか、子供を預かった職員の服についたロゴとかさ」
|暫く《しばらく》考え込み、思い出したのか、イラの口から出た言葉とは。
「――――だんだんだいん」
「えっ!?」
「なんかそんな事を言っていた、迎えに来た男! 二十代半ばだったが、言葉の殆ど(ほとんど)が意味分かんなくて、えっと確か名前、えっと?」
コユキは確信を胸に自信満々に告げた。
「秋沢(アキザワ)明(アキラ)ね」
「あ、それだ! ん、なんで分かったんだ、それも聖女の能力なのか?」
その質問には答えずにコユキのヘドロのような脳細胞は答えを導き出した。
「ガチャガチャガチャ、チーン! アナタ ノ ムスコ タチハ 三重県津市、恐らく香良洲(カラス)に行ったんじゃないの?」
途中まで昭和っぽいイメージのロボット口調だったが、どうやら飽きたらしく最後は普通に話したコユキであった。
「そうだ、そうだよ! カラスって言ってたよ!」
「ふむ、えーっと、それから更に十三年経ってる訳か…… 何か特徴とかある? あと名前、苗字は変わってるかもね? となるとファーストネームね」
コユキの問いに、今度は言い淀む事無く答えた『憤怒のイラ』である。
「ああ、それなら、上の子は小さい頃から人懐っこい可愛らしい感じだったんだが、ガス爆発の時、火傷を負ってな、顔の右半分に痕が残っちまって、耳もその時ふっ飛んじまってな、結構目立つんだ、下の子は上の子が覆い被さって守ったお蔭で火傷は無いんだが――――」
「クールな切れ長の目をした、顔面にクロスの傷がある、でしょ?」
「えっ! 凄いな、そんな事も分かるのか…… あ、ファーストネームだったな――――」
「あっ、大丈夫よ、そうね、二人とも元気よ、(ある意味)逞しく生きてるわ」
「なんと! 本当に?」
「こないだ、会ったからね、本当に血が繋がって居ないんだって良く分かる出会いだったわよ」
「?」
コユキは思った。
なんでも自分のせいだと責めてしまうこのイラと、自分からぶつかって行って相手のせいだと言い金品を巻きあげようとした、あの兄弟。
やっぱ、リボ核酸(RNA)ってデオキシリボ核酸(DNA)ほど固定されないんだな、と。
思っただけで言わなかったのは、別に成長とかではなく、又嘆かれると面倒だったからだ。
一応元気付けるように言っておいた。
「まあ、また会うような事があったら、アンタが心配していたって伝えるわね、んで道を踏み外しそうだったら代わりに怒っておいてあげるわよ(確定)」
「ははは、聖女様を怒らせることが出来るものなのか? だが、お蔭で救われた、これからは自分と仲良くしながら、次に誰かがやってくるまで忍耐強く待つとするよ。 あんたが褒めてくれたように俺は『忍耐』が取り得だからな、これ――――」
どひゅっ!
やっぱり『イラ』も恥の城、ボシェット城の外に飛んで行ってしまった。
コユキはムックリと立ち上がり、何もない石の広間を進んでいったが、その横顔は少しだけ淋しそうで、そして横から見てもやっぱり太っていたのであった。