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そんなこんなで、氷魔法を習得出来たあなたとルイスの元に、もう一つの足音が近づく。
「へぇ…お前、魔法使えんのか…」
声の発生源は森の中。薄暗い場所から顔を出したのは金髪の美男子。木剣を肩に背負って威圧的な面持ち。
ルイスはその顔に見覚えがあるのか、焦ってあなたに耳打ちする。
「あの子は領主様…ウォーカー男爵様のご子息のアーサー様だよ…」
つまり坊っちゃんってことか…
アーサーはずかずかとあなたに近づき切っ先を向ける。
「魔法で俺の剣と戦え。」
いきなり剣を突き付けられ、挙げ句嘗められる。何より、ルイスが怖がっている。木剣とは言え殺傷能力は十分。少し–
「いいよ」
–ムカついた。
ルイスが心配する中、あなたとアーサーは少し間合いを取り立ち止まる。束の間の静寂とは裏腹に、あなたの心臓はうるさいほど鳴っている。それもそのはず。戦うこと、ましてや喧嘩なんてこっちの世界に来てから一度もしてない。でも、人生の先輩としてこの子にお灸を据えなきゃいけない。
風が吹き止んだ瞬間、アーサーは勢いよく踏み込んでくる。おおよそ子供には見えない、大人顔負けの速さ。一気に剣を振り下ろしてくる。が–
あなたの方が一枚上手だった。
僕はアーサーの踏み込んだ足元を凍結させる。案の定アーサーは地面に顔から転ぶ。だが僕のリスクヘッジは完璧。綺麗な顔を汚さないよう、風魔法でクッションを作ってある。感謝してほしいくらいだ。
「すごいすごい!」
後ろから聞こえるルイスの声が戦いの終わりを告げる。ルイスの勉強のために氷魔法で戦ったが、もう少し頑張ってほしかったな…
「大丈夫?」
アーサーに近づき手を差しのべる。「あぁ」と言う彼の目には少し涙が浮かんでいた。
「ごめんは?」
「…ふん!」
これはあれだ。今まで自分より強い人が周りに居なかったタイプだ。こいつのステータスを見れば分かる。
名前:アーサー・イーサン・ウォーカー
年齢:6歳
職業:子供
称号:剣王の卵(心技体&剣に関するスキルの獲得&成長確率超アップ)
状態:自惚れ(スキルLv3down)
スキル:剣術Lv5・体術Lv2・苦痛耐性Lv1・
屈強Lv1・勤勉Lv7(自惚れ状態により無効)
体力:
筋力:150
魔力:30
素早さ:96
防御力:34
幸運:21
【自惚れ状態】か…男児によくあるアレだ。正直どうすればいいか分からない…だけどなにか言った方がいいよな…
あなたはアーサーの正面に座る
「上には上がいるっていう言葉があるけど、僕は嫌いだ。自分なりに頑張ってるのに、誰かと比べられるなんて許せない。でも、自分の実力を見誤ってるお前はもっと許せない。お前カッコ悪いよ。」
その言葉を最後まで聞き終わると、アーサーは顔を赤くして走り出してしまった。
「バカやろー!」
なんともありきたりな捨て台詞。僕お前のこと好きかもしれん。子供らしい性格。心が若返りますなぁ…いっぱい悩め少年!
そんな僕とは違って、ルイスは心配そうにアーサーを見送っている。
僕は腰に手を当てながら、雪が降り出した空を眺める。居世界に来てからと言うもの、退屈したことは一度もない。毎日が新鮮で、楽しい。いつまでも続くといいな…この生活が。
《裏話》
ある日、森の中で身体強化の魔法の練習で木々を跳び跳ねていると
「きゃあ!」
下で悲鳴が聞こえた。見ると女の子が根っこのくぼみに落っこちていた。森に迷っていたところ、木々が揺れる音に驚いて落ちてしまったようだ。風魔法で救出してあげると、彼女は魔法を見るのが初めてなのか目を輝かせてあなたを見つめる。
「魔法…ねぇ、私にも使える?」
彼女の名前はルイス・アナスタシア。後に聖女と呼ばれる少女だ。