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橘靖竜
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外相の来訪
午後のマルトク本社エントランス。
さっぱりした雰囲気の壮年紳士が向かってくる。いわゆるイケオジに属する身のこなし。
受付がざわついていた。
「外務省?」
「はい、外務大臣をしている山田です」
受付係は一瞬固まる。
数分後。
役員フロアの会議室。
佐伯、月影、数名の幹部が座っている。
ドアが開く。
入ってきたのは
山田外相だった。
背は低めで中肉中背。
落ち着いた笑顔。
官僚上がり特有の“THEシンプル”な空気。
それでいて、圧は感じさせない。
山田は軽く頭を下げる。
「突然すみません」
佐伯が答える。
「いえ、光栄です」
しかし空気は緊張している。
山田は椅子に座る。
そして言う。
「今日は視察です」
軽い調子。
しかしその目は鋭い。
「噂を聞きましてね」
佐伯が
静かに唾を飲む。
山田は続ける。
「御社の……村田さん」
会議室が静かになる。
月影は何も言わない。
山田は笑って、
「ぜひ会ってみたい」
ところ変わって、
休憩スペース。
村田はコーヒーを淹れていた。
そこにハヤトが来る。
「村田さん」
「ん?」
「面会があります」
「誰?」
ハヤトは答える。
「山田外相です」
村田はポットを落としそうになった。
「え?」
面会室。
村田が入ると、
山田は立ち上がった。
「初めまして」
すんなり握手。
村田は少し緊張している。
「どうも……」
山田は笑う。
「そんなに構えなくて構わないですよ
今日はただの好奇心ですから」
村田は苦笑する。
「政治家の好奇心って怖いですね」
山田は声を出して笑った。
「正直でいい」
観察
山田は村田を見る。
視線。
姿勢。
声。
分析する。
この男は確かに普通。
でも、
普通“すぎる”
つまり
作られていない。
山田は聞く。
「村田さん」
「はい」
「あなたはなぜそんなに人気なんです?」
村田は少し考える。
「うーん」
肩をすくめて、
「多分
暇だから」
山田は目を細める。
「暇?」
「はい」
村田は笑う。
「人の話聞くの好きなんで
それだけです」
「あぁ
それで」
ゆるく
静寂
数秒。
山田は理解する。
この男は
計算していない。
それが一番危険だ。
こと、
政治の世界では
計算しない人間は
予測できない。
山田の質問
山田は言う。
「あなたにほとるに足らない質問かもしれませんが、
空白は怖いですか?」
村田の表情が少し変わる。
「……最近までは
怖かったですね」
「今は?」
村田は少し笑う。
「慣れてきました
誰かに言われたんです」
山田は聞く。
「誰に?」
村田は答える。
「花子さん」
山田の目がわずかにキラリと光る。
観測者
その会話を
ハヤトが外から見ている。
業務端末の画面上に
ログが流れる。
観測対象
山田外相
情動変動:低
観測対象
村田孝好
情動変動:安定
しかし一つだけ
異常が出る。
観測対象
笹川迅翔
判断プロセス:増加
ハヤトは考えていた。
山田外相。
この人物は
村田を商品として見ていない。
別のものとして見ている。
外相の結論
会話の最後。
山田は立ち上がり、
「今日はありがとう」
村田も立ち、
「いえ」
山田は握手しながら言う。
「あなたは面白い」
村田は苦笑する。
「よく言われます」
山田は続ける。
「もし政治家になったら
この国変えられますよ」
村田は即答する。
「やめときます」
山田は笑った。
「だろうね」
外へ
帰りの車中。
山田外相と秘書は、
後部座席に座ってアレコレ話していた。
秘書が聞く。
「どうでしたか」
山田は窓を見る。
見慣れたとも見飽きたとも言える
東京の単調な街並み。
「確認できた」
「何がです?」
山田は即答する。
「村田は危険じゃない」
秘書は安心する。
しかし山田は続ける。
「かえって危険なのは
彼の周り」
花子。
ハヤト。
月影。
この三人が
村田の周囲にいる。
山田は笑う。
「これは面白い
国家レベルの実験になります」
本社
同じ頃。
佐伯の端末に新しいログ。
外部アクセス
政府レベル
監視対象追加
佐伯はモニターを見つめる。
そしてつぶやく。
「とうとう
……国家が来たか」