TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

きみが付き合ってくれるまで

一覧ページ

「きみが付き合ってくれるまで」のメインビジュアル

きみが付き合ってくれるまで

1 - 第1話 転校生の考えていることはわかりません

♥

506

2024年01月19日

シェアするシェアする
報告する







8月最終日。



教室の窓を開けていても、たまに熱風が入ってくるだけでぜんぜん涼しくない。



夏休みが終わって今日から新学期。



でも……まだ夏休み気分が抜けないし、朝早起きするのも久々で、私はさっきからずっとあくびばっかりだ。



「ねー緑(みどり)。


さっき職員室に行ったらさぁ、夏休み中にうちのクラスに転校生が入ってくることに決まってたらしーよ」



「えっ、そうだったんだ」



となりの席のあさ美の話に、なにげなく相槌を打つ。



「転校生って、男、女、どっち?」



「さぁ、それは聞こえてこなかったなー」



そんな話をしていると、朝のチャイムが鳴り、HRに先生が入ってきた。



もちろん先生はいつもはひとりだけど、今日は知らない男の子も後ろにいる。



(あ……)



「えー、今日はみんなに大事な話があります。

うちのクラスに新しく生徒が入ることになりました。


名前は北畑唯(きたはたゆい)くん。みんなよろしくな」




北畑唯と紹介されたその男の子は、ひとことで言えばイケメンの部類に属する人だった。



うちのクラスにはそういった部類の男子がいなくて、女子が小声で「キャーッ」と浮足立つ。








北畑くんは、生まれつきなのか、染めてないのにちょっと髪は茶色い。



背は高いし、細身だし。



顔もバランスが良くて、すべてが整っている。



……うん、イケメンだ。




先生は「ちょっと待ってろよ」と言い、一度廊下に出ると、机とイスを持ってすぐに後ろのドアから入ってきた。



「それで北畑くんの席なんだが、ここに座ってくれ」



先生が机とイスをゴンと置いたのは、窓際の一番後ろだった、私の後ろの席。



(えっ、私の後ろ?)



うちのクラスの転校生といえど、どこか他人事みたいに思っていた私は、一気に背筋が伸びた。



イケメンと近くになるのはラッキーだけど、ちょっと緊張する。



北畑くんは私のほうを見た。



だから自然と目が合って、どうしていいかわからず、愛想笑いをしてみた。



北畑くんも愛想笑い……というよりはステキな笑顔をつくってくれて、ほかの女子がまた「キャーッ」と小声なのに黄色い声で騒ぐ。



おお、本当にイケメンだ。



これは本当にラッキーかも。



「北畑唯です。名前が「ゆい」なんで、名前だけだと女と間違われることも多いけど、れっきとした男です。


よろしくお願いしますー」











北畑くんは挨拶をすると、先生に促されて自分の席のほうに歩いてきた。



間の列を通るだけで、女子はちょっと興奮気味。



かくいう私も、北畑くんが通りすぎる時、なんかふわっといい匂いがした気がして、男子イコール汗臭いみたいなイメージがあった私にはちょっと衝撃だった。



北畑くんが席につくと、HRが再開され、やがて授業が始まった。



でも私の気持ちは落ち着かない。



後ろから北畑くんのオーラを感じてしまって、背中がこそばゆいような感じだった。



イケメンってすごい。



いるだけでまわりに存在をアピールするなんて、芸能人ってこんな感じなのかな。



そんなどうでもいいことを考えていると、チャイムとともに1時間目が終わった。




「このプリント、次の授業までにやっとけよー」



先生がプリントを配って教室から出てくと、急にまわりがざわめき始める。



前から回ってきたプリントを回そうと後ろを向いた時、ばちっと北畑くんと目が合った。



目が合うのは今日で二度目だ。



でもさっきより近い距離で思いっきり目が合って、かなりドキッとする。






「あ、あの。これ……」



「ねー、名前はなんていうの?」



「え?」



思いがけず名前を聞かれ、私はプリントを持ったまま少し固まった。



「お、大石っていいます。これからよろしくね」



プリントを北畑くんに差しだすと、にっこり笑って受け取ってくれた。



ほっとして前を向こうとした時、北畑くんが「大石さん」と私を呼んだ。



「ん? なに?」



「あのさ、付き合ってくれない?」



「え? どこに?」



聞き返すと、北畑くんはちょっと面食らった顔をして、また笑った。



「大石さんってボケてるねー。でもそれも楽しそーだな。


付き合ってって、俺と付き合ってってこと。きっと楽しーと思うよ?」



北畑くんはそう言って、邪気のない笑顔で笑っている。



でも私の頭の中は一時停止してしまった。





……はい?




今、なんて言った?










その時、クラスの女子たちが「ねー!」と近寄ってきた。



「北畑くん、どこから来たのー?」



「あぁ、東京からだよ。みんななんて名前?」



「えっ、私? 私は神田でーす!」



「私は北島ー!」



北畑くんに聞かれて、みんな次々と北畑くんに名乗っていく。



私のことはまるで眼中になさそうに盛り上がり出すから、さっきのは冗談だったのかと気づいた。



(た、たちの悪い冗談……!)



せっかくのイケメンなのにちょっとがっかりだ。



でもいいや。よくわかんないけど、気にしないでおこう。




ってそれより、次の英語、私当たるんだった……!



まずいと慌てた私は、英語の教科書と電子辞書を開いて和訳を急ぐ。



それからあっという間に休み時間が終わり、同時に私のうしろで大々的に起こっていた自己紹介が終わったようだった。




とりあえずあたりそうなところまでは和訳できたかな……。



ほっとした時、背中のシャツを引かれた。



「でさ、さっきの返事、OKでいい?」




驚いて振り向くと、またさっきと同じ笑顔の北畑くん。



「は? だからなにを……」



「だーかーら、俺と付き合ってって。


いいって言うまで、この手離さないよ?」








きみが付き合ってくれるまで

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

506

コメント

3

ユーザー
ユーザー
ユーザー

とてもいい話です!北畑唯君は、クラスの人気の一部ですね😃

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚